この記事は、 「ネットワーク上級編|要件定義・設計・クラウド・自動化へ進む」 の第25回です。
第3章では、BGP、インターネット冗長化、ゲートウェイ冗長化、 QoS、マルチキャスト、SD-WANなど、 企業ネットワークで使われる高度な技術を学びます。
QoSとは?ネットワークの優先制御・DSCP・キューイングの基本を解説
音声通話、Web会議、業務システム、ファイル転送、バックアップ。 これらの通信をすべて同じように扱うと、 回線が混雑した瞬間に重要な通信まで遅くなることがあります。 QoSでは、通信を分類し、重要度に応じて優先順位や帯域の扱いを変えることで、 混雑時にも業務上重要な通信を守ります。
QoSは、単純に「特定の通信を速くする機能」ではありません。
本質は、 限られたネットワーク資源を、業務上の重要度に応じてどう配分するか という設計です。
特にWAN回線やインターネット回線など、 通信量が帯域上限へ近づく可能性がある場所では、 QoS設計が利用者の体感品質へ大きく影響します。
この記事を読み終えるとできること
- QoSの目的を説明できる
- 帯域・遅延・ジッター・パケットロスを区別できる
- 分類とマーキングの違いを説明できる
- DSCPの役割を説明できる
- キューイングによる優先制御を説明できる
- シェーピングとポリシングを区別できる
- 業務要件からQoSクラスを考えられる
- 顧客へQoSの必要性を説明できる
QoSとは何か
QoS(Quality of Service)とは、 通信を種類や重要度によって分類し、 混雑時の優先順位・帯域・廃棄方法などを制御する仕組みです。
ネットワークには、同時にさまざまな通信が流れます。
- IP電話
- Web会議
- Webアクセス
- 基幹業務システム
- メール
- ファイル転送
- OSアップデート
- バックアップ
これらをすべて同じ条件で転送すると、 回線が空いているときには問題がなくても、 混雑時には重要な通信とそうでない通信が 同じように待たされる可能性があります。
QoSが最も意味を持つのは、ネットワークが混雑したときです。
十分な帯域があり、常に空いている回線では、 優先制御をしても体感差がほとんど出ないことがあります。
QoSは帯域そのものを増やす技術ではない
100Mbpsの回線へQoSを設定しても、 回線が200Mbpsになるわけではありません。
QoSが行うのは、 100Mbpsという限られた資源を、どの通信へどのように使わせるか決めること です。
通信量そのものが回線容量を大幅に上回っている場合、 QoSだけでは根本解決できません。 回線増速や経路分散なども検討する必要があります。
なぜQoSが必要なのか
例:100MbpsのWAN回線
本社と拠点が100MbpsのWAN回線で接続されているとします。
QoSを検討する典型的な構成
通常時は40Mbps程度しか使っていなくても、 バックアップが始まり、 大きなファイル転送とWeb会議が重なると、 一時的に100Mbpsを超える通信が発生するかもしれません。
その場合、ネットワーク機器はすべてのパケットを 同時には送信できません。 一部のパケットは待ち行列に入り、 待ちきれなければ廃棄されます。
通信によって「困る品質劣化」が違う
| 通信 | 特に影響を受ける要素 | 品質が悪化した場合 |
|---|---|---|
| IP電話 | 遅延・ジッター・ロス | 音声が途切れる、会話しづらい |
| Web会議 | 遅延・ジッター・ロス・帯域 | 映像や音声が止まる |
| 業務システム | 遅延・ロス | 画面応答が遅く感じる |
| Web閲覧 | 帯域・遅延 | 表示に時間がかかる |
| バックアップ | 主に帯域 | 完了まで時間がかかる |
バックアップは多少遅くなっても、 処理時間が延びるだけで済む場合があります。
一方、音声通話は数秒止まるだけでも 利用者へ直接影響します。
QoS設計では、 「どの通信が技術的に重要か」ではなく、 「どの通信が業務上どの程度重要か」 を確認することが重要です。
通信品質を決める4つの指標
帯域
一定時間にどの程度のデータを送れるかを表します。 MbpsやGbpsなどで表現します。
遅延
パケットが送信元から宛先へ届くまでにかかる時間です。
ジッター
パケットごとの遅延時間のばらつきです。 リアルタイム通信では重要な指標です。
パケットロス
送信したパケットの一部が途中で失われることです。
帯域だけ見ても通信品質は分からない
「100Mbpsあれば十分」という判断だけでは、 リアルタイム通信の品質を保証できません。
平均通信量が50Mbpsでも、 瞬間的な混雑によってキューが長くなれば、 音声通信の遅延やジッターが増えることがあります。
QoSを考えるときは、 帯域・遅延・ジッター・パケットロス をセットで確認します。
QoS処理の全体像
QoSは、1つの設定だけで完結するわけではありません。 基本的には次のような流れで考えます。
QoS設計の基本フロー
- 通信を分類する 音声、Web会議、業務システム、バックアップなど、 パケットをポリシー上のクラスへ分類します。
- 必要に応じてマーキングする DSCPなどを使って、 パケットへ転送上の扱いを判断するための情報を付けます。
- キューへ振り分ける 出力インターフェースが混雑した場合に、 パケットを対応する待ち行列へ入れます。
- 優先順位や帯域を決めて送信する 音声を優先したり、 業務通信へ一定の帯域を確保したりします。
- 必要に応じて通信量を制御する シェーピングやポリシングによって、 特定クラスや回線全体の送信レートを調整します。
実際に利用できるQoS機能や設定方法は、 ルーター、スイッチ、ファイアウォール、 SD-WAN製品などによって異なります。
分類(Classification)
分類とは、パケットを確認し、 どのQoSクラスへ所属させるか判断する処理です。
QoSを行うには、 最初に「何を優先するのか」を判別できなければなりません。
分類に使用できる情報の例
| 分類情報 | 利用例 |
|---|---|
| 送信元IPアドレス | 特定サーバーからの通信 |
| 宛先IPアドレス | 特定業務システム宛て通信 |
| TCP・UDPポート番号 | 特定プロトコルを識別 |
| VLAN | 音声用VLANや業務用VLANを識別 |
| DSCP | すでにマーキングされた通信を分類 |
| アプリケーション識別 | 対応製品で特定アプリを識別 |
単純なポート番号だけでは難しいこともある
現代のアプリケーションでは、 HTTPSなど共通のポート番号を使う通信が多くあります。
そのため、TCP/UDPポート番号だけで すべてのアプリケーションを正確に識別できるとは限りません。
製品によっては、 アプリケーション識別機能やSD-WANのアプリケーション制御機能などを 組み合わせて分類します。
マーキングとDSCP
マーキングとは、 後続のネットワーク機器が通信クラスを判断できるように、 パケットへ識別情報を付ける処理です。
IPネットワークのQoSで代表的に使われる値が DSCP(Differentiated Services Code Point)です。
DSCPはIPヘッダー内のDSフィールドに含まれる 6ビットの値で、 ネットワーク機器がパケットをどのように扱うか判断するために利用できます。
代表的なDSCPの例
| 名称 | 10進値 | 利用イメージ |
|---|---|---|
| CS0 | 0 | 通常のBest Effort通信 |
| EF | 46 | 低遅延が重要なリアルタイム通信など |
| AF41 | 34 | 映像などに利用する設計例がある |
| AF31 | 26 | 重要業務通信などに利用する設計例がある |
| AF21 | 18 | 通常業務通信などに利用する設計例がある |
「音声なら必ずEF」「業務システムなら必ずAF31」 と機械的に決めるものではありません。
DSCPと実際の転送動作の対応は、 組織のQoSポリシーや利用サービス、ネットワーク機器、 回線事業者の仕様を踏まえて設計します。
Trust Boundaryを決める
端末が設定したDSCP値を、 ネットワーク全体で無条件に信用するのは危険です。
たとえば、一般ユーザーの端末が すべての通信へ高優先度のマーキングを行えば、 QoSポリシーが機能しなくなる可能性があります。
そこで、 どこから先のマーキングを信頼するのか という境界を決めます。 これをTrust Boundaryと呼びます。
マーキングとTrust Boundaryのイメージ
キューイングと優先制御
QoSで特に重要なのが、 混雑したときにどのパケットから送るか という考え方です。
回線が空いている場合
送信したいパケットが10Mbps分しかなく、 出力回線が100Mbpsあるなら、 基本的にはすぐ送信できます。
回線が混雑した場合
100Mbpsのインターフェースから 150Mbps分のパケットを同時に送りたい場合、 すべてを一度に送ることはできません。
そこで、送信待ちのパケットをキューへ入れ、 QoSポリシーに従って順番に取り出します。
流入する通信
QoSキュー
Priority Queue
音声など、遅延に特に敏感な通信については、 優先度の高いキューを使用する設計があります。
ただし、 高優先キューへ大量の通信を入れすぎると、 他の通信へ帯域が回らなくなる可能性があります。
「重要だから全部最優先」はQoS設計ではありません。
優先クラスほど、 対象トラフィックと必要量を明確にする必要があります。
Bandwidth Guarantee
音声以外の重要通信については、 混雑時にも一定量の帯域を使えるようにする設計があります。
たとえば、業務システム用クラスへ 一定割合の帯域を割り当てることで、 バックアップが大量通信を発生させても 業務通信が完全に押し出されないようにします。
シェーピングとポリシング
QoSでは、優先順位だけでなく 通信速度を制御する機能も使われます。
| 項目 | シェーピング | ポリシング |
|---|---|---|
| 基本的な考え方 | 超過した通信を一時的に待たせて平準化する | 設定レートを超えた通信を制限する |
| 超過パケット | キューへ保持して後から送信する | 廃棄または再マーキングなどを行う |
| 主な用途 | WAN出口などで送信速度を整える | 契約帯域やクラス別上限を制御する |
| 遅延への影響 | 待たせるため遅延が増えることがある | 基本的に待たせず超過分を制御する |
Traffic Shaping
シェーピングは、 一時的なバースト通信をキューへ保持し、 設定した速度に合わせて送信する考え方です。
特に、物理インターフェース速度より 契約回線速度が低いWANなどで使われることがあります。
例
ルーターの物理ポートは1Gbpsですが、 WANサービスの契約帯域が100Mbpsだとします。
ルーター側で適切な速度へシェーピングし、 その中で音声・業務・一般通信などを キューイングする設計を検討できます。
Traffic Policing
ポリシングは、 決められた通信レートを超えたトラフィックへ 廃棄や再マーキングなどの処理を行う考え方です。
たとえば、 低優先度の大量転送が一定量以上を占有しないよう、 上限を設定する場合などに利用できます。
実際の動作、バースト許容量、 廃棄・再マーキング方法は機器実装によって異なるため、 採用製品の仕様確認が必要です。
QoSの基本設計例
要件
100Mbpsの拠点間WANで、 次の通信を利用しているとします。
| 通信 | 想定最大通信量 | 業務影響 |
|---|---|---|
| IP電話 | 10Mbps | 遅延・途切れを極力避けたい |
| Web会議 | 25Mbps | 業務時間中の品質を確保したい |
| 基幹業務システム | 20Mbps | 応答遅延を抑えたい |
| 一般Web通信 | 30Mbps | 多少の遅延は許容 |
| バックアップ | 80Mbps | 完了が遅くなることは許容 |
最大値を単純に合計すると165Mbpsとなり、 100MbpsのWAN回線を超えます。
そこで、混雑時の扱いを決めます。
QoSクラス設計例
| クラス | 対象 | マーキング例 | 混雑時の扱い例 |
|---|---|---|---|
| VOICE | IP電話 | EF | 低遅延を重視した優先キュー |
| VIDEO | Web会議 | AF41など | 比較的高い帯域優先度 |
| BUSINESS | 基幹業務システム | AF31など | 一定の帯域を確保 |
| DEFAULT | 一般Web等 | CS0 | 通常転送 |
| BULK | バックアップ | 組織ポリシーによる | 余剰帯域を中心に利用 |
上記は考え方を理解するための例です。
実際の帯域割合やDSCPは、 パケットキャプチャーや監視データによる実測、 同時利用数、機器仕様、キャリア仕様、 アプリケーション要件を確認して決定します。
設計の考え方
- リアルタイム通信を特定する 音声やWeb会議など、 遅延・ジッターの影響が大きい通信を把握します。
- 業務重要通信を特定する 帯域競合によって業務停止や生産性低下につながる通信を確認します。
- 遅くなってもよい通信を確認する バックアップや大容量転送など、 混雑時に優先順位を下げられる通信を特定します。
- 必要な帯域を実測する 推測だけではなく、 現在の通信量、ピーク値、同時利用数を確認します。
- マーキングとキューの対応を決める どのDSCPをどのキューへ入れるかを設計します。
- 混雑状態で試験する QoSは回線が空いている状態だけ試験しても、 効果を確認できません。
QoS設計で確認するポイント
1.本当に混雑が発生しているか
QoS設定を始める前に、 まず現在の通信量を確認します。
- 平均帯域
- ピーク帯域
- 時間帯別通信量
- クラス別通信量
- インターフェースDrop
- キューDrop
- 遅延
- ジッター
- パケットロス
原因が回線混雑ではないのにQoSを設定しても、 問題は解決しません。
2.どこがボトルネックか
QoSは、特に帯域が狭くなるポイントで重要です。
ボトルネックを特定する
この例では、WANの100Mbps部分が ボトルネックになる可能性があります。
3.双方向を考える
片方向だけQoSを設定しても、 反対方向の混雑が原因なら問題は解決しません。
上り・下りそれぞれの 通信量と制御可能な場所を確認します。
4.回線事業者側の扱いを確認する
自社ルーターでDSCPを付けても、 WANサービスやインターネットの途中で 同じ扱いが保証されるとは限りません。
閉域網サービスなどでQoSクラスが提供される場合は、 キャリア側のクラス仕様、 DSCPマッピング、 契約帯域などを確認します。
5.監視まで設計する
QoSは設定して終わりではありません。
運用開始後に次の情報を確認できるようにします。
- クラス別パケット数・バイト数
- クラス別Drop数
- 優先キュー利用量
- ポリシングDrop
- インターフェース使用率
- 遅延・ジッター・ロス
QoS設計表のテンプレート例
| クラス名 | 対象通信 | 識別条件 | DSCP | キュー | 帯域・上限 | 監視項目 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| VOICE | IP電話 | 音声VLAN等 | EF | Priority | 要件から決定 | Drop・遅延・ジッター |
| BUSINESS | 基幹業務 | IP・アプリ等 | 設計値 | 保証帯域 | 要件から決定 | 帯域・Drop |
| DEFAULT | 一般通信 | その他 | CS0等 | Default | 残余帯域 | 帯域・Drop |
QoS設計でよくある失敗
1.全部を高優先度にする
すべての通信を高優先度にすると、 クラス分けした意味がなくなります。
2.通信量を測定せず帯域を決める
「音声は10%くらい」などの感覚だけで設定すると、 実際の利用量と合わない可能性があります。
3.DSCPを付けるだけで終わる
マーキングだけ行っても、 後続機器がその値に応じたキュー制御をしなければ 期待する効果は得られません。
4.端末のマーキングをすべて信用する
Trust Boundaryを決めず、 任意の端末からの高優先度マーキングを信用すると QoSポリシーを乱す原因になります。
5.正常時だけ試験する
QoSの効果を確認するには、 帯域を競合させた状態で 優先通信が守られるか確認する必要があります。
6.QoSで帯域不足を隠そうとする
常時回線が飽和しているなら、 QoSだけでなく回線増速や構成変更も検討します。
QoSの目的は、 遅い回線を魔法のように速くすることではありません。
限られた帯域の中で、 業務上重要な通信を守ることです。
顧客・上司へQoSをどう説明するか
技術に詳しくない相手へ、 DSCPやキューイングから説明を始める必要はありません。
まず、 業務への影響 から説明します。
説明例
「回線が空いている時間帯は、 どの通信も問題なく流れます。 しかし、バックアップや大容量ファイル転送が重なると、 音声通話やWeb会議まで同じように待たされる可能性があります。
そこで、音声や重要な業務通信をあらかじめ分類しておき、 回線が混雑したときには重要な通信を優先して送るようにします。 これがQoSです。」
道路にたとえる
QoSは高速道路の交通整理にたとえると説明しやすくなります。
道路そのものの車線数を増やすのが 「回線増速」だとすると、 QoSは混雑時に 「どの車両をどのレーンへ通すか」 を決める仕組みです。
| 技術 | 顧客向けの説明 |
|---|---|
| Classification | 通信の種類を見分ける |
| Marking | 通信へ優先度の目印を付ける |
| Queuing | 混雑時の待ち行列を分ける |
| Priority | 重要通信を先に送る |
| Shaping | 急激な通信をならして送る |
| Policing | 決めた上限を超える通信を制限する |
上級エンジニアに必要なのは、 「DSCP 46だからEFです」と説明することだけではありません。
なぜその通信を優先するのか、 優先しない場合にどの業務へ影響するのか まで説明できることが重要です。
QoSで使われる英語表現
| 英語 | 意味 |
|---|---|
| Quality of Service | サービス品質・QoS |
| Classification | 分類 |
| Marking | マーキング |
| DSCP | Differentiated Services Code Point |
| Queuing | キューイング・待ち行列制御 |
| Priority Queue | 優先キュー |
| Congestion | 輻輳・混雑 |
| Latency | 遅延 |
| Jitter | 遅延のばらつき |
| Packet Loss | パケット損失 |
| Traffic Shaping | トラフィックシェーピング |
| Traffic Policing | トラフィックポリシング |
| Trust Boundary | マーキングを信頼する境界 |
ベンダードキュメントで使われる表現例
Classify traffic based on DSCP values.
DSCP値に基づいてトラフィックを分類します。
Voice traffic requires low latency and low jitter.
音声通信には低遅延・低ジッターが必要です。
Apply the QoS policy to the outbound interface.
QoSポリシーを出力インターフェースへ適用します。
Traffic exceeding the configured rate may be dropped.
設定レートを超える通信は廃棄される場合があります。
理解度チェック
用語だけではなく、 QoSの目的と設計判断を理解できているか確認します。
問題1.QoSの説明として最も適切なものはどれですか。
- 100Mbpsの回線を200Mbpsへ増速する技術
- すべての通信を同じ優先順位で処理する技術
- 通信を分類し、混雑時の優先順位や帯域の扱いを制御する仕組み
- IPアドレスを自動配布する技術
解答を見る
QoSは回線帯域そのものを増やすのではなく、 限られた帯域の使い方を通信の重要度に応じて制御します。
問題2.リアルタイム音声で特に注意したい品質指標を 3つ挙げてください。
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音声では、帯域だけでなくパケット到着時間の遅れやばらつき、 パケット損失が通話品質へ影響します。
問題3.DSCPの主な役割は何ですか。
- パケットの宛先IPアドレスを決める
- パケットをどのように扱うか判断するための識別情報として利用する
- DNSサーバーを指定する
- MACアドレスを暗号化する
解答を見る
DSCPは後続機器がQoSクラスや転送動作を判断する際に利用できます。
問題4.シェーピングとポリシングの大きな違いを説明してください。
解答を見る
シェーピングは、超過通信をキューへ保持して 後から送信することで通信速度を平準化します。
ポリシングは、設定したレートを超えた通信に対して 廃棄や再マーキングなどの制御を行います。
問題5.QoSを設定したのに音声品質が改善しません。 最初に確認したいことを3つ挙げてください。
解答を見る
解答例:
- 本当に回線混雑が発生しているか
- 音声通信が想定したクラスへ正しく分類されているか
- DSCPとキューの対応が正しいか
- QoSポリシーが正しいインターフェース・方向へ適用されているか
- キャリア網や対向側でも必要なQoS処理が行われているか
- キューDropやポリシングDropが発生していないか
実践演習:100Mbps WANのQoSを設計する
あなたは、東京本社と大阪支店を接続する WANの設計担当です。
演習ネットワーク
通信要件
| 通信 | 最大通信量 | 要件 |
|---|---|---|
| IP電話 | 10Mbps | 音声の途切れを極力避ける |
| Web会議 | 25Mbps | 業務時間中の映像・音声品質を維持する |
| 基幹業務システム | 20Mbps | 通常業務中の応答性を維持する |
| 一般Web | 30Mbps | 多少の遅延は許容する |
| バックアップ | 80Mbps | 業務通信を妨げなければ完了時間延長可 |
課題1.通信をクラス分けする
どの通信を同じQoSクラスへまとめるか考えてください。
VIDEO:______________
BUSINESS:____________
DEFAULT:_____________
BULK:______________
課題1の解答例を見る
- VOICE:IP電話
- VIDEO:Web会議
- BUSINESS:基幹業務システム
- DEFAULT:一般Web
- BULK:バックアップ
課題2.優先順位を決める
混雑時に、どの通信を優先すべきか理由とともに整理してください。
理由:_________________
次に守る通信:_____________
理由:_________________
優先度を下げられる通信:________
理由:_________________
課題2の解答例を見る
最優先:IP電話
遅延・ジッター・ロスの影響を受けやすく、 通話品質へ直接影響するためです。
次に守る通信: Web会議、基幹業務システム
Web会議はリアルタイム性が高く、 基幹業務システムは業務生産性へ影響するためです。
優先度を下げられる通信: バックアップ
完了時間が長くなることを許容できるため、 混雑時には業務通信へ帯域を譲る設計が可能です。
課題3.QoS設計表を作る
課題3の解答例を見る
| クラス | 通信 | マーキング例 | 扱い |
|---|---|---|---|
| VOICE | IP電話 | EF | 低遅延を重視する優先キュー |
| VIDEO | Web会議 | AF41等 | 十分な帯域を確保 |
| BUSINESS | 基幹業務 | AF31等 | 混雑時にも一定帯域を確保 |
| DEFAULT | 一般Web | CS0等 | 通常転送 |
| BULK | バックアップ | ポリシーによる | 余剰帯域中心・必要なら上限制御 |
実案件では、この表へ具体的な帯域値、 burst値、マッチ条件、適用インターフェース、 機器設定などを追加します。
課題4.試験項目を考える
QoS設定後にどのような試験を行うべきか、 5つ以上挙げてください。
2.__________________
3.__________________
4.__________________
5.__________________
課題4の解答例を見る
- 各通信が想定したQoSクラスへ分類されること
- 想定したDSCPへマーキングされること
- 非混雑時に各通信が正常利用できること
- WANを意図的に混雑させても音声品質が維持されること
- Web会議が混雑時にも利用可能であること
- 基幹業務通信に必要な帯域が確保されること
- バックアップが高優先通信を圧迫しないこと
- クラス別Dropカウンターを確認できること
- QoS設定削除時との差を比較できること
QoS試験で重要なのは、 「正常に通信できた」だけで終わらないことです。
意図的に混雑を発生させ、 優先クラスと低優先クラスの挙動が 設計どおり変化することを確認します。
自分の言葉で説明する課題
技術に詳しくない顧客から、 「回線を増速すればよいのに、なぜQoSが必要なのですか?」 と質問されました。
1分程度で説明してください。
説明例を見る
回線増速は通信できる総量を増やす方法ですが、 通信量が増えれば再び混雑する可能性があります。
QoSは、回線が混雑したときに、 音声や重要な業務システムなどを優先して送る仕組みです。
つまり、回線増速が「道路を広くする対策」だとすると、 QoSは「混雑したときの交通整理」です。 必要に応じて両方を組み合わせます。
まとめ
- QoSは、通信を分類し、 混雑時の優先順位・帯域・廃棄方法などを制御する仕組み
- QoSを設定しても、 回線そのものの物理帯域が増えるわけではない
- 通信品質では、 帯域・遅延・ジッター・パケットロスを確認する
- QoSの基本は 「分類 → マーキング → キューイング → 送信制御」 の流れで考える
- DSCPはIPパケットへ付与するQoS識別情報として利用できる
- キューイングでは、 混雑時にどの通信を先に送るかを制御する
- シェーピングは通信を平準化し、 ポリシングは設定レートを超える通信を制限する
- 「全部を最優先」にするのではなく、 業務影響と実測データからクラスを設計する
- QoSは正常時だけでなく、 意図的な混雑状態で試験する
- 設計時にはキャリア網、対向側、 Trust Boundary、監視まで含めて考える
QoS設計で最も重要なのは、 「どのパケットを優先するか」ではなく、 「どの業務を混雑から守る必要があるか」を決めることです。
第3章では、BGP、回線冗長化、ゲートウェイ冗長化、 QoS、マルチキャスト、MPLS、SD-WAN、SASE、ZTNAなど、 より高度な企業ネットワーク技術を順番に学びます。

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