ネットワーク基本設計書の作り方|要件を設計へ落とし込む手順と記載項目を解説

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ネットワーク上級編 61/全70記事

この記事は、 「ネットワーク上級編|要件定義・設計・クラウド・自動化へ進む」 の第61回です。

第7章では、これまで学んだ要件定義・基本設計・クラウド・セキュリティ・自動化の知識を使い、 設計書・比較資料・移行計画・顧客説明資料などの実務成果物へ落とし込む方法 を学びます。

NETWORK ADVANCED|CHAPTER 7 DESIGN & PROPOSAL

基本設計書の作り方|要件をネットワーク設計へ落とし込む方法

IPアドレス、VLAN、ルーティング、冗長化などの技術を理解していても、 「基本設計書を作ってください」と言われると、何から書けばよいか迷うことがあります。 基本設計書は設定コマンドを書く資料ではありません。 要件定義で決めた条件をもとに、 どのような考え方・構成・方式でネットワークを実現するのか を関係者へ説明するための資料です。

対象レベル Level 3〜4・上級
想定読了時間 約30分
身につく成果 基本設計書の骨組みを作成できる
前提知識 要件定義・基本設計の各技術
演習環境 ブラウザ・Excel・Word等

ネットワーク設計案件では、 「正しい技術を選べること」だけでは十分ではありません。

なぜその方式を選んだのか、どの要件を満たすための設計なのか、 どこまでが今回の設計範囲なのかを文書として説明できること が重要です。

この記事では、基本設計書の役割から、記載項目、作成手順、 設計理由の書き方、レビューのポイントまでを実務を想定して整理します。

この記事を読み終えるとできること

  • 基本設計書の役割を説明できる
  • 要件定義書・基本設計書・詳細設計書を区別できる
  • 基本設計書に必要な章立てを作成できる
  • 要件からネットワーク方式へ落とし込める
  • 設計理由を文章として残せる
  • レビューで確認すべきポイントを整理できる

基本設計書とは何か

最初に覚える定義

ネットワーク基本設計書とは、 要件定義で決めた条件を満たすために、 ネットワークをどのような構成・方式・方針で実現するかを定義する文書です。

要件定義では、 「何を実現しなければならないのか」を整理しました。

基本設計では、その要件を受けて 「どういう仕組みで実現するのか」 を決めていきます。

要件から設計へ変換するイメージ

要件 単一障害でも通信を継続したい
設計方針 主要箇所を冗長化する
基本設計 ルーター・回線を冗長構成とする
詳細設計 機器・IF・プロトコル・値を決める

たとえば顧客から、 「回線障害が発生しても業務を継続したい」 という要件が出ているとします。

基本設計では、これを実現するために、 次のような方針を決めます。

  • インターネット回線を2回線構成とする
  • 異なる障害点となるよう回線を分散する
  • エッジルーターを冗長化する
  • 障害発生時はバックアップ回線へ切り替える
  • 切り替え状態を監視できる構成とする

基本設計書で最も重要なのは「設計判断を説明できること」です。

機器や技術の名前を並べるだけでなく、 「どの要件を満たすために、この設計にしたのか」が追跡できるようにします。

要件定義から設計までの全体像

基本設計書だけを単独で作るのではありません。 実務では、前工程と後工程を意識して作成します。

ネットワーク案件の代表的な流れ

要件定義 何を満たすか
基本設計 どういう方式で実現するか
詳細設計 具体的な値を決める
構築 設定を実装する
試験 要件を満たすか確認する

要件定義とのつながり

基本設計の入力となる代表的な情報には、次のものがあります。

  • 利用者数・端末数
  • 通信量・必要帯域
  • 可用性・許容停止時間
  • セキュリティ要件
  • 拠点数・接続先
  • クラウド利用状況
  • 運用・監視要件
  • ログ保存要件
  • 移行条件
  • 予算・納期・既存設備などの制約

要件定義の基本については、 「ネットワーク要件定義とは何か」 で詳しく解説しています。

要件定義書・基本設計書・詳細設計書の違い

設計経験が少ないと、 「基本設計書にどこまで書けばよいのか」 が分かりにくいことがあります。

まず、3つの資料の役割を分けて考えましょう。

文書 主な役割 書く内容
要件定義書 何を実現するか決める 業務・性能・可用性・セキュリティなどの条件 単一機器障害時も通信を継続する
基本設計書 どういう方式で実現するか決める 構成・設計方式・設計方針 コアルーターを2台構成とし冗長化する
詳細設計書 実装できる具体値を決める インターフェース・アドレス・パラメータ等 Gi1/0/1、10.0.0.1/30、OSPF Cost 10

基本設計は「考え方」、詳細設計は「実装値」と考えると整理しやすくなります。

ただし、実際の案件では基本設計書と詳細設計書の分け方が会社やプロジェクトによって異なります。 成果物の定義は案件開始時に確認しましょう。

ネットワーク基本設計書に記載する主な内容

基本設計書の章立てに絶対的な正解があるわけではありません。 案件規模や対象範囲によって変わります。

企業ネットワークであれば、代表的には次の内容を整理します。

01

目的・対象範囲

  • プロジェクトの目的
  • 設計対象
  • 設計対象外
  • 前提条件
  • 制約条件
02

ネットワーク全体構成

  • 物理構成
  • 論理構成
  • 拠点間接続
  • インターネット接続
  • クラウド接続
03

IPアドレス設計

  • アドレス体系
  • ネットワーク分割方針
  • 予約領域
  • 将来拡張
  • 重複防止方針

→ 第11回:IPアドレス設計

04

VLAN設計

  • VLAN分割方針
  • 用途別セグメント
  • サーバー・利用者・管理系の分離
  • VLAN間通信方針

→ 第12回:VLAN設計

05

ルーティング設計

  • スタティック・動的ルーティング
  • 経路集約
  • デフォルトルート
  • 経路制御方針
  • 障害時の経路

→ 第13回:ルーティング設計

06

冗長化・可用性設計

  • 機器冗長
  • リンク冗長
  • 回線冗長
  • ゲートウェイ冗長
  • 障害時の切り替え方式

→ 第14回:冗長化設計

07

外部・WAN接続設計

  • インターネット接続方式
  • 拠点間WAN
  • クラウド接続
  • VPN利用
  • 外部サービス接続
08

セキュリティ設計

  • ネットワーク分離
  • 通信許可方針
  • 管理アクセス
  • ファイアウォール配置
  • VPN・認証
09

DNS・DHCP等の共通サービス

  • 名前解決方式
  • DHCP配布方針
  • NTP
  • Syslog
  • 管理系サービス

→ 第18回:DNS・DHCP設計

10

監視設計

  • 死活監視
  • インターフェース監視
  • 性能監視
  • 障害通知
  • 監視対象・除外対象

→ 第19回:監視設計

11

ログ設計

  • 収集対象ログ
  • ログ転送先
  • 保存期間
  • 時刻同期
  • 障害・監査での利用方法

→ 第20回:ログ設計

12

運用・保守方針

  • 管理方法
  • 設定バックアップ
  • 障害時の対応
  • 保守アクセス
  • 変更管理

上級編の第11回〜第20回で学んだ内容は、 基本設計書を構成する主要な設計要素です。

個別技術を学ぶだけでなく、それらを1つの設計書へまとめることで 「ネットワーク全体を設計する力」につながります。

基本設計書を作る手順

最初からWordを開いて文章を書き始めるのではなく、 要件と設計判断を整理してから文書化すると作りやすくなります。

  1. 要件定義書を読み込む 性能、可用性、セキュリティ、運用、移行など、 ネットワークが満たすべき条件を確認します。
  2. 設計対象と対象外を確認する LAN、WAN、ファイアウォール、クラウド、無線LANなど、 自分が設計する範囲を明確にします。
  3. 制約条件を整理する 既存機器、指定製品、予算、納期、既存IP体系、 回線契約など設計を制限する条件を確認します。
  4. ネットワーク全体構成を考える 本社、拠点、データセンター、クラウド、 インターネットなどを大きな単位で配置します。
  5. 設計項目ごとに方式を決める IPアドレス、VLAN、ルーティング、冗長化、 セキュリティなどを順番に設計します。
  6. 設計理由を整理する 「なぜその方式を選んだのか」を 要件・制約・運用条件と結びつけます。
  7. 構成図と文章を対応させる 文書だけで説明せず、物理構成図・論理構成図・通信図などを使います。
  8. 設計間の矛盾を確認する VLAN、ルーティング、冗長化、FW、監視などが 互いに矛盾していないか確認します。
  9. 要件を満たしているか確認する 要件ごとに、どの設計で実現しているかを追跡します。
  10. 関係者レビューを実施する 顧客、PM、サーバー、セキュリティ、運用担当などと認識を合わせます。

小規模ネットワークを例に基本設計書を作る

具体例として、ある企業の本社ネットワーク更改を考えます。

要件

  • 利用者は約200名
  • 一般端末とサーバーをネットワーク分離する
  • インターネット接続を提供する
  • 主要ネットワーク機器の単一障害で業務を停止させない
  • 障害発生時に管理者へ通知する
  • 将来300名程度まで利用者が増える可能性がある

基本設計への変換

要件 基本設計 設計理由
一般端末とサーバーを分離する 利用者用VLANとサーバー用VLANを分割する 通信範囲とセキュリティポリシーを分離するため
単一障害で業務を停止させない コアスイッチを2台構成とする コアスイッチ1台の故障による全面停止を防ぐため
インターネット接続を提供する エッジルーター・FWを経由してインターネットへ接続する 外部通信を集約し、セキュリティ制御を行うため
障害時に管理者へ通知する 監視サーバーから主要機器を監視する 障害を早期に検知し、運用担当へ通知するため
将来300名まで増加する IPアドレスに拡張余地を持たせる 端末増加時のネットワーク再設計を避けるため

基本構成イメージ

本社ネットワークの基本構成

インターネット 外部ネットワーク
エッジ・FW 外部接続・通信制御
コアSW × 2 冗長構成
アクセスSW 端末を収容
VLAN10:一般利用者 / VLAN20:サーバー / VLAN99:管理
基本設計書 記載例

3.1 ネットワーク分割方針

利用者端末、業務サーバーおよびネットワーク管理通信について、 用途ごとにVLANを分割する。

一般利用者端末はVLAN10、業務サーバーはVLAN20、 ネットワーク機器の管理通信はVLAN99へ収容する。

3.2 冗長化方針

コアスイッチは2台構成とし、 単一機器障害時にも利用者ネットワークとサーバーネットワーク間の 通信を継続できる構成とする。

3.3 監視方針

コアスイッチ、アクセススイッチ、ファイアウォールを監視対象とし、 死活状態および主要インターフェースの状態を監視する。

障害検知時は運用担当者へ通知する。

基本設計書には「設計理由」を残す

設計書で特に差が出るのが、 なぜその設計にしたのか を説明できるかどうかです。

NG例

コアスイッチは2台構成とする。

GOOD例

主要ネットワーク機器の単一障害時にも業務通信を継続するという 可用性要件を満たすため、コアスイッチは2台構成とする。

どちらも「2台構成」という設計内容は同じです。

しかし、後者であれば、 「なぜ2台必要なのか」 「1台へ減らした場合に何が問題になるのか」 を説明できます。

設計理由は3つの情報から考える

要件

何を実現する必要があるのか。

例:障害時も通信を継続する。

制約

設計時に守る必要がある条件は何か。

例:既存機器を継続利用する。

比較

他の方式と比較してなぜ採用したのか。

例:運用負荷とコストを考慮して方式Aを採用する。

影響

この設計によって何が実現できるのか。

例:機器故障時の業務停止リスクを低減できる。

設計書は「設定の説明書」ではなく「判断の記録」でもあります。

数年後に別の担当者が読んでも、 なぜ現在の構成になっているのか理解できる資料を目指しましょう。

基本設計ではどこまで細かく書くのか

基本設計書と詳細設計書の境界で迷う場合は、 「その情報だけで機器設定を投入できるか」 を一つの判断基準にできます。

項目 基本設計の例 詳細設計の例
IPアドレス 拠点ごとに10.10.0.0/16を使用する VLAN10のGWは10.10.10.1/24
VLAN 利用者・サーバー・管理系を分離する VLAN ID 10、20、99を使用する
ルーティング 拠点内はOSPFによる動的ルーティングを使用する Area 0、Router ID 10.255.0.1を設定する
冗長化 デフォルトゲートウェイを冗長化する VRRP Group 10、Virtual IP 10.10.10.254
監視 主要機器の死活・IF・CPUを監視する SNMP OID、監視閾値、監視間隔を定義する

実際には案件ごとに文書の粒度が異なります。

「基本設計だから値を書いてはいけない」という意味ではありません。 誰が何を判断するための文書なのか を基準に粒度を決めることが重要です。

基本設計レビューで確認するポイント

基本設計書が完成したら、 文書の誤字だけでなく「設計として成立しているか」を確認します。

  • 要件定義書の要求がすべて設計へ反映されているか
  • 対象範囲と対象外が明確になっているか
  • 物理構成図と論理構成図に矛盾がないか
  • IPアドレス体系に重複や不足がないか
  • VLANとセキュリティ方針が一致しているか
  • 正常時だけでなく障害時の通信経路も成立するか
  • 単一障害点が残っていないか
  • 監視・ログ・運用まで考慮されているか
  • 将来拡張を妨げる設計になっていないか
  • 他システム・サーバー・クラウドとの責任分界が明確か
  • 設計理由を要件へ結びつけて説明できるか
  • 詳細設計へ進むために必要な情報が揃っているか

正常時の通信だけを確認して終わらないことが重要です。

冗長構成では特に、 「機器Aが停止したらどうなるか」 「回線1が停止したらどこを通るか」 「監視サーバー自身が停止したらどうなるか」 といった障害時の状態も確認します。

基本設計書作成でよくある失敗

1.要件を確認せずに設計を始める

エンジニアが慣れている構成をそのまま採用してしまうケースです。

技術的には正しくても、 顧客の可用性・性能・予算・運用要件を満たしていなければ適切な設計とはいえません。

2.構成図だけで終わる

構成図は非常に重要ですが、 図だけでは設計理由や通信方針までは説明できません。

構成図と文章を組み合わせて説明します。

3.機器名・型番だけを並べる

「Cisco○○を2台設置する」 と書くだけでは、その構成が必要な理由が分かりません。

先に設計要件や方式を説明し、 製品選定とは分けて整理します。

4.正常時しか考えていない

冗長化設計では、 障害時にどの経路へ切り替わるのかまで確認します。

5.運用を考慮していない

技術的に高度な構成でも、 運用担当者が扱えなければ障害対応や変更作業が難しくなります。

設計時には、監視、バックアップ、ログ、保守方法、 運用チームのスキルも考慮します。

6.資料間で値や名称が違う

構成図では「CORE-SW01」、 設計書では「L3SW-A」、 パラメータシートでは「SW01」のように名称がばらばらだと、 レビューや構築時のミスにつながります。

機器名、VLAN名、拠点名などの命名規則を統一します。

7.設計理由が残っていない

数年後に構成変更するとき、 「なぜこの設定が必要なのか分からない」 という状態になりやすくなります。

重要な設計判断には理由を残しましょう。

顧客・上司へ基本設計を説明する方法

顧客へ説明するときに、 最初からOSPF、VRRP、BGPなどの技術用語だけを並べると、 設計の価値が伝わりにくくなります。

次の順番で説明すると整理しやすくなります。

  1. 要件を確認する 「今回、主要機器の単一障害時にも業務通信を継続するという要件があります。」
  2. 設計方針を説明する 「そのため、主要な通信経路を冗長化しています。」
  3. 具体的な構成を説明する 「コアスイッチを2台構成とし、各アクセススイッチから双方へ接続します。」
  4. 障害時の動きを説明する 「片方のコアスイッチが停止した場合も、もう片方を経由して通信を継続します。」
  5. 残るリスクを説明する 「ただし、建物全体の停電や両回線同時障害については別途対策が必要です。」

技術 → 要件 → 業務への効果 の関係を説明できると、単なる機器説明ではなく「設計説明」になります。

基本設計で使う英語表現

海外ベンダーの設計資料やクラウドドキュメントでは、 次のような表現がよく使われます。

英語 意味 実務での使い方
High-level design 基本設計・上位設計 システム全体の構成・方式を説明するときに使う
Detailed design 詳細設計 具体的な設定値や構成を定義する
Design requirement 設計要件 設計で満たす必要がある条件
Design consideration 設計上の考慮事項 性能・可用性・制約などを説明する
Design decision 設計判断 採用方式とその判断を表す
Design rationale 設計根拠・採用理由 なぜその設計を選んだか説明する
Single point of failure 単一障害点 1か所の障害で全体へ影響する箇所
Scalability 拡張性 利用者・拠点・通信量の増加へ対応できる能力
Fault tolerance 耐障害性 障害発生時にもサービスを継続する能力
Operational consideration 運用上の考慮事項 監視・保守・変更作業などを検討する

英語資料を検索するときは、 network high level design、network design considerations、 design rationale などのキーワードを組み合わせると、 設計思想を説明した資料を見つけやすくなります。

理解度チェック

基本設計書の役割を理解できたか、5問で確認しましょう。

問題1.基本設計書の役割として最も適切なものはどれですか。

  1. 顧客の要望をそのまま記録する
  2. ネットワーク機器へ投入するCLIコマンドを記載する
  3. 要件を満たすための構成・方式・設計方針を定義する
  4. 障害発生後の原因だけを記録する
解答を見る
正解:C

基本設計では、要件を満たすためにネットワークを どのような構成・方式で実現するかを決めます。

問題2.次のうち、詳細設計に分類しやすい情報はどれですか。

  1. 利用者ネットワークとサーバーネットワークを分離する
  2. 主要機器を冗長化する
  3. VLAN10のデフォルトゲートウェイを10.10.10.254/24とする
  4. 障害発生時も業務通信を継続する
解答を見る
正解:C

VLAN IDや具体的なIPアドレスなど、 構築に使用する具体値は詳細設計で扱われることが多い情報です。

問題3.「コアスイッチを2台にする」という設計だけでなく、 設計理由を残した方がよいのはなぜですか。

解答を見る

どの要件を満たすための設計なのかを説明でき、 レビューや将来の構成変更時に 「なぜ現在の構成になっているのか」を判断できるためです。

問題4.基本設計レビューで確認すべき内容として適切なものを3つ挙げてください。

解答例を見る
  • 要件が設計へ反映されているか
  • 構成図と設計内容に矛盾がないか
  • 障害時にも通信が成立するか
  • 単一障害点がないか
  • 監視・運用まで考慮されているか

などが挙げられます。

問題5.次の空欄を埋めてください。

要件定義は「( A )」を決め、 基本設計は「( B )」を決め、 詳細設計では「( C )」を決めます。

解答を見る

A:何を満たすか
B:どのような方式・構成で実現するか
C:実装に必要な具体的な値

実践演習:要件から基本設計を作ろう

次の企業ネットワークの要件を読み、 基本設計の一部を作成してみましょう。

想定案件

A社は東京本社と大阪支店を持っています。

  • 東京本社:200名
  • 大阪支店:50名
  • 東京と大阪で業務システムを利用する
  • 拠点間通信を暗号化する
  • 東京本社のインターネット回線障害時も業務を継続したい
  • 利用者端末とサーバーはネットワークを分離する
  • ネットワーク障害は運用担当者へ通知する
  • 将来、新しい支店が2拠点増える可能性がある

課題1.必要な設計項目を挙げる

この案件で基本設計書に必要だと考えられる項目を 5つ以上挙げてください。

例:拠点間WAN設計
解答例を見る
  • IPアドレス設計
  • VLAN設計
  • ルーティング設計
  • 拠点間WAN設計
  • VPN設計
  • インターネット接続設計
  • 冗長化設計
  • セキュリティ設計
  • 監視設計
  • ログ設計

課題2.要件を設計へ変換する

次の要件について基本設計を書いてください。

要件:東京本社のインターネット回線障害時にも業務を継続できること。

基本設計:________________________

設計理由:________________________
解答例を見る

基本設計例:
東京本社のインターネット接続は2回線構成とし、 主回線障害時にバックアップ回線へ通信を切り替えられる構成とする。

設計理由:
単一回線障害によるインターネット通信停止を防ぎ、 業務継続性を確保するため。

課題3.拠点間接続を設計する

東京本社と大阪支店の業務通信を安全に行うため、 どのような基本設計が考えられるでしょうか。

拠点間接続方式:__________________

セキュリティ方針:_________________

将来拡張への考慮:_________________
解答例を見る

一例として、インターネットVPNによって拠点間を接続し、 拠点間通信をIPsecで暗号化する設計が考えられます。

将来2拠点追加される要件があるため、 IPアドレス体系やルーティング方式は 拠点追加時に大幅な再設計が不要となるよう考慮します。

ただし実案件では、帯域、可用性、コスト、SLA、 運用性などを確認したうえで VPN、閉域網、SD-WAN等の方式を比較します。

課題4.簡易基本設計表を完成させる

設計項目 設計方針 設計理由
IPアドレス 自分で記入 自分で記入
VLAN 自分で記入 自分で記入
拠点間接続 自分で記入 自分で記入
冗長化 自分で記入 自分で記入
監視 自分で記入 自分で記入

自分の言葉で説明する課題

後輩から次のように質問されました。

「要件定義書と基本設計書と詳細設計書って、何が違うんですか?」

1分程度で説明してみてください。

要件定義書は________________________。

基本設計書は________________________。

詳細設計書は________________________。
説明例を見る

要件定義書は、ネットワークが何を満たす必要があるのかを整理する資料です。

基本設計書は、その要件を満たすために、 どのようなネットワーク構成や方式を採用するかを決める資料です。

詳細設計書では、基本設計で決めた方針をもとに、 IPアドレス、VLAN ID、インターフェース、 ルーティングパラメータなど実際に構築できる具体値まで決めます。

まとめ

  • 基本設計書は、要件をどのような構成・方式で実現するかを定義する文書
  • 要件定義は「何を満たすか」、基本設計は「どう実現するか」、 詳細設計は「具体的に何を設定するか」を整理する
  • 基本設計では、構成、IP、VLAN、ルーティング、冗長化、 セキュリティ、監視、ログ、運用などを整理する
  • 設計内容だけでなく「どの要件を満たすための設計なのか」という理由を残す
  • 正常時だけでなく、機器・リンク・回線障害時の動作も確認する
  • 構成図・設計書・パラメータシート間で名称や方針を統一する
  • 顧客へ説明するときは、技術用語からではなく 「要件 → 設計方針 → 構成 → 業務への効果」の順で説明する

基本設計書を作れるようになることは、 「設定できるエンジニア」から 「要件を構成へ変換できるエンジニア」へ進む大きな一歩です。

次の記事:詳細設計書の作り方

今回は、要件定義で決めた条件を、 ネットワークの構成・方式・設計方針へ変換する 「基本設計書」について学びました。

次の記事では、基本設計で決めた内容を、 実際に機器へ設定できるレベルまで具体化します。

IPアドレス、VLAN ID、インターフェース、 ルーティングパラメータなどを どのように詳細設計書へ落とし込むのかを解説します。

ネットワーク上級編 61/全70記事

第7章では、設計書の作成、構成案比較、設計レビュー、 移行・切り戻し計画、顧客説明、大規模障害分析など、 これまで学んだネットワーク技術を 実務成果物へ変換する力を身につけます。

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