拠点間WAN設計とは?接続方式・帯域・冗長化・ルーティングの決め方を解説

ネットワーク上級編 16/全70記事

この記事は、 「ネットワーク上級編|要件定義・設計・クラウド・自動化へ進む」 の第16回です。

第2章では、要件定義で整理した条件を、 IPアドレス・VLAN・ルーティング・冗長化・回線などの 具体的なネットワーク設計へ変換する方法を学びます。

NETWORK ADVANCED|CHAPTER 2 BASIC DESIGN

拠点間WAN設計とは?接続方式・帯域・冗長化・ルーティングの決め方

本社・支店・工場・データセンターなど、離れた拠点同士をどのようにつなぐかを考えるのが 拠点間WAN設計です。単に回線サービスを選ぶだけではありません。 業務通信、帯域、遅延、可用性、セキュリティ、ルーティング、監視、 障害時の運用まで含めて設計します。

対象レベル Level 3〜4・上級
想定読了時間 約30分
身につく成果 WAN構成案を比較して設計できる
前提知識 ルーティング・冗長化設計
演習環境 ブラウザ・紙・Excel等

顧客から 「東京本社と大阪支店をつないでください」 と言われたとします。

しかし、拠点が2つあるという情報だけではWANを設計できません。

どの業務を使うのか、どの程度の通信量があるのか、 回線障害時も業務を継続する必要があるのか、 インターネット経由でもよいのか、将来拠点が増えるのかなどによって、 適切な構成は変わります。

WAN設計では、 「どの回線が有名か」ではなく、「要件に対してどの方式が適切か」 を判断することが重要です。

この記事を読み終えるとできること

  • 拠点間WAN設計の役割を説明できる
  • WAN設計で確認すべき要件を整理できる
  • 複数の拠点間接続方式を比較できる
  • 帯域・遅延・品質を考慮できる
  • 回線冗長化の考え方を説明できる
  • WANとルーティングをセットで設計できる
  • 障害時の運用まで含めて設計できる
  • WAN構成の選定理由を顧客へ説明できる

拠点間WAN設計とは何か

最初に覚える定義

拠点間WAN設計とは、本社・支店・工場・データセンターなど 離れたネットワーク同士を接続するために、 接続方式・帯域・経路・冗長化・セキュリティ・運用方法を決める工程です。

LAN設計では、主に1つの拠点内で VLANやIPアドレス、スイッチ、ルーティングなどを設計します。

WANでは、その拠点同士を接続します。

拠点間WANの基本イメージ

🏢 東京本社 192.168.10.0/24
🌐 WAN 拠点間ネットワーク
🏢 大阪支店 192.168.20.0/24
東京本社のPC → WAN → 大阪支店のサーバー

実務では、WAN部分だけを独立して考えることはできません。

  • 拠点ごとのIPアドレス
  • 拠点間ルーティング
  • 利用するアプリケーション
  • 通信量
  • 回線障害時の経路
  • セキュリティ
  • インターネット接続
  • クラウド接続
  • 監視・障害対応

これらを関連付けて設計する必要があります。

WAN設計は「回線を選ぶ作業」ではありません。

業務で必要な拠点間通信を、必要な性能・可用性・安全性・コストで 実現するためのネットワーク全体設計です。

WAN設計の全体像

WAN設計でも、上級編で繰り返し学んでいる 要件 → 方式比較 → 設計 の流れを使います。

📋 要件
何を実現するか
⚖️ 方式比較
WAN方式を比較
🧩 基本設計
構成・経路を決定
🔍 運用設計
監視・障害対応

例:東京本社と大阪支店を接続する

段階 内容例
要望 東京本社と大阪支店を安全につなぎたい
要件 業務システムを利用できること。必要な帯域を確保すること。 回線障害時にも主要業務を継続できること。
方式比較 インターネットVPN、通信事業者の閉域サービス、 SD-WANなどを比較する
基本設計 回線、拠点ルーター、ルーティング、冗長化、 セキュリティ、監視方式を決定する

「WANだからこの方式」という正解はありません。

要件、予算、拠点数、アプリケーション、既存環境、 運用体制によって適切な方式は変わります。

拠点間WAN設計で最初に確認する要件

WANサービスやルーターを選ぶ前に、 まず拠点間通信の要件を整理します。

1

拠点

  • 現在の拠点数
  • 所在地
  • 将来の増設予定
  • 重要拠点
2

通信先

  • 本社
  • データセンター
  • 他支店
  • クラウド
  • インターネット
3

通信量

  • 平均通信量
  • ピーク通信量
  • 拠点別通信量
  • 将来増加
4

品質

  • 遅延
  • パケットロス
  • ジッター
  • Web会議や音声
5

可用性

  • 許容停止時間
  • 回線冗長化
  • 機器冗長化
  • 自動切り替え
6

運用・コスト

  • 月額費用
  • 監視体制
  • 障害受付
  • 変更頻度

アプリケーションを確認する

必要帯域だけを見るのではなく、 WAN上で何を利用するのかを確認します。

アプリケーション例 確認したいポイント
Web業務システム 同時利用者数、応答時間、通信先
ファイル転送 ファイルサイズ、頻度、転送時間
Web会議 同時会議数、帯域、遅延、ジッター
IP電話 同時通話数、遅延、ロス、優先制御
バックアップ 転送データ量、実行時間帯、業務通信への影響
クラウドサービス 接続先、インターネット出口、通信量

帯域要件は「利用者数」だけでは決まりません。

同じ100人でも、メール中心の拠点と、 Web会議・大容量ファイル転送を多用する拠点では 必要なWAN性能が異なります。

拠点間トポロジーを決める

次に、 どの拠点からどの拠点へ通信する必要があるか を整理します。

本社集約型

本社を中心とした拠点間接続

🏢 大阪支店 Branch A
🏙️ 東京本社 Hub
🏢 福岡支店 Branch B

本社やデータセンターにサーバーが集中している場合は、 本社を中心とした構成が分かりやすくなります。

拠点間で直接通信する構成

支店同士でも頻繁に通信する場合は、 すべての通信を本社へ経由させることが適切とは限りません。

拠点間WANのトポロジーは、 組織図ではなく通信パターンから考える のがポイントです。

確認する通信パターン

  • 支店 → 本社
  • 支店 → データセンター
  • 支店 → 支店
  • 支店 → インターネット
  • 支店 → クラウド
  • クラウド → オンプレミス

WAN設計では、構成図に線を引くだけでなく、 実際の通信方向を把握します。

WAN接続方式を比較する

要件を整理したら、 拠点間接続に利用する方式を比較します。

方式 概要 特徴 主な確認ポイント
インターネットVPN インターネット回線上に 暗号化されたVPN通信を構成する 比較的導入しやすく、 既存インターネット回線を利用しやすい 回線品質、暗号化、グローバルIP、 VPN装置、冗長化
通信事業者の閉域サービス 通信事業者が提供する 閉じたネットワークを利用する 多拠点接続をまとめて構成しやすい 提供エリア、帯域、SLA、 経路制御、費用
専用線 特定地点間を専用の回線として接続する 固定された拠点間接続を設計しやすい 距離、帯域、冗長化、 納期、コスト
SD-WAN 複数のWAN回線を利用しながら、 ポリシーに応じて通信経路を制御する 多拠点や複数回線を 集中的に管理しやすい 対象拠点数、回線構成、 アプリケーション制御、運用方式

方式を名前だけで選ばない

「閉域網だから安全」 「SD-WANだから最新」 「インターネットVPNだから安い」 という単純な判断は避けます。

実際には次の観点で比較します。

  • 必要な帯域を確保できるか
  • 必要な拠点で利用できるか
  • 障害時の業務継続要件を満たせるか
  • 必要なセキュリティを確保できるか
  • 運用チームが管理できるか
  • 導入・月額コストが予算内か
  • 開通までの期間がスケジュールに間に合うか
  • 将来の拠点追加へ対応できるか

方式比較では「優劣」ではなく「要件への適合度」を評価します。

帯域・遅延・通信品質を設計する

WANでは、単に 「1Gbps回線にすれば速い」 と考えるのではなく、実際の業務通信を分析します。

1.平均通信量だけで決めない

回線帯域を検討するときは、 平均値だけでなくピーク時を確認します。

WAN帯域設計で確認する値

平均通信量 通常時
ピーク通信量 繁忙時間帯
将来増加 利用者・拠点増加
必要帯域 回線設計

2.上りと下りを見る

WAN通信は一方向とは限りません。

バックアップデータの送信や監視カメラ映像など、 拠点から外部へ大量に送信する通信がある場合は、 上り方向の通信量も確認します。

3.遅延・ジッター・ロスを見る

音声やWeb会議などリアルタイム性が求められる通信では、 帯域だけでなく遅延や通信品質も重要になります。

項目 意味 影響例
帯域 単位時間に送れるデータ量 大容量通信・同時利用
遅延 通信が相手へ届くまでの時間 音声・Web会議・対話型システム
ジッター 遅延時間のばらつき 音声・動画品質
パケットロス 送信したパケットが途中で失われる割合 再送・音声品質・アプリ性能

4.QoSが必要か検討する

限られたWAN帯域を複数のアプリケーションで利用する場合、 重要通信を優先する必要があるかを検討します。

詳しいQoSの仕組みは、 上級編第25回「QoSの基本」で扱います。

WAN回線を冗長化する

本社と支店を1本の回線だけで接続すると、 その回線が停止した場合に拠点間通信も停止する可能性があります。

WAN回線の冗長化イメージ

🏢 支店 Branch
主回線 Primary WAN
🏙️ 本社 Head Office
バックアップ回線を別途用意し、主回線障害時に経路を切り替える

冗長化では何を二重化するのか

  • WAN回線
  • WANルーター
  • 通信事業者
  • 物理引き込み経路
  • 電源
  • 上位ネットワーク

回線を2本契約しただけでは、 必ずしも十分な冗長化とは限りません。

2本の回線が同じ通信設備や同じ引き込み経路を共有している場合、 1つの障害で両方が影響を受ける可能性も考慮します。

主回線とバックアップ回線の容量

バックアップ回線を用意する場合、 主回線と同じ帯域にするとは限りません。

たとえば通常時1Gbpsを使用していても、 障害時は重要業務だけを継続する方針であれば、 バックアップ回線は必要最低限の帯域とする設計も考えられます。

この判断には、 障害時に何の業務を残す必要があるか という業務要件が必要です。

切り替え方式も設計する

  • 自動切り替えか
  • 手動切り替えか
  • 何をもって障害と判断するか
  • 切り替えまで何秒・何分を許容するか
  • 復旧時に自動で主回線へ戻すか
  • 切り替え後に通信セッションへどのような影響があるか

冗長化設計は「2本あるか」ではなく、 「障害時に業務が継続できるか」で評価します。

WANとルーティングをセットで設計する

回線を接続しただけでは、 拠点間通信は成立しません。

各拠点のネットワークへ、 どの経路でパケットを届けるか を設計する必要があります。

例:3拠点を接続する

拠点 LANネットワーク
東京本社 10.10.0.0/16
大阪支店 10.20.0.0/16
福岡支店 10.30.0.0/16

東京本社から大阪支店へ通信するには、 10.20.0.0/16へ向かう経路が必要です。

ルーティング設計で決めること

  • スタティックルートか動的ルーティングか
  • どの経路情報をWANへ広告するか
  • デフォルトルートをどこへ向けるか
  • 主回線・副回線の優先順位
  • 障害時の経路切り替え
  • 経路集約を行うか
  • ルーティングループを防げるか
  • 既存ネットワークとの経路重複がないか

拠点が増えたときも考える

2拠点だけならスタティックルートで十分でも、 将来20拠点、50拠点と増える場合には、 運用負荷が変わります。

設計時には、 現在の規模だけでなく将来拡張時の運用 も考慮します。

WAN方式とルーティング方式は別々に決めるのではなく、 セットで検討します。

拠点間WANのセキュリティを考える

WANを設計するときは、 「拠点間につながっているから安全」と考えず、 どの通信をどのように保護するかを確認します。

確認したいポイント

  • 通信経路上で暗号化が必要か
  • 拠点間で許可する通信は何か
  • 拠点ごとにアクセス可能なシステムを分けるか
  • WANルーターの管理アクセスをどこから許可するか
  • 不正な経路情報を受け取らないようにするか
  • WAN障害時にインターネットへ迂回させる場合の安全性は十分か
  • ログをどこへ保存するか

インターネットVPNの場合

インターネットを経由して拠点間を接続する場合は、 VPNなどによって通信を保護する設計を行います。

VPNそのものの設計については、 次の記事 「17. VPN設計」 で詳しく解説します。

監視・運用までWAN設計に含める

WANは、開通した時点で設計完了ではありません。

障害や性能低下を検知し、 原因を切り分けられるように運用方法も決めます。

監視したい項目

回線状態

  • インターフェース状態
  • 回線アップ・ダウン
  • エラー・破棄

通信量

  • 平均使用率
  • ピーク使用率
  • 輻輳の発生

通信品質

  • 遅延
  • パケットロス
  • ジッター

経路状態

  • ルーティング状態
  • 経路変更
  • 冗長回線への切り替え

障害時の責任分界を確認する

WAN障害が発生したとき、 自社で確認できる範囲と通信事業者へ問い合わせる範囲を整理します。

確認箇所 確認例
LAN側 端末、VLAN、LANルーティング
拠点ルーター IF状態、CPU、ログ、経路情報
WAN回線 回線状態、通信品質、事業者障害
対向拠点 対向ルーター、LAN、サーバー状態

設計時に監視方法を決めておくと、 障害発生後の「どこを確認すればよいか」が明確になります。

拠点間WAN設計の進め方

  1. 拠点と通信先を整理する 本社、支店、工場、データセンター、クラウドなど、 接続対象を洗い出します。
  2. 通信パターンを整理する どの拠点から、どの拠点・システムへ通信するかを確認します。
  3. アプリケーションと通信量を確認する 業務システム、Web会議、音声、ファイル転送などを確認します。
  4. 性能・可用性要件を整理する 必要帯域、遅延、許容停止時間、障害時の継続業務を決めます。
  5. WAN方式を比較する インターネットVPN、閉域サービス、専用線、 SD-WANなどの候補を比較します。
  6. 冗長化方式を決める 主回線・副回線、通信事業者、機器、物理経路などを検討します。
  7. ルーティングを決める 正常時と障害時の通信経路を設計します。
  8. セキュリティを設計する 暗号化、通信制御、管理アクセスなどを確認します。
  9. 監視・障害対応を決める 回線状態、品質、経路、切り替えを監視できるようにします。
  10. 構成案をレビューする 要件を満たしているか、単一障害点が残っていないか、 運用可能かを確認します。

WAN基本設計書に残したい項目

WAN設計で決定した内容は、 後から追跡できるように基本設計書へ残します。

  • 拠点一覧
  • WAN全体構成図
  • 拠点ごとのWAN接続方式
  • 回線種別・帯域
  • 主回線・副回線
  • IPアドレス
  • ルーティング方式
  • 経路優先順位
  • 障害時の切り替え方式
  • 暗号化方式の要否
  • 通信制御
  • 監視項目
  • 通信事業者との責任分界
  • 障害時の連絡方法
  • 将来拡張方針

WAN設計表の例

項目 東京本社 大阪支店
主回線 回線A 回線A
副回線 回線B 回線B
帯域 1Gbps 500Mbps
ルーティング 動的ルーティング 動的ルーティング
障害時 副回線へ切り替え 副回線へ切り替え
監視 回線・帯域・経路 回線・帯域・経路

拠点間WAN設計でよくある失敗

NG 回線サービスを最初に決める

「以前もこのサービスを使ったから」という理由だけで決めると、 今回の性能・可用性・拠点数・予算に合わない可能性があります。

NG 帯域だけを見る

Web会議や音声などでは、 帯域だけでなく遅延・ロス・ジッターも確認します。

NG 2回線あれば冗長化できていると思う

回線だけでなく、通信事業者、装置、電源、 引き込み経路などに単一障害点が残っていないか確認します。

NG 正常時の通信経路しか考えない

WAN設計では、主回線障害時に どの経路を通るかまで設計します。

NG 将来の拠点追加を考えない

2拠点から数十拠点へ増える可能性がある場合、 ルーティングや運用方法の拡張性も重要です。

NG 障害監視を後から考える

回線切り替えが発生しても監視できなければ、 バックアップ回線で動き続けていることに気づかない場合があります。

OK 要件からWAN方式・経路・冗長化を説明できる

「なぜこの回線なのか」「なぜ2回線なのか」 「なぜこのルーティングなのか」を、 顧客要件と結び付けて説明できる設計を目指します。

顧客・上司へWAN設計をどう説明するか

技術に詳しくない相手へ WANサービス名やルーティングプロトコルだけを説明しても、 設計意図は伝わりません。

悪い説明例

「本社と支店は2回線構成にして、 動的ルーティングで冗長化します。」

技術的には間違っていなくても、 なぜその構成が必要なのかが分かりません。

伝わりやすい説明例

「大阪支店では本社の受発注システムを常時利用しており、 WAN回線が停止すると業務を継続できません。 そのため回線を冗長化し、 主回線障害時にはバックアップ回線へ自動的に切り替えられる構成とします。」

技術を業務へ翻訳する

技術的な設計 顧客へ説明する意味
WAN回線を2回線にする 1回線の障害で拠点業務全体が止まるリスクを下げる
帯域を増やす 繁忙時間帯のWeb会議や業務システムの遅延を抑える
経路を自動切り替えする 障害時の手動対応を待たずに業務を継続する
拠点ごとに監視する 障害を早期に検知し、影響範囲を迅速に判断する
将来拠点を考慮する 拠点追加のたびにWAN全体を作り直すリスクを減らす

上流工程では、 技術 → 業務影響 → リスク・コスト へ翻訳して説明できることが重要です。

WAN設計で使われる英語表現

よく使われる単語

英語 意味
WAN Wide Area Network/広域ネットワーク
Branch office 支店・拠点
Head office 本社
WAN link WAN回線
Primary link 主回線
Backup link バックアップ回線
Bandwidth 帯域
Latency 遅延
Packet loss パケットロス
Jitter 遅延のばらつき
Failover 障害時の切り替え
Redundant link 冗長回線

設計レビューで使える表現

The branch offices are connected to the head office through redundant WAN links.

支店は冗長化されたWAN回線を使用して本社へ接続されています。

The backup link is used when the primary WAN link becomes unavailable.

主WAN回線が利用できなくなった場合、バックアップ回線を使用します。

We need to estimate the required bandwidth based on peak traffic.

ピーク時の通信量をもとに必要帯域を見積もる必要があります。

What is the acceptable downtime if the primary WAN circuit fails?

主WAN回線が障害になった場合、許容できる停止時間はどの程度ですか?

理解度チェック

WANサービスの名前を暗記するのではなく、 要件から設計判断できるかを確認しましょう。

問題1.拠点間WAN設計の説明として最も適切なものはどれですか。

  1. WANルーターの設定コマンドだけを決める
  2. 最も高速な通信サービスを選ぶ
  3. 拠点間通信に必要な回線・帯域・経路・冗長化・運用などを設計する
  4. 各PCのIPアドレスだけを決める
解答を見る
正解:C

WAN設計では接続方式だけでなく、 帯域、経路、冗長化、セキュリティ、監視・運用まで考えます。

問題2.顧客から「WANを高速にしてください」と言われました。 最初に行うべきことはどれですか。

  1. 最大帯域の回線を契約する
  2. すべて10Gbpsにする
  3. 利用アプリケーション、現在の通信量、ピーク値などを確認する
  4. ルーターを高性能モデルへ変更する
解答を見る
正解:C

「高速」は曖昧な要望です。 まず必要性能を判断する情報を確認します。

問題3.WAN回線を2回線契約すれば、 必ず完全な冗長構成になるでしょうか。

解答を見る
正解:必ずしもなりません。

通信事業者、物理引き込み経路、WANルーター、 電源などが共通していれば、 1つの障害で両回線が利用できなくなる可能性があります。

問題4.Web会議を多く利用するWANで、 帯域以外に確認したい通信品質を3つ挙げてください。

解答を見る
解答例:
  • 遅延
  • ジッター
  • パケットロス

問題5.WAN設計で正常時のルーティングだけでなく、 障害時のルーティングも設計する理由を説明してください。

解答を見る

主回線が停止したとき、 バックアップ回線へ正しく経路を切り替えて 必要な業務通信を継続させるためです。

実践演習:3拠点のWANを設計する

あなたは、ある企業のネットワーク更改プロジェクトで、 拠点間WANの基本設計を担当することになりました。

顧客から聞いた条件

  • 東京本社、大阪支店、福岡支店の3拠点がある
  • 各支店から東京本社の業務システムを利用する
  • Web会議の利用が増えている
  • 現在の回線は混雑時間帯に遅くなることがある
  • 東京本社との通信が停止すると支店の主要業務ができない
  • 可能であれば回線障害時も業務を継続したい
  • 今後3年間で支店が2拠点程度増える可能性がある
  • 費用は必要以上に増やしたくない

課題1.不足している情報を洗い出す

WAN設計を開始するために、 顧客へ追加で確認したい質問を10個考えてください。

1.________________________
2.________________________
3.________________________
4.________________________
5.________________________
6.________________________
7.________________________
8.________________________
9.________________________
10._______________________
課題1の解答例を見る
  1. 現在使用しているWAN回線の種類と帯域は何ですか?
  2. 各拠点の平均・ピーク通信量はどの程度ですか?
  3. Web会議は各拠点で最大何人程度が同時利用しますか?
  4. 本社システム以外に拠点間WANを利用する通信はありますか?
  5. 各拠点からインターネットへ直接通信する必要がありますか?
  6. クラウドサービスを利用していますか?
  7. 主回線障害時に継続しなければならない業務は何ですか?
  8. 許容できるWAN停止時間はどの程度ですか?
  9. 既存ルーターや回線で継続利用する必要があるものはありますか?
  10. WAN回線に使用できる予算の目安はありますか?

課題2.WAN要件を整理する

顧客の要望を、設計で利用できる要件へ変換してください。

顧客の要望 確認・具体化する内容
混雑時間帯に遅い ________________
障害時も業務を続けたい ________________
支店が増える予定 ________________
費用を抑えたい ________________
課題2の解答例を見る
  • 混雑時間帯に遅い: 現在の回線帯域、平均・ピーク通信量、 利用アプリケーション、遅延・ロスを確認する
  • 障害時も業務を続けたい: 許容停止時間、継続対象業務、 必要なバックアップ帯域、切り替え方式を確認する
  • 支店が増える予定: 将来拠点数、IPアドレス、 ルーティング、WAN方式の拡張性を確認する
  • 費用を抑えたい: 必要可用性を満たす範囲で、 主回線・副回線の帯域や方式を比較する

課題3.構成案を比較する

次の3つの構成案について、 性能・可用性・コスト・運用性の観点から比較してください。

  • 案A:インターネットVPN 1回線
  • 案B:主回線+バックアップ回線
  • 案C:複数回線を利用するSD-WAN構成
評価項目 案A 案B 案C
性能 ____ ____ ____
可用性 ____ ____ ____
コスト ____ ____ ____
運用性 ____ ____ ____
将来拡張 ____ ____ ____

この演習では、唯一の正解を選ぶことが目的ではありません。

顧客要件に対して、それぞれの案のメリット・デメリットを説明できること が重要です。

課題4.簡易WAN設計表を作る

最後に、次の形式でWAN基本設計を整理してください。

項目 設計内容 設計理由
WAN方式 ________ ________
主回線 ________ ________
副回線 ________ ________
帯域 ________ ________
ルーティング ________ ________
障害時動作 ________ ________
監視 ________ ________

自分の言葉で説明する課題

後輩エンジニアから、 「WAN設計って、結局どの回線を使うか決める仕事ですか?」 と質問されました。

1分程度で説明してください。

拠点間WAN設計とは、____________________________________。
説明例を見る

拠点間WAN設計は、単に回線サービスを選ぶ仕事ではありません。 本社や支店でどのような業務通信が必要なのかを確認し、 必要な帯域、遅延、可用性、セキュリティ、ルーティング、 障害時の切り替え、監視方法まで決める工程です。

複数の接続方式を比較し、 顧客の業務要件・コスト・運用体制に最も合う構成を選びます。

まとめ

  • 拠点間WAN設計とは、本社・支店・工場・データセンターなど 離れたネットワークを接続するための設計
  • WANサービスを先に選ぶのではなく、 要件 → 方式比較 → 設計の順番で考える
  • 拠点数、通信先、アプリケーション、 通信量、性能、可用性、運用、コストを確認する
  • インターネットVPN、閉域サービス、専用線、 SD-WANなどを要件に合わせて比較する
  • 帯域だけでなく、遅延・ジッター・パケットロスも考慮する
  • 回線冗長化では、回線だけでなく 機器・事業者・物理経路などの単一障害点も確認する
  • WAN回線とルーティングはセットで設計し、 正常時と障害時の経路を決める
  • セキュリティ、監視、障害対応、責任分界まで設計に含める
  • 「なぜこの回線・帯域・冗長化なのか」を 顧客の業務要件から説明できることが重要

上級編で目指すのは、WANサービスの名前を知っている状態ではありません。 複数の選択肢から要件に合う方式を選び、 選定理由とリスクを説明できる状態です。

次の記事:VPN設計

今回は、複数拠点をどのようにつなぐかという WAN全体の設計を学びました。

次の記事では、 インターネットなどのネットワークを利用して 安全な通信経路を構成する VPN設計を学びます。

VPNの利用目的、拠点間VPN、 暗号化、冗長化、経路設計などを、 要件からどのように決めるのかを解説します。

ネットワーク上級編 16/全70記事

上級編では、要件定義から基本設計、 BGP、クラウド、セキュリティ、自動化、 設計レビュー・顧客提案までを順番に学びます。

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