ネットワーク中級編 第4章 実践演習|パケット解析と障害切り分け

ネットワーク中級編|第4章 実践演習

このページでは、第4章「検証とトラブルシューティング」で学んだ内容を使い、 パケット解析と障害切り分けを実務に近い形で演習します。

NETWORK INTERMEDIATE|PRACTICAL EXERCISE

第4章 実践演習
パケット解析と障害切り分け

「通信できません」という申告に対して、 構成図・コマンド・パケットキャプチャー・ログを確認し、 原因を根拠とともに説明できるかを確認します。

対象レベル Level 2・中級
想定時間 60〜90分
問題数 5ケース+最終報告
目標 根拠を示して障害を切り分ける
演習環境 ブラウザのみでも可

トラブルシューティングで重要なのは、 知っているコマンドを片っ端から実行することではありません。

「正常な範囲はどこまでか」 「どの確認結果から何を除外できるか」 「次に何を確認すれば原因を絞れるか」 を順番に考えることが重要です。

この実践演習で確認するスキル

  • ARP・TCP・DNSパケットを読み取れる
  • VLAN設定ミスをコマンド結果から特定できる
  • STPのポート状態から通信経路を判断できる
  • ルーティングテーブルから経路障害を判断できる
  • DHCP・DNS・NATを段階的に切り分けられる
  • 遅延・パケットロスの発生区間を絞り込める
  • 調査結果と根拠を文章で報告できる
  • 推測と確認済みの事実を分けて説明できる

演習の進め方

各ケースでは、利用者からの申告と調査結果が提示されます。 解答を見る前に、次の順番で考えてください。

① 症状を整理
② 正常範囲を確認
③ 原因候補を絞る
④ 追加確認を決める
⑤ 根拠を報告

本演習では、「最初から設定を全部見る」は禁止です。

与えられた情報から仮説を立て、 必要な確認だけを行うつもりで問題を解いてください。

採点基準:100点満点

正解だけでなく、理由まで説明できたかを確認してください。

CASE 1 15点
CASE 2 15点
CASE 3 15点
CASE 4 25点
CASE 5+報告 30点

共通ネットワーク構成

ある小規模オフィスでは、営業部・技術部・サーバーを VLANで分割しています。

演習ネットワーク

PC-A 営業部
VLAN 10
192.168.10.10
SW1 Access / Trunk
STP
SW2 Access / Trunk
STP
PC-B 技術部
VLAN 20
DHCP
R1 VLAN間ルーティング
NAT
Internet 外部ネットワーク
Web Server 203.0.113.50
TCP/443
Server VLAN 30
192.168.30.10
DHCP / DNS
VLAN 10:192.168.10.0/24(営業部)
VLAN 20:192.168.20.0/24(技術部)
VLAN 30:192.168.30.0/24(サーバー)
R1:各VLANのデフォルトゲートウェイ
Server:DHCP・DNSサービスを提供
インターネット接続:R1でNAT

基本方針: 障害時は「端末 → L2 → L3 → サービス → 外部」の順に、 正常な地点を積み上げていきます。

1
Wireshark ARP TCP DNS

WiresharkでWebアクセスを読み取る

PC-Aからブラウザで https://www.example.test/ へアクセスしました。

パケットキャプチャーには、次の通信が記録されています。

No. 送信元 宛先 Protocol Info
1 192.168.10.10 Broadcast ARP Who has 192.168.10.1?
2 192.168.10.1 192.168.10.10 ARP 192.168.10.1 is at 00:11:22:33:44:55
3 192.168.10.10 192.168.30.10 DNS Standard query A www.example.test
4 192.168.30.10 192.168.10.10 DNS A 203.0.113.50
5 192.168.10.10 203.0.113.50 TCP 51532 → 443 [SYN]
6 203.0.113.50 192.168.10.10 TCP 443 → 51532 [SYN, ACK]
7 192.168.10.10 203.0.113.50 TCP 51532 → 443 [ACK]

課題1-1.No.1〜2では何を確認していますか

自分の回答:______________________
解答を見る

PC-Aがデフォルトゲートウェイ 192.168.10.1のMACアドレス をARPで確認しています。

No.1がARP Request、No.2がARP Replyです。

課題1-2.DNS名前解決は成功していますか

成功/失敗:______
根拠:______________________
解答を見る

成功しています。

PC-AからDNSサーバーへ問い合わせが送られ、 DNSサーバーから 203.0.113.50 というAレコードの応答が返っているためです。

課題1-3.TCP接続はどこまで成功していますか

SYN → ______ → ______
解答を見る

SYN → SYN/ACK → ACK が確認できています。

TCPの3ウェイハンドシェイクが完了しているため、 PC-AからWebサーバーのTCP/443まで接続できています。

2
VLAN Trunk Ping

PC-Bだけ通信できない

PC-Aは正常に通信できますが、 PC-Bからデフォルトゲートウェイへpingできません。

PC-Bの設定

IP Address : 192.168.20.20 Subnet Mask : 255.255.255.0 Default Gateway : 192.168.20.1

SW2の確認結果

SW2# show vlan brief VLAN Name Status Ports —- ——————————– ——— —————- 1 default active 10 SALES active 20 ENGINEER active Gi0/10 30 SERVER active SW2# show interfaces trunk Port Mode Encapsulation Status Gi0/1 on 802.1q trunking Port Vlans allowed on trunk Gi0/1 10,30

課題2-1.PC-BのIP設定に問題はありますか

判断:________________
解答を見る

提示された情報だけを見る限り、 PC-BのIPアドレス・サブネットマスク・デフォルトゲートウェイは VLAN 20の設計と一致しています。

課題2-2.最も疑わしい設定箇所はどこですか

原因候補:______________________
解答を見る

SW2のトランクポートGi0/1です。

Allowed VLANが 10,30 となっており、VLAN 20が許可されていません。

そのため、PC-Bが所属するVLAN 20のフレームを トランクリンク経由で転送できません。

課題2-3.修正後に何を確認しますか

3つ以上書いてください。
解答例を見る
  • トランクのAllowed VLANに20が含まれたこと
  • PC-Bから192.168.20.1へpingできること
  • PC-Bから他VLANへの必要な通信ができること
  • 既存のVLAN 10・30の通信に影響がないこと
  • MACアドレステーブルにPC-BのMACが正しいVLANで学習されること
3
STP Loop Port State

冗長リンク追加後にネットワークが不安定になった

SW1とSW2の間に冗長リンクを追加しました。 その直後から、一時的に通信が不安定になるという申告がありました。

SW1# show spanning-tree vlan 10 VLAN0010 Spanning tree enabled protocol rstp Root ID Priority 40970 Address 0011.2233.4400 This bridge is the root Interface Role Sts Cost Type —————- —- — ——— —————- Gi0/1 Desg FWD 4 P2p Gi0/2 Desg FWD 4 P2p SW2# show spanning-tree vlan 10 VLAN0010 Root ID Priority 40970 Address 0011.2233.4400 Cost 4 Port Gi0/1 Interface Role Sts Cost Type —————- —- — ——— —————- Gi0/1 Root FWD 4 P2p Gi0/2 Altn DISC 4 P2p

課題3-1.SW2のGi0/2がDISCになっているのは異常ですか

判断:正常/異常
理由:______________________
解答を見る

正常です。

SW2にはSW1へ到達する冗長な経路があり、 Gi0/1がRoot Port、Gi0/2がAlternate Portとなっています。

RSTPがGi0/2をDiscarding状態にすることで、 Layer 2ループを防止しています。

課題3-2.Gi0/1が切断した場合、期待する動作は何ですか

期待動作:______________________
解答を見る

Gi0/1の経路が利用できなくなった場合、 Alternate PortであるGi0/2が新しい転送経路として Forwardingへ移行することが期待されます。

課題3-3.STP障害で確認する情報を4つ挙げてください

① ______
② ______
③ ______
④ ______
解答例を見る
  • ルートブリッジが想定どおりか
  • 各ポートのRoleとState
  • Root Path Cost
  • 物理リンクのUp/Down状態
  • STPモードやVLANごとの状態
  • Topology Changeの発生状況
4
Routing DHCP DNS NAT

「インターネットにつながらない」を切り分ける

PC-Bの利用者から、 「インターネットにつながらない」と連絡がありました。

次の調査結果を上から順番に確認してください。

確認1:PC-BのIP設定

IP Address : 192.168.20.21 Subnet Mask : 255.255.255.0 Default Gateway : 192.168.20.1 DNS Server : 192.168.30.10 DHCP Enabled : Yes

確認2:ping

C:\> ping 192.168.20.1 Reply from 192.168.20.1: bytes=32 time<1ms TTL=255 C:\> ping 192.168.30.10 Reply from 192.168.30.10: bytes=32 time=1ms TTL=64 C:\> ping 8.8.8.8 Reply from 8.8.8.8: bytes=32 time=18ms TTL=115

確認3:DNS

C:\> nslookup www.example.test Server: 192.168.30.10 Address: 192.168.30.10 *** 192.168.30.10 can’t find www.example.test: Server failed

課題4-1.DHCPを最優先で疑うべきですか

はい/いいえ:______
理由:______________________
解答を見る

いいえ。

PC-Bは192.168.20.21/24、 デフォルトゲートウェイ192.168.20.1、 DNSサーバー192.168.30.10を取得しています。

さらにデフォルトゲートウェイへ疎通できているため、 この時点ではDHCP障害を最優先で疑う必要はありません。

課題4-2.ルーティング障害の可能性は高いですか

判断:______________________
解答を見る

優先度は低いと判断できます。

PC-Bから別VLANのDNSサーバーへ到達でき、 さらに外部IPアドレス8.8.8.8へもpingできています。

少なくともPC-Bから外部ネットワークまでの IP到達性は確認できています。

課題4-3.最も疑わしい障害箇所はどこですか

原因候補:______________________
解答を見る

DNSサーバーまたはDNS名前解決処理 が最も疑わしい状態です。

DNSサーバー192.168.30.10自体へのIP疎通は成功していますが、 nslookupでは「Server failed」となっています。

したがって、 「ネットワーク的にDNSサーバーへ届かない」のではなく、 DNSサービスや上位DNSへの問い合わせなどを確認する段階です。

追加確認

DNSを修正したところ名前解決は成功しましたが、 Webサイトだけ表示できません。

C:\> nslookup www.example.test Name: www.example.test Address: 203.0.113.50 R1# show ip nat translations Pro Inside global Inside local Outside local Outside global icmp 198.51.100.10:7 192.168.20.21:7 8.8.8.8:7 8.8.8.8:7 R1# show access-lists Extended IP access list INTERNET-FILTER permit icmp 192.168.20.0 0.0.0.255 any deny tcp 192.168.20.0 0.0.0.255 any eq 443 permit ip any any

課題4-4.Webサイトを表示できない原因を特定してください

原因:______________________
解答を見る

ACL INTERNET-FILTER でVLAN 20から外部への TCP/443がdeny されています。

pingはICMPなので成功しますが、 HTTPS通信はTCP/443を使用するためWebサイトを表示できません。

「pingが通る=すべてのアプリケーション通信が正常」 ではないことがポイントです。

5
Latency Packet Loss Interface

通信はできるが遅い

PC-Aから業務サーバーへの通信は成功しますが、 利用者から「画面表示が遅い」と申告されています。

ping結果

C:\> ping 192.168.30.10 -n 10 Reply from 192.168.30.10: bytes=32 time=2ms Reply from 192.168.30.10: bytes=32 time=3ms Request timed out. Reply from 192.168.30.10: bytes=32 time=85ms Reply from 192.168.30.10: bytes=32 time=92ms Request timed out. Reply from 192.168.30.10: bytes=32 time=3ms Reply from 192.168.30.10: bytes=32 time=4ms Reply from 192.168.30.10: bytes=32 time=88ms Reply from 192.168.30.10: bytes=32 time=3ms Packets: Sent = 10, Received = 8, Lost = 2 (20% loss)

SW1 uplinkの確認

SW1# show interfaces gi0/1 GigabitEthernet0/1 is up, line protocol is up 5 minute input rate 850000000 bits/sec 5 minute output rate 910000000 bits/sec 128334 input errors 0 CRC 95622 output drops

課題5-1.「通信断」と判断してよいですか

判断:______________________
解答を見る

完全な通信断ではありません。

応答しているパケットもありますが、 20%のパケットロスと大きな遅延の揺らぎが確認されています。

「通信できる/できない」の二択ではなく、 品質劣化として調査する必要があります。

課題5-2.SW1 Gi0/1で注目すべき値は何ですか

① ______
② ______
③ ______
解答を見る
  • 850Mbps / 910Mbpsという高いトラフィック量
  • input errors
  • output drops

特にoutput dropsが増加し続けている場合、 インターフェースの送信処理でパケットが廃棄されている可能性があります。

課題5-3.次に何を確認しますか

優先順位を付けて3つ以上書いてください。
解答例を見る
  1. input errors / output dropsが継続して増えるか確認する
  2. インターフェースの帯域使用率を時間軸で確認する
  3. 対向ポートのエラー・ドロップも確認する
  4. どの通信が帯域を使用しているか確認する
  5. 遅延やロスが発生する時間帯とトラフィック量を比較する
  6. 必要に応じてパケットキャプチャーで再送の有無を確認する

最終課題:障害調査報告を作成する

最後に、CASE 4の障害について、 上司または顧客へ報告する文章を作ってください。

技術用語だけを並べるのではなく、 事象・影響・確認結果・原因・対応・確認結果 を分けて整理します。

障害調査報告テンプレート

1.事象 何ができなかったのか
2.影響範囲 誰・どの端末・どの通信へ影響したのか
3.確認結果 正常だった項目と異常だった項目
4.原因 何が原因だったのか
5.対応 何を変更・修正したのか
6.復旧確認 どの試験で正常化を確認したのか
【事象】

【影響範囲】

【確認結果】

【原因】

【対応】

【復旧確認】
報告例を見る

【事象】
技術部PCからインターネット上のWebサイトへHTTPS接続できない事象が発生しました。

【影響範囲】
VLAN 20に所属する技術部端末から、外部TCP/443宛ての通信に影響していました。

【確認結果】
PCのIPアドレス取得、デフォルトゲートウェイへの疎通、 DNSサーバーへの疎通、外部IPアドレスへのICMP疎通は正常でした。 DNS障害修正後は名前解決も正常となりましたが、 HTTPS通信のみ失敗していました。

【原因】
R1に適用されているACLで、 VLAN 20から外部宛てのTCP/443が拒否されていたことが原因です。

【対応】
通信要件を確認したうえでACLを修正し、 必要なHTTPS通信を許可しました。

【復旧確認】
VLAN 20の端末から対象WebサイトへHTTPS接続できること、 既存の許可・拒否通信へ意図しない影響がないことを確認しました。

実務で評価されるのは「原因を当てたこと」だけではありません。

どの確認結果から原因を絞り、 何を正常と判断し、 修正後に何を確認したのかまで説明できることが重要です。

自分の言葉で説明する課題

「ネットワーク障害が発生したとき、 どのような順番で調査しますか?」

次の言葉をすべて使い、1分程度で説明してください。

  • 構成図
  • 正常範囲
  • ping
  • ルーティング
  • パケットキャプチャー
  • 根拠
私はネットワーク障害が発生した場合、まず____________________________。
説明例を見る

ネットワーク障害が発生した場合は、まず構成図を確認し、 送信元から宛先までどの機器と経路を通るのかを整理します。

次にpingなどを使って、どこまで通信できているかを確認し、 正常範囲と異常範囲の境界を絞ります。 必要に応じてVLAN、STP、ルーティング、 DHCP・DNS・NATなどを確認します。

コマンド結果だけで判断できない場合は、 パケットキャプチャーを取得し、 ARP、DNS、TCPなどがどの段階まで成功しているかを確認します。

最後に、推測ではなく確認した事実を根拠として、 原因・対応・復旧確認結果を報告します。

自己採点と修了判定

得点 判定 次に行うこと
90〜100点 十分理解できています 第5章「実務への接続」へ進みましょう。
80〜89点 修了ライン 間違えたケースだけ復習してから次へ進みましょう。
60〜79点 もう一度復習 原因を当てるだけでなく、根拠を説明できるか確認しましょう。
59点以下 第4章を再確認 31〜40の記事を順番に復習してから再挑戦しましょう。

おすすめ修了基準:80点以上

ただし、点数以上に重要なのは 「なぜその原因と判断したのか」を自分の言葉で説明できることです。

第4章で身につけた障害切り分けの型

構成を把握
正常範囲を確認
境界を絞る
パケット・ログ確認
根拠付きで報告

第4章で最も重要なのは、 個々のコマンドを暗記することではありません。

「どこまで正常か」を確認しながら、 障害地点を少しずつ絞り込む考え方 を身につけることです。

まとめ

  • パケット解析ではARP・DNS・TCPを通信の流れとして確認する
  • VLAN障害ではAccess VLANとTrunkのAllowed VLANを確認する
  • STPではRoot Bridge、Port Role、Port State、Costを確認する
  • ルーティング障害では送信経路だけでなく戻り経路も確認する
  • DHCP・DNS・NATは、それぞれの処理段階を分けて確認する
  • pingが成功してもTCP/UDPの業務通信が成功するとは限らない
  • 遅延・パケットロスでは帯域使用率、エラー、ドロップを確認する
  • 障害報告では、事象・影響・確認結果・原因・対応・復旧確認を整理する

障害切り分けとは「原因を予想する作業」ではなく、 確認結果を積み上げて原因候補を減らしていく作業です。

次は第5章「実務への接続」へ

第4章では、構成・コマンド・パケットを使って 技術的に障害を切り分ける方法を学びました。

第5章では、実際の案件で必要になる 構成図、パラメータシート、作業手順書、 試験、変更作業、障害報告、ベンダー問い合わせ へ進みます。

ネットワーク中級編|第4章 修了

第4章では、検証環境の作成、Wireshark、 ARP・TCP・DNSのパケット解析、 VLAN・STP・ルーティング・サービス障害、 遅延・パケットロスの調査方法を学びました。

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