この記事は、 「ネットワーク中級編|構築・検証・障害切り分けを身につける」 の第41回です。
第4章までに学んだVLAN、STP、ルーティング、ACL、監視、障害切り分けの知識を使い、 実務で渡されるネットワーク構成図から必要な情報を読み取る方法を身につけます。
ネットワーク構成図の読み方|通信経路・冗長化・障害ポイントを実務目線で解説
構成図は「機器の配置を見る図」ではありません。 送信元と宛先の間にどの機器があり、どのVLAN・IPネットワークを通り、どこでルーティングやセキュリティ制御が行われるのかを読み取るための重要な資料です。 この記事では、初見の構成図でも確認箇所を整理できるように、実務で使う読み取り順序を解説します。
実務では、障害調査、変更作業、機器更改、現地作業の前に、まず構成図を確認する場面が多くあります。 しかし、線と機器名だけを眺めていても、通信経路や影響範囲は判断できません。
構成図を読むときは、「誰が、どこへ、何を通って通信するのか」を軸に、 L2、L3、冗長化、セキュリティ、運用情報を順番に重ねて確認します。
この記事を読み終えるとできること
- 構成図を読むときの確認順序を説明できる
- 機器・接続・VLAN・IPネットワークを整理できる
- 送信元から宛先までの通信経路を追える
- 冗長化構成の確認ポイントを挙げられる
- 構成図だけでは判断できない情報を区別できる
- 障害時に確認すべき機器と区間を絞り込める
ネットワーク構成図を読むとは
ネットワーク構成図を読むとは、機器の配置を確認するだけでなく、 接続関係、ネットワーク境界、通信経路、冗長化、制御ポイントを整理し、 「どこを通って通信するのか」を説明できる状態にすることです。
構成図には、ルーター、スイッチ、ファイアウォール、サーバー、回線などが線でつながれて描かれます。 ただし、実務で重要なのは「機器が何台あるか」ではありません。
接続
どの機器とどの機器が直接つながっているか。
境界
どこでVLANやIPネットワークが切り替わるか。
経路
送信元から宛先まで何を経由するか。
影響
1台・1回線が停止したとき、どこまで影響するか。
構成図は「通信の地図」です。
地図を見るときに現在地と目的地を確認するように、ネットワーク構成図でも 送信元・宛先・途中経路を最初に意識すると読みやすくなります。
まず1枚の構成図を見てみる
次の小規模オフィスネットワークを例にします。
例:小規模オフィスのネットワーク構成
この図だけでも、少なくとも次のことを読み取れます。
- インターネットとの境界にはFW-01がある
- 社内にはVLAN10、VLAN20、VLAN30がある
- VLAN間ルーティングを行う装置はL3SW-01/02と考えられる
- PC-AとSV-01は異なるIPネットワークに所属している
- PC-AからSV-01へ通信するにはL3処理が必要
- L3スイッチが2台あり、何らかの冗長化を行っている可能性がある
「考えられる」と「確定できる」を分けましょう。
L3スイッチが2台描かれていても、VRRPやHSRPなどのゲートウェイ冗長化が設定されているとは限りません。 構成図に明記されていない情報は、パラメータシートやコンフィグで確認します。
構成図を読む7つの順序
初見の構成図は、次の順番で見ると情報を整理しやすくなります。
- 図の目的と範囲を確認する全社ネットワークなのか、1拠点だけなのか、インターネット接続だけを抜き出した図なのかを確認します。
- 機器名と役割を確認するFW、RTR、L3SW、L2SW、AP、LB、Serverなど、通信へ関係する装置を把握します。
- 機器同士の接続関係を追うどこが直結し、どこに中継機器や回線が入るのかを確認します。
- VLAN・IPネットワークの境界を探すどこまでが同一L2セグメントで、どこからルーティングが必要になるかを整理します。
- デフォルトゲートウェイとルーティング装置を確認する端末が別ネットワークへ出るとき、最初にどのL3装置へ送るのかを確認します。
- 冗長化・セキュリティ制御を確認する二重化された装置、LAG、予備回線、FW、ACLなど、経路選択や通信可否に関係する箇所を確認します。
- 送信元から宛先まで実際に線をなぞる最後に「PC-A → SW → L3SW → FW → Internet」のように、通信単位で経路を言葉にします。
構成図へ直接書き込める場合は、送信元を○、宛先を□、想定経路を矢印でマーキングすると、 障害調査や作業レビューで認識を合わせやすくなります。
通信経路を追う方法
構成図を読む最も重要な練習は、送信元と宛先を1組決めて、通信経路を最後まで追うことです。 ここではPC-AからSV-01へHTTPS通信する場合を考えます。
VLAN10 → SW-11 → L3SW
VLAN間Routing → VLAN30 → SV-01
1.送信元と宛先が同じネットワークか確認する
PC-Aは192.168.10.50/24、SV-01は192.168.30.x/24です。異なるネットワークなので、PC-AはSV-01へ直接L2転送せず、デフォルトゲートウェイへ送信します。
2.最初のL3装置を特定する
VLAN10のデフォルトゲートウェイがL3SW上にあるなら、PC-AのパケットはSW-11を経由してL3SWへ到達します。 ここでVLAN10からVLAN30への経路が選ばれます。
3.途中にFWやACLがあるか確認する
同じ社内ネットワークでも、サーバーセグメントとの間にFWやACLが入る構成があります。 線がつながっているだけで「通信できる」と判断せず、制御ポイントを探します。
4.戻りの経路も確認する
往路だけでなく、SV-01からPC-Aへ戻る経路も必要です。 非対称ルーティングが問題になる構成では、往路と復路が同じ装置を通るかまで確認します。
通信経路は「行き」だけで終わりません。
到達性を考えるときは、送信元 → 宛先と、宛先 → 送信元の両方向を確認します。
L2情報とL3情報を分けて読む
構成図で混乱しやすいのが、L2の接続関係とL3の通信経路を同時に考えてしまうことです。
同じ線でも、確認内容は異なる
たとえばSW-11とL3SW-01の間に1本の線が描かれていても、その線からは次の情報すべてを確定できるわけではありません。
- アクセスポートかトランクポートか
- 許可VLANは何か
- Native VLANは何か
- EtherChannelのメンバーか
- STPでForwardingかBlockingか
- 速度・Duplexは何か
構成図は全体像をつかむ資料であり、詳細設定は別資料や実機状態で補います。
冗長化構成の読み方
二重化されたネットワークでは、「線が2本ある」「機器が2台ある」だけでは、実際にどの経路が使われるか分かりません。 冗長化では通常時の経路と障害時の経路を分けて考えます。
装置冗長
FWやL3SWが2台ある場合、Active/Standby、Active/Active、ゲートウェイ冗長化などの方式を確認します。
リンク冗長
LAG/EtherChannelなのか、STPで片方を待機させるのか、別経路なのかを確認します。
経路冗長
スタティックルートの優先度、OSPFコスト、デフォルトルートの切り替え条件などを確認します。
| 図で見つけるもの | 次に確認する情報 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| FWが2台 | HA方式・優先度・監視対象 | 通常時にどちらが処理するか、何を条件に切り替わるか |
| SW間に複数リンク | Port-Channel/LAG設定・STP状態 | 束ねて同時利用するのか、片方を待機させるのか |
| WAN回線が2本 | ルート優先度・Track・動的ルーティング | 主回線と副回線、切り替え条件、復旧条件 |
| L3SWが2台 | FHRP・SVI・ルーティング | 端末のデフォルトゲートウェイがどう冗長化されるか |
構成図の「二重線」は、必ずしも両方が同時に転送していることを意味しません。 STP、HA、ルーティング優先度などにより、待機経路になっている場合があります。
構成図だけでは判断できないこと
実務では、構成図から分かることと、実機や別資料を見ないと分からないことを区別する力が重要です。 構成図だけで断定すると、誤った切り分けにつながります。
| 構成図で把握しやすい | 別資料・実機確認が必要 |
|---|---|
| 機器の役割と大まかな配置 | 現在のリンクUp/Down状態 |
| 機器同士のおおまかな接続関係 | 実際のインターフェース番号・速度・Duplex |
| VLAN・IPセグメントの概略 | 許可VLAN、Native VLAN、STP状態 |
| FWやルーターが経路上にあること | ACL・FWポリシーの許可/拒否条件 |
| 冗長化されている可能性 | Active系、優先度、フェイルオーバー条件 |
| サーバーや外部接続の位置 | 現在選択されているルート、NAT変換、セッション状態 |
構成図は「仮説を立てる資料」です。 その仮説を、パラメータシート、コンフィグ、showコマンド、ログ、パケットキャプチャーで確認していきます。
障害対応での構成図の使い方
「PC-Aから業務サーバーへ接続できない」という申告を例にします。
- 送信元と宛先を図上で特定するPC-AがどのVLAN・SW配下か、業務サーバーがどのセグメントにいるかを確認します。
- 正常時の想定経路を描くPC-A → SW-11 → L3SW → サーバーセグメント → SV-01のように経路を整理します。
- 経路を区間に分ける端末、アクセスL2、ゲートウェイ、ルーティング、セキュリティ、サーバーのように確認単位へ分割します。
- 影響範囲と共通点を重ねるPC-Aだけなのか、VLAN10全体なのか、全VLANなのかで、疑う場所を変えます。
- 各区間をコマンドで確認するping、ARP、MACアドレステーブル、ルーティングテーブル、ACL、ログなどで仮説を検証します。
PC-Aだけ通信不可
- 端末のIP・GW設定
- 端末接続ポート
- VLAN割り当て
- NIC・ケーブル
VLAN10全体が通信不可
- VLAN10のSVI/GW
- トランクの許可VLAN
- VLAN10向けACL
- 上位L3経路
全社からSV-01だけ通信不可
- SV-01のNIC・OS
- サーバー側GW
- サーバーポート
- サービス待受・FW
インターネットだけ通信不可
- FW-01
- WAN回線
- デフォルトルート
- NAT・DNS
影響範囲を構成図へ重ねると、共通する装置や経路が見えてきます。 これが、構成図を障害切り分けへ使う基本です。
構成図と他の資料を組み合わせる
実務では、構成図単体ではなく、複数の資料を組み合わせて確認します。
| 資料 | 主に分かること | 構成図との組み合わせ方 |
|---|---|---|
| パラメータシート | IP、VLAN、ポート、ルーティング、機能設定 | 図上の機器・リンクへ具体的な設定値を当てはめる |
| インターフェース一覧 | 接続ポート、速度、用途、対向機器 | 図の線が実機のどのポートか特定する |
| IPアドレス一覧 | サブネット、GW、機器アドレス | ネットワーク境界と通信相手を確認する |
| VLAN一覧 | VLAN ID、名称、用途 | どの端末・サーバーが同じL2範囲か確認する |
| ルーティング設計 | 経路、優先度、再配信、デフォルトルート | 想定されるL3経路を確定する |
| ラック・物理配線図 | 設置場所、ケーブル、物理ポート | 現地作業時に対象機器・ケーブルを特定する |
構成図を読むときの実務チェックリスト
- 対象拠点・対象システム・図の更新日を確認した
- 送信元と宛先を特定した
- VLAN・IPネットワークの境界を確認した
- デフォルトゲートウェイとルーティング装置を確認した
- FW・ACL・NATなどの制御ポイントを確認した
- 通常時の経路と障害時の代替経路を分けて確認した
- 不明点を構成図だけで推測せず、別資料で確認した
- 作業・調査対象を図上でマーキングした
ネットワーク構成図でよくある読み間違い
線がある=通信できる
物理接続が描かれていても、VLAN、ルーティング、ACL、FWポリシーなどで通信できない場合があります。
機器が2台=完全冗長
装置だけ二重化されていても、上流回線や電源、配線、ルーティングが単一障害点になっている場合があります。
図の経路=現在の実経路
動的ルーティングやSTP、HA切り替えにより、現在利用中の経路は図の見た目と異なることがあります。
図が最新だと思い込む
実機変更後に図面更新が漏れていることがあります。更新日、版数、変更履歴を確認します。
構成図と実機が一致している前提で作業しないこと。 変更作業や障害対応では、必要に応じて現行コンフィグやshowコマンドと照合します。
理解度チェック
構成図を読むときの考え方を確認します。解答を見る前に自分で考えてみましょう。
問題1.初見の構成図を読むとき、最初に確認したい内容として適切なものはどれですか。
- すべての機器のCPU使用率
- 図の目的・範囲と対象ネットワーク
- 全ポートのMACアドレス
- 全機器のログ保存期間
解答を見る
まず図が何を表しているかを確認し、その後に機器、接続、VLAN、IP、通信経路を追います。
問題2.PC-Aが192.168.10.50/24、SV-01が192.168.30.20/24の場合、PC-AからSV-01へ通信するときに必要になるものは何ですか。
解答を見る
PC-AはSV-01へ直接L2転送せず、デフォルトゲートウェイへ送信し、ルーターやL3スイッチでルーティングされます。
問題3.構成図でL3スイッチが2台描かれている場合、「ゲートウェイ冗長化が設定されている」と断定してよいですか。
解答を見る
二重化の可能性は読み取れますが、実際の方式や優先度はパラメータシート、コンフィグ、設計書などで確認します。
問題4.障害対応で構成図を使うとき、影響範囲を確認する理由を説明してください。
解答を見る
複数の障害端末やサービスに共通する機器・経路・VLANを見つけることで、原因候補を絞り込めるためです。
問題5.構成図だけでは判断しにくい情報を3つ挙げてください。
解答を見る
例:現在のリンク状態、STPのポート状態、ルーティングテーブル、ACLの詳細、FWセッション、Active系、インターフェース速度など。
実践演習:構成図から通信経路と障害ポイントを読み取る
次の条件で、PC-AからSV-01へHTTPS通信できない障害が発生したとします。
演習用構成
GW 192.168.10.1
HTTPS
課題1.想定される正常時の通信経路を書いてください
課題1の解答を見る
PC-AとSV-01は異なるネットワークなので、L3SW-01でVLAN間ルーティングされる想定です。
課題2.条件から優先度を下げられる原因候補は何ですか
課題2の解答例を見る
- PC-AからSW-11、L3SW-01までの完全な断線
- SV-01自体の停止
- HTTPSサービス全体の停止
GWへping成功しており、SV-01は他VLANからHTTPS接続できるためです。
課題3.次に確認する項目を3つ挙げてください
課題3の解答例を見る
- L3SW-01にVLAN30へのConnected routeが存在するか
- VLAN10→VLAN30を制御するACLがないか
- SV-01から192.168.10.0/24へ戻る経路・GWが正しいか
実際の環境ではARP、MACアドレス、SVI状態、ログなども組み合わせます。
課題4.調査結果を30秒で報告する
上司へ「現時点でどこまで分かっているか」を説明してください。
説明例を見る
現時点では、PC-AからVLAN10のデフォルトゲートウェイまでは通信できています。またSV-01は他VLANからHTTPS接続できるため、端末側の物理断やサーバー停止の可能性は低いと考えています。次に、L3SW-01のVLAN間ルーティングとACL、戻り経路を確認します。
自分の言葉で説明する課題
後輩から「ネットワーク構成図って、何を見ればいいんですか?」と聞かれました。1分以内で説明してください。
説明例を見る
まず図の対象範囲を確認し、送信元と宛先がどこにいるかを探します。次に、間にあるスイッチ、ルーター、ファイアウォールを順番に追い、VLANやIPネットワークがどこで切り替わるかを確認します。冗長化されている場合は通常時と障害時の経路を分け、図に書かれていない設定値はパラメータシートや実機で確認します。
まとめ
- 構成図は、機器配置ではなく通信経路と影響範囲を把握するための地図として読む
- 「図の範囲 → 機器 → 接続 → VLAN/IP → GW/ルーティング → 冗長化/制御 → 通信経路」の順で確認する
- L2、L3、セキュリティ制御の情報を分けると整理しやすい
- 冗長構成では通常時と障害時の経路を分けて考える
- 構成図だけでSTP状態、ACL、Active系、現在のルートなどを断定しない
- 障害対応では影響範囲を構成図へ重ね、共通する機器・経路から原因候補を絞る
- パラメータシート、IP/VLAN一覧、インターフェース一覧、実機情報を組み合わせて確認する
構成図を読めるようになると、「どこを確認すればよいか」を自分で決められるようになります。
第5章では、構成図、パラメータシート、手順書、変更作業、試験、障害報告など、 これまで学んだネットワーク技術を実務の成果物と作業へつなげます。

コメント
コメント一覧 (1件)
[…] 41. ネットワーク構成図の読み方 42. 物理構成図と論理構成図の違い 43. パラメータシートの読み方 44. 作業手順書の確認ポイント 45. ネットワーク変更作業の事前確認 46. 単体試験・結合試験の考え方 47. 障害発生時の初動 48. 障害報告に必要な情報 49. ベンダーへ問い合わせるための情報整理 […]