DMZ設計とは?構成・ファイアウォール通信制御・設計ポイントを図解

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ネットワーク上級編 43/全70記事

この記事は、 ネットワーク上級編|要件定義・設計・クラウド・自動化へ進む の第43回です。

第5章では、ファイアウォール、DMZ、IDS・IPS、WAFなどを組み合わせ、 企業ネットワークを守るためのセキュリティ設計を学びます。

DMZ設計とは?構成・ファイアウォール通信制御・設計ポイントを図解

インターネットへ公開するWebサーバーやメールサーバーを、 社内PCや重要サーバーと同じネットワークへ配置すると、 公開サーバーが侵害されたときに内部ネットワークまで被害が広がる可能性があります。 この記事では、公開システムと内部ネットワークを分離するDMZの考え方を、 実際のネットワーク設計に落とし込む方法まで解説します。

対象レベル Level 3〜4・上級
想定読了時間 約25分
身につく成果 要件からDMZ構成を設計できる
前提知識 FW・ACL・NAT
演習環境 ブラウザ・紙・Excel等

DMZは「Webサーバーを置くネットワーク」とだけ覚えると、 実際の設計では不十分です。

設計者が考えるべきなのは、 「どこを信頼境界にするか」「どの通信を許可するか」 「公開サーバーが侵害された場合、どこで被害を止めるか」 です。

この記事を読み終えるとできること

  • DMZを設ける目的を説明できる
  • Outside・DMZ・Insideを整理できる
  • DMZへ配置するサーバーを判断できる
  • 代表的なDMZ構成を比較できる
  • Internet → DMZの通信を設計できる
  • DMZ → Internalの通信を制限できる
  • 管理・監視通信まで整理できる
  • 侵害時の影響範囲を評価できる

DMZとは何か

最初に覚える定義

DMZとは、インターネットなどの信頼できないネットワークと、 社内LANなどの重要な内部ネットワークの間に設ける、 分離されたセキュリティ領域です。

DMZは Demilitarized Zone の略です。

企業ネットワークでは、Webサーバーやメールサーバーなど、 インターネットからアクセスさせる必要があるシステムを、 社内LANとは別のネットワークへ配置するために利用されます。

DMZを利用した基本的なネットワーク構成

Internet 信頼できない外部ネットワーク
Firewall 通信を制御する境界
DMZ Web・Mailなどを配置
Internal LAN 社員PC・DB・重要サーバー

DMZは「安全なネットワーク」という意味ではありません。

インターネットからアクセスされる機器は攻撃対象になりやすいため、 侵害される可能性を考慮して内部ネットワークから分離します。

設計上の重要ポイント

DMZの目的は攻撃を完全になくすことではありません。 公開サーバーが侵害された場合でも、 社内ネットワークへの被害拡大を抑えることが重要です。

なぜ公開サーバーを社内LANへ直接置かないのか

まず、DMZを使わない構成を考えてみます。

公開Webサーバーと内部システムを同じネットワークへ配置した例

Internet
Firewall
Internal LAN Web・PC・DB・File Server

Webサーバーを公開するため、例えばインターネットから TCP/443 を許可します。

Webサーバーが正常な間は問題ありません。 しかし、Webサーバーの脆弱性が悪用され、 攻撃者に制御を奪われた場合を考えてみましょう。

Internet
   |
   v
侵害されたWeb Server
   |
   +--- Employee PC
   |
   +--- File Server
   |
   +--- Database Server
   |
   +--- Directory / Management Server

Webサーバーと重要システムが同じネットワークに存在すると、 侵害されたWebサーバーが内部探索や攻撃の足掛かりになる可能性があります。

そこで、公開サーバーをDMZへ分離します。

Internet
   |
[ Firewall ]
   |
   +---------------- DMZ
   |                    |
   |                 Web Server
   |
   +---------------- Internal
                        |
                        +--- Employee PC
                        +--- File Server
                        +--- Database Server

設計者の視点: 「Webサーバーを守れるか」だけではなく、 「Webサーバーが侵害されたとしても、重要システムを守れるか」 まで考えます。

DMZ設計の基本となる3つのセキュリティゾーン

基本的なDMZ構成では、ネットワークを次の3つに分けて考えます。

Outside / Internet 信頼度:低

インターネットや外部ネットワークです。 原則として信頼しない前提で通信を制御します。

DMZ 信頼度:中間

Web、メール、リバースプロキシなど、 外部との通信が必要なシステムを配置します。

Inside / Internal 信頼度:高

社員PC、DBサーバー、ファイルサーバーなど、 重要な内部システムを配置します。

信頼レベルのイメージ

Internet 低信頼
DMZ 中間
Internal 高信頼

「DMZは内部側だから信頼する」という考え方は危険です。

DMZには外部公開システムが存在するため、 攻撃者に侵害される可能性を前提として DMZ → Internal の通信を厳しく制限します。

DMZには何を配置するのか

DMZへ配置する候補は、 主にインターネットや外部ネットワークとの通信が必要なシステムです。

代表的な配置対象

  • 公開Webサーバー
  • リバースプロキシ
  • 公開メールサーバー
  • 外部公開DNSサーバー
  • VPNゲートウェイ
  • 公開ロードバランサー
  • 外部接続用ゲートウェイ

内部へ残す代表例

  • データベースサーバー
  • ファイルサーバー
  • Active Directoryなどの認証基盤
  • 管理サーバー
  • バックアップサーバー
  • 重要な業務システム

「外部から使うシステムだからサーバー全体をDMZへ置く」 と単純に決めるのではなく、 外部公開が必要な部分と重要データを扱う部分を分離します。

Web・AP・DBの3層構成をどう配置するか

企業システムでは、次のような3層構成がよく利用されます。

Web Server
    |
Application Server
    |
Database Server

3台すべてを同じDMZへ配置すると、 Webサーバーが侵害された場合にDBサーバーへ到達しやすくなります。

セキュリティゾーンを分離した3層構成

Internet
DMZ Web / Reverse Proxy
Application Zone AP Server
Database Zone DB Server

重要なのは、物理ファイアウォールを何台も設置することではありません。

VLAN、仮想ファイアウォール、セキュリティゾーン、 クラウドのセキュリティ制御などを利用して、 役割ごとに必要な通信だけ許可できる構造 にすることが重要です。

DMZの代表的な構成パターン

パターン1:3インターフェース構成

          Internet
              |
        +-------------+
        |  Firewall   |
        +-------------+
          /         \
        DMZ        Internal
         |            |
      Web Server    LAN

メリット

  • 構成が比較的シンプル
  • 機器数を抑えやすい
  • 設定やログを集約しやすい
  • 小〜中規模環境にも導入しやすい

注意点

  • 1台のファイアウォールへ通信が集中する
  • 障害時の影響範囲が大きくなりやすい
  • ファイアウォール自体の冗長化を検討する

パターン2:2段ファイアウォール構成

Internet
   |
External Firewall
   |
======== DMZ ========
   |
Internal Firewall
   |
Internal LAN

メリット

  • 外部境界と内部境界を分離しやすい
  • DMZ → Internalを独立して制御できる
  • 多層防御を設計しやすい

注意点

  • 機器費用が増える
  • 設計・運用が複雑になる
  • 障害切り分けポイントが増える
  • ポリシー管理が複雑になる

「ファイアウォールが2台だから安全」とは限りません。

セキュリティ要件、可用性、予算、運用体制、 障害切り分けの難易度まで考慮して方式を選択します。

DMZ設計で最も重要なのは通信要件

DMZを作っただけではセキュリティ設計は完成しません。

最も重要なのは、 誰から、どこへ、何の通信を許可するのか を決めることです。

Webシステムで必要になる通信の例

Internet
Web HTTPS
Application AP通信
Database DB通信
送信元 宛先 プロトコル ポート 用途
Internet Web HTTPS TCP/443 Web公開
Web AP HTTPS等 設計値 アプリ通信
AP DB DB通信 設計値 DBアクセス
監視サーバー DMZ機器 ICMP/SNMP等 設計値 監視
管理端末 DMZ機器 SSH/HTTPS等 設計値 管理

Internet → DBDMZ → Internal ANYWeb → Internal ANY のように、必要範囲を超えた通信許可を避けます。

Internet → DMZのポリシーを設計する

WebサーバーをHTTPSで公開する場合を考えます。

Source      : Internet
Destination : Public-Web-Server
Service     : HTTPS / TCP 443
Action      : Allow
Log         : Enable

インターネットへ公開するのがHTTPSだけであれば、 必要のない管理ポートなどを許可する必要はありません。

Internet → TCP/443 → Web Server   Allow
Internet → TCP/22  → Web Server   Deny
Internet → TCP/3389 → Server      Deny

公開サーバーだから全ポートを公開するわけではありません。

外部利用者に提供するサービスだけを明確にし、 必要最小限のポートを許可します。

DMZ → Internalのポリシーは特に厳しくする

DMZ設計で特に重要なのが、 DMZから内部ネットワークへの通信です。

避けたい設定

Source      : DMZ
Destination : Internal
Service     : ANY
Action      : Allow

この設定では、DMZ上のサーバーが侵害された場合に、 内部ネットワークの多数のシステムへアクセスできる可能性があります。

絞り込んだ設定例

Source      : Web-Server-01
Destination : App-Server-01
Service     : TCP/8443
Action      : Allow
Log         : Enable

DB通信であれば次のようにします。

Source      : App-Server-01
Destination : DB-Server-01
Service     : TCP/5432
Action      : Allow
Log         : Enable

設計レビューでは次の質問をします。

「Webサーバーが攻撃者に完全に乗っ取られたとして、 このファイアウォールポリシーでは内部のどこまでアクセスできるか?」

管理通信は業務通信と分離する

内部ネットワークの方が信頼度が高いからといって、 Internal → DMZ = ANY Allow にする必要はありません。

特に、SSHやRDP、管理GUIへのアクセスは管理経路として分けて考えます。

踏み台サーバーを利用した管理経路の例

Admin PC 管理端末
Management Network 管理専用ネットワーク
Jump Server 踏み台
DMZ Server SSH / HTTPS等

管理アクセスでは、次の項目も検討します。

  • 管理端末の限定
  • 接続元IPアドレスの限定
  • 踏み台サーバー
  • MFA
  • 管理IDの分離
  • 操作ログ
  • 接続時間帯の制限

DMZ → Internetの通信も設計する

見落とされやすいのがDMZサーバーからインターネットへの外向き通信です。

DMZサーバーから、次のような通信が必要になる場合があります。

  • OSアップデート
  • セキュリティ定義ファイル更新
  • 外部DNS
  • NTP
  • 外部API
  • 証明書関連サービス
  • SaaS

DMZ → Internetを無条件でANY許可しないよう注意します。

DMZサーバーが侵害された場合、 外部の攻撃者サーバーへの通信やデータ送信に利用される可能性もあるため、 必要な宛先・プロトコル・ポートを整理します。

通信マトリクスを作る

DMZ設計では、構成図だけでなく 通信マトリクスを作ると設計を整理しやすくなります。

No. 送信元 宛先 Protocol Port Action 用途
1 Internet Web-DMZ TCP 443 Allow Web公開
2 Web-DMZ APP-01 TCP 8443 Allow AP通信
3 APP-01 DB-01 TCP 5432 Allow DB通信
4 Monitoring Web-DMZ ICMP/SNMP 指定 Allow 監視
5 Admin-Segment Web-DMZ SSH 22 Allow 管理
6 DMZ Internal ANY ANY Deny その他拒否

DMZ設計では、 構成図 → 通信要件 → 通信マトリクス → ファイアウォールポリシー の順番で整理すると、設計根拠を説明しやすくなります。

ファイアウォールポリシーの具体的な設計方法は、 前回の記事も確認してください。

42. ファイアウォールポリシー設計

NATとDMZを混同しない

DMZ設計でよくある誤解の一つが、 「プライベートIPアドレスを使ってNATしているから安全」 という考え方です。

Public IP
203.0.113.10
     |
    DNAT
     |
Private IP
10.10.10.10

NATとファイアウォールポリシー、DMZはそれぞれ役割が異なります。

機能 主な役割
NAT IPアドレスを変換する
Firewall Policy 通信を許可・拒否する
DMZ セキュリティ領域を分離する

NATを使用していても、 どの通信を許可するかは別途ファイアウォールポリシーとして設計します。

DMZではルーティング設計も重要

DMZはセキュリティだけで完結する設計ではありません。

次のような通信経路が成立するか確認します。

Internet
   |
Firewall
   |
DMZ Server
   |
Firewall
   |
Internal Server

特にステートフルファイアウォールを利用する場合、 往路と復路が想定どおりの経路を通るか確認することが重要です。

例えば次のような非対称経路には注意します。

往路
Internet → Firewall-A → Web Server

復路
Web Server → Firewall-B → Internet

DMZ設計では、次の項目も確認します。

  • デフォルトゲートウェイ
  • スタティックルート
  • 動的ルーティング
  • NAT
  • 冗長化時の経路
  • 障害切り替え後の経路

DMZの冗長化設計

外部公開サービスの停止による影響が大きい場合は、 セキュリティだけでなく可用性も設計します。

             Internet
                 |
           Router × 2
                 |
          Firewall × 2
             HA構成
                 |
          DMZ Switch × 2
            /        \
          Web1       Web2

主な確認ポイントは次のとおりです。

  • ファイアウォールを冗長化するか
  • DMZスイッチを冗長化するか
  • Webサーバーを複数台にするか
  • ロードバランサーを利用するか
  • インターネット回線を冗長化するか
  • フェイルオーバー時にセッション維持が必要か
  • 切り替え試験をどのように行うか

セキュリティ目的でDMZを設けても、 DMZを構成するファイアウォールやスイッチが単一障害点になれば、 可用性要件を満たせない可能性があります。

DMZの監視・ログ設計

DMZはインターネットからアクセスされる領域だからこそ、 通信やセキュリティイベントを監視できる状態にします。

ファイアウォールログ

  • Internet → DMZ
  • DMZ → Internal
  • DMZ → Internet
  • Denyログ
  • 管理通信

サーバーログ

  • Webアクセスログ
  • OSログ
  • 認証ログ
  • アプリケーションログ

ネットワーク監視

  • 死活監視
  • インターフェース監視
  • CPU・メモリ
  • トラフィック量

セキュリティ監視

  • IDS・IPS
  • WAF
  • EDR
  • SIEM
  • 異常通信検知

特に、 通常は存在しないDMZ → Internal通信 が発生していないか確認できるようにすると、 インシデント調査にも役立ちます。

クラウド環境ではDMZをどう考えるのか

クラウドでは、必ずしも 「DMZ」という名前の物理ネットワークを用意するとは限りません。

重要なのは、外部公開部分と重要リソースの間に セキュリティ境界を作ることです。

クラウド上での分離イメージ

Internet
WAF Web攻撃対策
Public LB 公開ポイント
Application Private
Database Private

「DMZという名前のサブネットを作ること」が目的ではありません。

外部からアクセスされる部分と重要な内部リソースを分離し、 必要な通信だけを許可することが本質です。

DMZ設計でよくある失敗

NG DMZを作っただけで安全だと思う

DMZとInternalを分離していても、 DMZ → Internal = ANY Allow なら内部への侵害拡大を防ぎにくくなります。

NG DMZへ重要サーバーまで配置する

外部公開が不要なDB、ファイルサーバー、 認証基盤、管理サーバーなどを安易にDMZへ配置しないようにします。

NG 管理ポートをインターネットへ公開する

Web公開に必要なのがTCP/443だけなのに、 SSHやRDP、管理GUIまでインターネットへ公開するのは避けます。

NG DMZから内部LANを広く許可する

動作確認のために一時的にANY許可したルールを、 そのまま本番へ残さないようにします。

NG 外向き通信を設計していない

OS更新、DNS、NTP、外部APIなど、 DMZ → Internetの通信も要件を確認します。

NG 管理・監視通信を後から追加する

SNMP、Syslog、NTP、バックアップ、 EDR、SSHなどの運用通信も設計段階で整理します。

OK 侵害された場合の通信範囲を確認する

「DMZサーバーが攻撃者に乗っ取られたらどこまで到達できるか」 という観点でポリシーをレビューします。

DMZ設計の進め方

  1. 公開するサービスを確認する Web、メール、DNS、VPNなど、 インターネットから利用させるサービスを整理します。
  2. 守るべき内部システムを確認する DB、認証基盤、ファイルサーバー、管理ネットワークなどを洗い出します。
  3. セキュリティゾーンを決める Outside、DMZ、Application、Database、Managementなどに分類します。
  4. 通信要件を洗い出す Source、Destination、Protocol、Port、Purposeを整理します。
  5. 通信マトリクスを作る 必要通信を一覧化し、不要な通信を明確にします。
  6. ファイアウォールポリシーへ落とす 必要最小限の通信だけを許可します。
  7. 管理経路を決める 管理端末、管理ネットワーク、踏み台サーバーなどを決定します。
  8. 冗長化を決める ファイアウォール、スイッチ、サーバー、回線などの単一障害点を確認します。
  9. 監視とログを設計する 障害だけでなく、不正通信も検知できる状態にします。
  10. 侵害を前提にレビューする DMZサーバーが侵害された場合にアクセス可能な範囲を確認します。

DMZ設計書へ記載する主な項目

項目 記載内容
DMZの目的 何を分離し、何を保護するか
対象システム DMZへ配置する機器
ネットワーク VLAN、サブネット
IPアドレス DMZ機器のアドレス体系
Gateway デフォルトゲートウェイ
Routing DMZへの経路
NAT 公開IPと内部IPの変換
Firewall ゾーン・通信制御
公開サービス HTTPS、SMTPなど
内部通信 DMZ → Internal通信
管理通信 SSH、RDP、HTTPS等
監視 ICMP、SNMP、Syslog等
冗長化 Firewall、Switch、Server等
ログ 取得対象、転送先、保存方針
NTP 時刻同期先
障害時動作 切り替え・復旧方法

顧客・上司へDMZをどう説明するか

技術に詳しくない相手へ 「DMZを作ります」とだけ説明しても、 なぜ必要なのかは伝わりにくいでしょう。

説明例

インターネットへ公開するWebサーバーは、 外部から直接アクセスされるため、 社内PCや重要なサーバーと同じネットワークには配置しません。 公開サーバー専用のネットワークを設け、 仮に公開サーバーが攻撃を受けた場合でも、 社内ネットワークへ簡単にアクセスできないよう通信を制限します。

技術用語だけではなく、 「攻撃を受けた場合の影響範囲を小さくするため」 と業務上のメリットへ変換して説明します。

DMZ設計で使われる英語表現

英語 意味
DMZ 非武装地帯・DMZ
Demilitarized Zone DMZの正式名称
Perimeter Network 境界ネットワーク
Internal Network 内部ネットワーク
External Network 外部ネットワーク
Public-facing Server 外部公開サーバー
Security Zone セキュリティゾーン
Inbound Traffic 外部から入る通信
Outbound Traffic 外向き通信
Lateral Movement 侵害後の横方向への移動
Management Network 管理ネットワーク
Jump Server 踏み台サーバー

設計レビューで使える表現

The public-facing web servers are located in the DMZ.
外部公開WebサーバーはDMZに配置されています。

Only HTTPS traffic is allowed from the Internet to the DMZ.
インターネットからDMZへはHTTPS通信のみ許可しています。

Traffic from the DMZ to the internal network is strictly restricted.
DMZから内部ネットワークへの通信は厳しく制限されています。

Administrative access is allowed only from the management network.
管理アクセスは管理ネットワークからのみ許可されています。

理解度チェック

設計者の視点で考えてみましょう。 解答を見る前に、自分で理由まで説明してみてください。

問題1.DMZを設ける主な目的として最も適切なものはどれですか。

  1. インターネット通信を高速化する
  2. 公開サーバーと内部ネットワークを分離する
  3. IPアドレスを自動配布する
  4. DNS問い合わせを高速化する
解答を見る
正解:B

DMZは、外部公開が必要なシステムと重要な内部ネットワークを分離し、 公開システムが侵害された場合の影響範囲を小さくするために利用します。

問題2.次のファイアウォールルールの問題点を説明してください。

Source      : DMZ
Destination : Internal
Service     : ANY
Action      : Allow
解答を見る

DMZ上のサーバーが侵害された場合に、 内部ネットワークの多数のシステムへ接続できる可能性があります。

送信元、宛先、サービスを業務上必要な範囲へ限定します。

問題3.WebサーバーからDBサーバーへのTCP/5432だけが必要な場合、 どのようなルールが適切でしょうか。

解答を見る
Source      : Web-Server-01
Destination : DB-Server-01
Service     : TCP/5432
Action      : Allow
Log         : Enable

DMZ全体からInternal全体を許可せず、 必要な通信だけへ絞ります。

問題4.「NATを使用しているためファイアウォールポリシーは不要」 という説明は正しいでしょうか。

解答を見る
正しくありません。

NATは主にIPアドレスを変換する仕組みです。 どの通信を許可・拒否するかは、 ファイアウォールポリシーとして別途設計します。

問題5.DMZサーバーの管理通信を設計するときに確認する項目を 3つ以上挙げてください。

解答例を見る
  • 管理端末を限定する
  • 管理ネットワークを分離する
  • 踏み台サーバーを利用する
  • 管理プロトコルを限定する
  • MFAを利用する
  • 管理操作ログを保存する

実践演習:企業WebシステムのDMZを設計する

次の要件からDMZ構成を考えてください。

顧客要件

  • インターネット向けWebサービスを公開する
  • 利用者はHTTPSでアクセスする
  • WebサーバーからAPサーバーへの通信が必要
  • APサーバーからDBサーバーへの通信が必要
  • DBサーバーをインターネットへ公開してはいけない
  • サーバー管理は社内管理者のみ行う
  • ログは社内ログサーバーへ送信する
  • Webサービス停止による業務影響が大きい
  • ファイアウォール障害時にもサービスを継続したい

課題1.ゾーンを決める

Web Server、Application Server、Database Server、Log Serverを どのゾーンへ配置するか考えてください。

自分で構成図を書いてみましょう。
解答例を見る
Internet
   |
Firewall
   |
DMZ
   |
Web Server
   |
Firewall / Security Control
   |
Application Zone
   |
Application Server
   |
Firewall / Security Control
   |
Database Zone
   |
Database Server

Internal / Management
   |
Log Server

実際の構成はシステム要件によって異なりますが、 Webサーバーが侵害された場合にDBまで自由に到達できない構造にします。

課題2.通信マトリクスを作る

Source Destination Protocol / Port Action
Internet Web Allow
Web AP Allow
AP DB Allow
Admin Web Allow
DMZ Internal ANY
解答例を見る
Source Destination Protocol / Port Action
Internet Web TCP/443 Allow
Web AP アプリで必要なポート Allow
AP DB DBで必要なポート Allow
Admin Network Web SSH / HTTPS等 Allow
DMZ Internal ANY Deny

課題3.単一障害点を探す

サービス停止につながる可能性がある機器を挙げてください。

例:ファイアウォール
解答例を見る
  • インターネット回線
  • ルーター
  • ファイアウォール
  • DMZスイッチ
  • ロードバランサー
  • Webサーバー

すべてを必ず二重化するのではなく、 可用性要件とコストを比較して冗長化対象を決めます。

課題4.侵害後の通信を考える

Webサーバーが攻撃者に完全に乗っ取られたと仮定してください。

現在のファイアウォールポリシーで、 Webサーバーからどの宛先へ通信できるかを書き出してください。

Web Server → ____________________

業務上必要のない通信が残っている場合は、 ファイアウォールポリシーやゾーン設計の見直し候補です。

自分の言葉で説明する課題

顧客から次の質問をされました。

「ファイアウォールがあるなら、 なぜわざわざDMZを作る必要があるのですか?」

30秒程度で説明してください。

自分の言葉で説明を書いてみましょう。
説明例を見る

ファイアウォールでインターネットからの通信を制限していても、 外部公開サーバーそのものが攻撃を受ける可能性はあります。 そのため、公開サーバーを社内ネットワークから分離したDMZへ配置し、 仮にサーバーが侵害されても、 社内PCや重要サーバーへ自由にアクセスできないようにします。 DMZは攻撃を完全に防ぐというより、 侵害された場合の影響範囲を小さくするための設計です。

まとめ

  • DMZは、インターネットと内部ネットワークの間に設ける セキュリティ領域
  • Webやメールなどの外部公開システムを 内部ネットワークから分離する
  • DMZは安全な場所ではなく、 侵害される可能性を考慮して設計する
  • Internet → DMZだけでなく、 DMZ → Internalの通信制御が特に重要
  • 送信元、宛先、プロトコル、ポート、用途を 通信マトリクスとして整理する
  • DMZ → InternalのANY許可は避け、 必要な通信だけを許可する
  • NAT、ファイアウォールポリシー、DMZは それぞれ役割が異なる
  • 公開通信だけでなく、 管理・監視・ログ・アップデート通信も設計する
  • 可用性要件に応じて Firewall・Switch・Server・回線の冗長化を検討する
  • 最後に 「DMZサーバーが侵害されたらどこまでアクセスできるか」 を確認する

DMZ設計の本質は、単に公開サーバーを別VLANへ移すことではありません。 信頼レベルの異なるネットワークを分離し、 必要な通信だけを許可することで、 侵害発生時の影響範囲を制限することです。

次の記事:44. IDS・IPSの基本

DMZとファイアウォールを設計しても、 送信元・宛先・ポート番号だけですべての攻撃を判断できるわけではありません。

次回はネットワークを流れる通信を監視し、 不正な通信や攻撃パターンを検知・防御する IDS・IPSについて学びます。

ネットワーク上級編 43/全70記事

上級編では、要件定義・基本設計・高度なネットワーク技術・ クラウド・セキュリティ・自動化・提案までを順番に学びます。

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