DNS通信をパケットで確認する|WiresharkでQuery・Responseを読み解く

ネットワーク中級編 35/全50記事

この記事は、 「ネットワーク中級編|構築・検証・障害切り分けを身につける」 の第35回です。

前回の「TCP通信をパケットで確認する」で学んだパケット解析の考え方を使い、 今回はDNS QueryとDNS ResponseをWiresharkで読み解きます。

DNS通信をパケットで確認する|WiresharkでQuery・Responseを読み解く

「名前解決できない」という障害を、nslookupの結果だけで終わらせず、 実際のDNSパケットから判断できるようになりましょう。 QueryとResponse、Transaction ID、問い合わせ名、レコード種別、RCODE、TTL、 UDP/TCP 53までを、Wiresharkで確認する順序に沿って解説します。

対象レベルLevel 2・中級
想定読了時間約30分
身につく成果DNSの正常・異常をパケットで判断できる
前提知識DNSの仕組み/Wiresharkの基本
演習環境PC+Wireshark+DNS利用環境

DNS障害では、「Webサイトが開けない」「サーバー名では接続できない」といった症状が発生します。 しかし、原因はDNSサーバー停止だけとは限りません。

問い合わせ自体が送信されていない、応答が返っていない、NXDOMAINが返っている、 想定外のIPアドレスが返っているなど、パケットを見ることで障害箇所をさらに細かく分けられます。

この記事を読み終えるとできること

  • DNS QueryとResponseをWiresharkで見分けられる
  • Transaction IDで問い合わせと応答を対応付けられる
  • A・AAAA・CNAMEなどの問い合わせ種別を読み取れる
  • NOERROR・NXDOMAIN・SERVFAILなどの応答を判断できる
  • DNSでUDP 53とTCP 53が使われる理由を説明できる
  • 「問い合わせなし」「応答なし」「エラー応答」を切り分けられる

DNSをパケットで確認すると何が分かるのか

今回の結論

DNSパケットでは「誰が、どの名前について、何の情報を問い合わせ、 DNSサーバーがどの結果を返したか」を確認できます。

nslookupdigは名前解決の結果を確認するのに便利ですが、 パケットキャプチャーではその途中にある通信そのものを確認できます。

Queryが出ているか

端末がDNSサーバーへ問い合わせを送信しているか確認します。

何を聞いているか

問い合わせ先の名前と、A・AAAAなどのレコード種別を確認します。

Responseが返るか

DNSサーバーから応答が届いているか、Transaction IDで対応付けます。

何が返ったか

IPアドレス、CNAME、RCODE、TTLなどから応答内容を判断します。

DNS障害の切り分けでは、「名前解決できない」という1つの症状を、Query → Response → 応答内容の3段階に分けます。

まずQueryとResponseの流れを理解する

PCがwww.example.comのIPv4アドレスを知りたいとします。 端末は設定されているDNSサーバーへAレコードを問い合わせ、DNSサーバーが結果を返します。

DNS Query / Responseの基本構成

💻 クライアントPC 192.168.10.10
🧭 DNSサーバー 192.168.10.53
Query:www.example.com のAレコードは?
Response:問い合わせ結果を返す
1名前を指定アプリやコマンドがFQDNを使う
2DNS QueryクライアントからDNSサーバーへ問い合わせ
3DNS ResponseDNSサーバーが結果またはエラーを返す
4次の通信へ得られたIPアドレスを使ってTCP/UDP通信を開始

パケット一覧では2つのDNSパケットが基本

No.SourceDestinationProtocolInfo
1192.168.10.10192.168.10.53DNSStandard query 0x4a3b A www.example.com
2192.168.10.53192.168.10.10DNSStandard query response 0x4a3b A www.example.com

QueryとResponseには同じTransaction IDが入り、Wiresharkでも対応する要求と応答を関連付けて表示できます。 まずは「問い合わせが1つ、その応答が1つ」という基本形を見つけられるようにしましょう。

今回の検証構成

最も再現しやすいように、PCでWiresharkを起動し、nslookupでDNS問い合わせを発生させます。 IPアドレスやDNSサーバーは、自分の環境に読み替えてください。

検証用の構成例

💻 検証PC 192.168.10.10/24
🔀 LAN Ethernet / Wi-Fi
🧭 DNSサーバー 192.168.10.53
項目確認方法
検証PC192.168.10.10/24Windows:ipconfig
DNSサーバー192.168.10.53ipconfig /all または nslookup
問い合わせ名www.example.comnslookup www.example.com
表示フィルターdnsWiresharkの表示フィルター欄

パケットキャプチャーは、自分が管理する端末・検証環境、または許可を得たネットワークで実施してください。

DNS Queryには利用者がアクセスしようとしたホスト名が含まれるため、業務環境では取得範囲・保存先・共有先にも注意が必要です。

WiresharkでDNS通信を取得する手順

  1. 利用中のDNSサーバーを確認する
    ipconfig /allなどで、PCに設定されているDNSサーバーを確認します。
  2. Wiresharkで使用中のインターフェースを選ぶ
    EthernetまたはWi-Fiのうち、実際に通信しているインターフェースでキャプチャーを開始します。
  3. 表示フィルターへ dns を入力する
    DNSとして解析されたパケットだけを表示します。
  4. nslookup www.example.comを実行する
    ブラウザのキャッシュに左右されにくい形で、DNS問い合わせを明示的に発生させます。
  5. キャプチャーを停止する
    QueryとResponseを探し、送信元・宛先・Transaction IDを確認します。

1.DNSサーバーを確認する

Windows コマンドプロンプト|DNSサーバーの確認例
C:\> ipconfig /all

イーサネット アダプター Ethernet:

   IPv4 アドレス . . . . . . . . . . : 192.168.10.10
   サブネット マスク . . . . . . . . : 255.255.255.0
   デフォルト ゲートウェイ . . . . . : 192.168.10.1
   DNS サーバー. . . . . . . . . . . : 192.168.10.53

2.WiresharkでDNSだけを表示する

Wireshark 表示フィルター
dns

3.nslookupで通信を発生させる

Windows コマンドプロンプト|DNS問い合わせ
C:\> nslookup www.example.com
サーバー:  dns.example.internal
Address:  192.168.10.53

名前:    www.example.com
Addresses:  (環境により異なります)

実際の応答IPアドレスは名前や時点、DNSサーバー、CDNなどによって変わる可能性があります。 演習では特定のIPアドレスを暗記するのではなく、Queryに対してどのレコードが返ったかを確認してください。

4.パケット一覧でQueryとResponseを確認する

No.TimeSourceDestinationInfo
100.000000192.168.10.10192.168.10.53Standard query 0x4a3b A www.example.com
110.018452192.168.10.53192.168.10.10Standard query response 0x4a3b A www.example.com

Queryの宛先が想定したDNSサーバーか、Responseの送信元がそのDNSサーバーかを最初に確認します。 ここを確認するだけでも、誤ったDNSサーバーを参照している設定ミスを見つけられることがあります。

DNS Queryの読み方

Queryでは、Transaction ID、Flags、Queriesセクションを中心に確認します。 WiresharkでQueryパケットを選び、「Domain Name System」を展開します。

DNS Query – Packet Details
Transaction ID
0x4a3b
Flags
0x0100 Standard query
Questions
1
Answer RRs
0
Queries → Name
www.example.com
Queries → Type
A (Host Address)
Queries → Class
IN

確認ポイント1:Transaction ID

Transaction IDはDNSの問い合わせと応答を対応付けるための識別値です。 Queryが0x4a3bなら、対応するResponseでも同じIDを確認します。

確認ポイント2:Responseフラグが0

Queryでは「これは応答ではなく問い合わせ」という状態です。 Wiresharkの表示フィルターでは、問い合わせだけを次のように絞り込めます。

Wireshark|DNS Queryだけを表示
dns.flags.response == 0

確認ポイント3:問い合わせ名とType

Nameは「何という名前を調べているか」、Typeは「その名前について何の情報が欲しいか」を示します。

Type主な意味読み取り例
AIPv4アドレスwww.example.com のIPv4アドレスを知りたい
AAAAIPv6アドレスwww.example.com のIPv6アドレスを知りたい
CNAME別名ある名前の正規名を確認する
MXメール配送先そのドメインのメールサーバーを確認する
PTR逆引き名IPアドレスに対応する名前を確認する

1回の操作でAとAAAAの両方が見えることがあります。 「同じ名前への問い合わせが複数ある=異常」とは限らず、IPv4とIPv6の両方を確認している場合があります。

DNS Responseの読み方

Responseでは、Queryと同じTransaction IDか、Responseフラグが1か、RCODEが正常か、 Answersに期待する情報が入っているかを確認します。

DNS Response – Packet Details
Transaction ID
0x4a3b(Queryと一致)
Flags
0x8180 Standard query response, No error のように表示
Questions
1
Answer RRs
1以上になることがある
Queries
www.example.com: type A, class IN
Answers
A / AAAA / CNAMEなどの回答

確認ポイント1:Transaction IDがQueryと一致する

同時に多数のDNS通信が流れていても、Transaction IDを見ることで、どのResponseがどのQueryに対応するか確認できます。

確認ポイント2:Responseフラグが1

Wireshark|DNS Responseだけを表示
dns.flags.response == 1

確認ポイント3:RCODE

Responseには問い合わせの処理結果を示すReply code(RCODE)が含まれます。 「応答が返ったか」だけでなく、どの結果で返ったかまで確認します。

RCODE名称意味確認の方向
0NOERRORDNSメッセージとして処理成功Answer内容・CNAME・レコード有無を確認
2SERVFAILサーバー側で処理を完了できなかった上位DNS、権威DNS、DNSSEC、サーバーログなど
3NXDOMAIN問い合わせた名前が存在しないという応答名前の誤り、DNSゾーン・レコード、検索サフィックス
5REFUSEDDNSサーバーが問い合わせを拒否許可クライアント、ACL、再帰問い合わせ設定

NOERRORだから必ず目的のIPアドレスが返るとは限りません。

RCODEが0でも、要求した種類のAnswerが0件であるケースがあります。RCODEとAnswer RRsは別々に確認してください。

DNSヘッダーで確認する重要フィールド

DNSメッセージは、ヘッダーとQuestion・Answer・Authority・Additionalなどのセクションから構成されます。 障害切り分けでは全項目を暗記するより、次のフィールドから読むと効率的です。

項目確認すること障害切り分けでの意味
Transaction IDQueryとResponseが一致するか要求と応答を対応付ける
QR / ResponseQueryかResponseか通信方向を判断する
RDRecursion Desiredクライアントが再帰問い合わせを希望しているか
RARecursion AvailableDNSサーバーが再帰問い合わせに対応しているか
TCTruncatedUDP応答が切り詰められたことを示す
RCODE応答結果NOERROR、NXDOMAIN、SERVFAILなどを判断する
Questions問い合わせ数何件のQuestionを含むか
Answer RRs回答レコード数回答が返っているか確認する
Authority RRs権威情報委任・権威サーバー情報などを読む
Additional RRs追加情報追加レコードやEDNS(0)のOPTなどが入る場合がある

RDとRAは混同しない

RD:Recursion Desired

問い合わせ側が「必要なら他のDNSサーバーへ問い合わせて最終結果まで調べてほしい」と希望していることを示します。

RA:Recursion Available

応答側DNSサーバーが再帰問い合わせ機能を利用可能としていることを示します。

社内DNSサーバーへ問い合わせたつもりなのにRAが期待と異なる、REFUSEDが返る、といった場合は、 DNSサーバーの再帰設定や問い合わせ元制限を確認するきっかけになります。

A・AAAA・CNAMEとTTLの読み方

Aレコード

Aレコードは名前に対応するIPv4アドレスを表します。 クライアントがAを問い合わせ、AnswersにIPv4アドレスが返れば、IPv4向けの名前解決結果を取得できています。

AAAAレコード

AAAAレコードはIPv6アドレスを表します。 AとAAAAが近いタイミングで問い合わせられることは珍しくありません。

CNAME

CNAMEは別名を正規名へ対応付けるレコードです。 Response内で「問い合わせた名前 → CNAME → 最終的なA/AAAA」のように複数のレコードが表示される場合があります。

www.example.com
CNAME →
service.example.net
service.example.net
A / AAAA →
IPアドレス

TTL

TTL(Time To Live)は、そのDNSレコードをキャッシュとして保持できる時間の目安です。 DNSレコード変更後に「一部端末だけ古いIPアドレスを参照する」といった事象では、TTLやキャッシュの影響も確認します。

DNS変更直後の調査では、「権威DNSの設定が新しいか」と「クライアントが受け取っている回答が新しいか」を分けて確認します。 Wiresharkは後者を確認する有力な手段です。

UDP 53とTCP 53の違い

DNSはUDPだけのプロトコルではありません。通常の名前解決ではUDP 53をよく見ますが、TCP 53もDNSの正式な通信方式です。

通信特徴パケットで見えるもの
DNS over UDP通常の問い合わせで広く利用される。コネクション確立なしDNS Query → DNS Response
DNS over TCPTCP接続上でDNSメッセージを送る3ウェイハンドシェイク → DNS Query/Response → TCP制御

TCビットに注目する

DNS ResponseのTC(Truncated)が1の場合、応答が切り詰められたことを示します。 その後、クライアントがTCPで問い合わせをやり直す流れが見えることがあります。

クライアント
UDP/53 Query →
DNSサーバー
クライアント
← Response / TC=1
DNSサーバー
クライアント
TCP/53 接続 →
DNSサーバー
クライアント
TCP上で再問い合わせ ⇄
DNSサーバー

現在のDNSではEDNS(0)によってUDPで扱えるDNSメッセージサイズを拡張できます。 そのため「512バイトを超えたら必ずTCP」と単純には判断しません。 実際のパケットではOPTレコードやTCビット、TCPへの切り替わりを確認してください。

ファイアウォールでUDP 53だけを許可しTCP 53を拒否すると、通常の小さな問い合わせは成功するのに、 一部のDNS応答だけ失敗するという分かりにくい障害になることがあります。

障害調査で使えるWiresharkフィルター

DNS調査では、まずdnsから始め、状況に応じて条件を追加します。

目的表示フィルター
DNS全体dns
Queryだけdns.flags.response == 0
Responseだけdns.flags.response == 1
特定の名前dns.qry.name == "www.example.com"
エラー応答dns.flags.response == 1 && dns.flags.rcode != 0
特定Transaction IDdns.id == 0x4a3b
切り詰め応答dns.flags.truncated == 1

Wiresharkの表示フィルターは、キャプチャー済みパケットから「何を表示するか」を絞る機能です。 フィルターで表示されない場合でも、パケット自体が取得されている可能性があります。 切り分け中は一度フィルターを外して確認する習慣も重要です。

DNS障害をパケットで切り分ける

DNS障害では、QueryとResponseの有無を順番に確認すると原因候補を整理できます。

ケース1

Query自体が見えない

主な確認ポイント

  • 正しいインターフェースをキャプチャーしているか
  • DNSキャッシュで名前解決済みではないか
  • アプリがDoHなど別方式を使っていないか
  • hostsファイルなどDNS以外で名前解決していないか
  • 表示フィルターで除外していないか
ケース2

Queryは出るがResponseが返らない

主な原因候補

  • DNSサーバーまでのルーティング障害
  • DNSサーバー停止
  • ACL/ファイアウォールでUDP/TCP 53を遮断
  • 戻り経路の問題
  • 誤ったDNSサーバーIPを設定
ケース3

Responseは返るがNXDOMAIN

主な確認ポイント

  • 問い合わせ名の入力ミス
  • DNS検索サフィックスの影響
  • 対象ゾーン/レコードが存在するか
  • 内部DNSと外部DNSの参照先が正しいか
ケース4

Responseは返るがSERVFAIL

主な確認ポイント

  • DNSサーバー自身が上位へ問い合わせできるか
  • 権威DNSへの到達性
  • DNSSEC検証エラーの有無
  • サーバーログやフォワーダー設定
ケース5

NOERRORでIPも返る

DNSとして分かったこと

  • QueryがDNSサーバーへ届いている
  • Responseがクライアントへ戻っている
  • 名前解決結果を取得できている

それでもアプリが通信できない場合は、次にTCP/UDP接続、ルーティング、FW、サーバー側へ調査を進めます。

ケース6

期待と違うIPが返る

主な確認ポイント

  • DNSレコードの登録値
  • 古いキャッシュ
  • 内部/外部DNSで回答が分かれる構成
  • ロードバランサーやCDNによる回答差
  • 参照しているDNSサーバーが想定どおりか

現場での確認順序

  1. PCに設定されたDNSサーバーを確認する
  2. WiresharkでQueryが送信されるか確認する
  3. Queryの宛先DNSサーバーが正しいか確認する
  4. Responseが返るか確認する
  5. Transaction IDが一致するか確認する
  6. RCODEを確認する
  7. Answer RRsと返却レコードを確認する
  8. DNSが正常なら、名前解決後のTCP/UDP通信へ調査を進める

調査結果の報告例

障害調査報告例
【事象】
PC-Aから業務サーバー server01.example.internal を名前指定すると接続できない。

【確認結果】
・PC-AのDNSサーバー設定は192.168.10.53で設計値と一致。
・PC-Aから192.168.10.53宛てのDNS Queryを確認。
・Query Nameは server01.example.internal、TypeはA。
・同一Transaction IDのDNS Responseを確認。
・Response CodeはNXDOMAIN。
・IPアドレスを直接指定した通信は別途到達性あり。

【判断】
クライアント~DNSサーバー間の通信断ではなく、
DNSサーバーが対象名を存在しない名前として回答している状態。
対象ゾーン/Aレコード登録内容を確認する。

DNSが見えないとき:DoH・DoT・キャッシュ

ブラウザでWebサイトを開いたのにdnsフィルターで何も表示されない場合、 すぐに「DNS通信が発生していない」と判断してはいけません。

DNSキャッシュ

OSやアプリが以前の名前解決結果を保持していれば、新しいQueryを送らずに通信を開始できます。

DNS over HTTPS

DNSメッセージをHTTPS上で送る方式です。通常の平文DNSのようにdnsだけで内容を読めない場合があります。

DNS over TLS

DNS通信をTLSで保護します。暗号化区間では問い合わせ名を通常のDNSパケットとして直接読めません。

学習ではnslookupを使う

「ブラウザを開いたのにDNSが見えない」という混乱を避けるため、この記事の基本演習ではnslookupを使います。 DNSパケット解析の学習と、ブラウザ固有のキャッシュ・暗号化DNSの挙動を切り分けられるからです。

実務では「DNSが見えない」こと自体が情報になります。 OS標準のDNSを使っているのか、アプリ独自のDoHを使っているのかを確認すると、監視ポイントや制御方法の検討にもつながります。

DNSパケット解析のよくある勘違い

勘違い1:DNSは必ずUDP 53

DNSはTCP 53も使用します。UDPだけを確認すると、一部の通信を見落とす可能性があります。

勘違い2:ResponseがあればDNSは正常

NXDOMAINやSERVFAILなどのエラー応答でもResponseは返ります。RCODEまで確認します。

勘違い3:NOERRORなら必ずIPが返る

NOERRORでも要求したAnswerが0件の場合があります。Answer RRsとレコード内容を確認します。

勘違い4:同じ名前のQueryが複数なら異常

AとAAAA、再送、複数アプリなど、正常な理由でも複数Queryが発生します。TypeとTransaction IDを見ます。

勘違い5:dnsフィルターに出ない=名前解決していない

キャッシュ、DoH、DoT、別インターフェースなどの可能性があります。

勘違い6:DNSが正常ならWebアクセスも正常

DNSは接続先IPを得る段階です。その後のTCP、TLS、HTTP、FW、サーバー障害は別に切り分けます。

理解度チェック

解答を見る前に、パケットからどう判断するか考えてみましょう。

問題1.DNS QueryとResponseを対応付けるとき、まず確認したいフィールドはどれですか。

  1. TTL
  2. Transaction ID
  3. MACアドレスのOUI
  4. TCP Sequence Number
解答を見る
正解:B.Transaction ID

QueryとResponseで同じTransaction IDを確認すると、要求と応答を対応付けられます。

問題2.Aレコードの問い合わせで確認しようとしているものは何ですか。

  1. IPv4アドレス
  2. IPv6アドレス
  3. MACアドレス
  4. TCPポート番号
解答を見る
正解:A.IPv4アドレス

IPv6アドレスはAAAAレコードで確認します。

問題3.DNS ResponseのRCODEがNXDOMAINでした。最も近い意味はどれですか。

  1. DNSサーバーまで到達できない
  2. 問い合わせた名前が存在しないという応答
  3. TCP 53が遮断された
  4. ARP解決に失敗した
解答を見る
正解:B

Responseが返っているため、少なくとも問い合わせに対してDNSサーバーから応答は届いています。名前・ゾーン・レコードを確認します。

問題4.Queryは確認できるのにResponseが1つも返りません。次に確認すべき項目を3つ挙げてください。

解答例を見る
  • DNSサーバーが稼働しているか
  • DNSサーバーまでのルーティング
  • ACL/ファイアウォールでUDP/TCP 53が遮断されていないか
  • 戻り経路があるか
  • DNSサーバーIPが正しいか

問題5.DNSの応答が切り詰められたことを示すフラグはどれですか。

  1. RD
  2. RA
  3. TC
  4. AA
解答を見る
正解:C.TC

Truncatedを示します。状況によっては、その後にTCP 53で問い合わせをやり直す通信が見えます。

実践演習:DNS QueryとResponseから障害箇所を判断する

次のパケット一覧は、PC-Aでnslookup app.example.internalを実行したときのものです。

No.SourceDestinationProtocolInfo
101192.168.10.10192.168.10.53DNSStandard query 0x71c2 A app.example.internal
102192.168.10.53192.168.10.10DNSStandard query response 0x71c2 No such name A app.example.internal

課題1.QueryとResponseが対応している根拠

どの情報から、No.101とNo.102が同じDNS問い合わせの組だと判断できますか。

ここに自分の回答を書いてみましょう。
解答を見る

Transaction IDがどちらも0x71c2で一致していることが主要な根拠です。問い合わせ名とTypeも一致しています。

課題2.ネットワーク断か、DNS応答エラーか

このキャプチャーから「DNSサーバーまで通信できていない」と判断できますか。

判断:______________________
解答を見る

判断できません。むしろDNSサーバーからResponseが返っているため、少なくともこのQuery/Responseの往復通信は成立しています。

問題は「応答が返らない」ことではなく、「No such name / NXDOMAINという内容で返っている」ことです。

課題3.次に確認する項目

次にどこを確認しますか。3つ以上挙げてください。

例:問い合わせ名のスペルが正しいか
解答例を見る
  • app.example.internalという名前が設計どおりか
  • 対象DNSゾーンにAレコードが登録されているか
  • 社内DNSと外部DNSの参照先が正しいか
  • DNS検索サフィックスで意図しない名前になっていないか
  • レコード削除・変更直後でないか

課題4.正常応答だった場合に見る場所

同じQueryに対してNOERRORでAレコードが返っていた場合、名前指定の通信が失敗する原因調査をどこへ進めますか。

次に確認するレイヤーや項目を書いてみましょう。
解答例を見る

DNSによる名前解決が成立しているため、返却されたIPアドレスを宛先とする通信を確認します。

  • TCP 3ウェイハンドシェイク
  • UDP通信の送受信
  • ルーティング
  • ACL/ファイアウォール
  • TLSハンドシェイク
  • サーバーアプリケーションの待ち受け状態

自分の言葉で説明する課題

「名前解決できないとき、Wiresharkでは何を見ればいいですか?」と後輩から質問されました。 Query、Response、Transaction ID、RCODEの4語を使って1分程度で説明してください。

DNS障害では、まず________________________________。
説明例を見る

DNS障害では、まずクライアントからDNS Queryが送信されているか確認します。 次に、そのQueryに対するDNS Responseが返っているかを見ます。 QueryとResponseはTransaction IDを照合すると対応付けできます。 Responseが返っている場合はRCODEを確認し、NOERRORなのか、NXDOMAINやSERVFAILなどのエラーなのかを判断します。 NOERRORならAnswerのIPアドレスやCNAMEまで確認し、DNSが正常ならその後のTCPやアプリケーション通信へ調査を進めます。

まとめ

  • DNS通信では、QueryとResponseをセットで確認する
  • Transaction IDを使うと、問い合わせと応答を対応付けられる
  • Queryでは問い合わせ名とA・AAAAなどのTypeを確認する
  • ResponseではRCODE、Answer RRs、返却されたレコードを確認する
  • NXDOMAINは名前が存在しないという応答、SERVFAILはサーバーが処理を完了できなかった応答
  • DNSはUDP 53だけでなくTCP 53も使用する
  • TCビット、EDNS(0)、TCPへの切り替わりをセットで考える
  • DNSが見えない場合はキャッシュ、DoH、DoT、キャプチャー対象インターフェースを確認する
  • DNSが正常なら、名前解決後のTCP/UDP、FW、ルーティング、サーバーへ調査を進める

パケット解析では「DNSが動いているか」ではなく、「どこまで正常で、どこから期待と違うか」を説明できることが重要です。

次の記事:VLAN障害の切り分け

今回はDNSのQueryとResponseを読み、名前解決の障害をパケットで分解しました。

次の記事では、VLAN設定ミスによって「同じスイッチにつながっているのに通信できない」とき、 アクセスポート、トランク、許可VLAN、SVI、MACアドレステーブルなどをどの順番で確認するかを解説します。

技術仕様の確認先

ネットワーク中級編 35/全50記事

中級編では、VLAN・STP・ルーティング・ネットワークサービス・セキュリティ・パケット解析を通して、 構築と障害切り分けを自力で進められる状態を目指します。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次