この記事は、 「ネットワーク上級編|要件定義・設計・クラウド・自動化へ進む」 の第49回です。
第5章では、ファイアウォール、DMZ、IDS・IPS、WAF、VPN、AAA、 ネットワークセグメンテーションなどを組み合わせ、 実際の企業ネットワークをどのように守るかを学びます。
ゼロトラストの導入ステップ|現状評価から段階移行・継続改善まで実務で解説
「ゼロトラスト製品を入れれば、ゼロトラストになる」 という考え方では、導入はうまく進みません。 ゼロトラストは特定製品ではなく、 利用者・端末・アプリケーション・データ・通信を確認しながら、 必要なアクセスだけを許可するセキュリティの考え方です。 この記事では、既存ネットワークからゼロトラストへ移行するための 実務的な導入ステップを整理します。
ゼロトラスト導入で最も重要なのは、 最初から全社ネットワークを作り直そうとしないことです。
現在の利用者、端末、アプリケーション、データ、通信経路を把握し、 リスクの高い領域や効果を確認しやすい領域から段階的に改善します。
この記事を読み終えるとできること
- ゼロトラスト導入を段階的に進める理由を説明できる
- 導入前に調査すべき現行環境を整理できる
- 利用者・端末・アプリ・データを保護対象として整理できる
- ID管理と端末管理の重要性を説明できる
- 最小権限とセグメンテーションを設計へ反映できる
- PoCから本番展開までの流れを整理できる
- ログを使った継続的な改善方法を考えられる
- ゼロトラスト導入の目的を顧客へ説明できる
ゼロトラスト導入とは何か
ゼロトラスト導入とは、 ネットワークの内側・外側だけで利用者や端末を信頼せず、 アクセスする主体・端末・対象リソース・状況を確認しながら、 必要なアクセスだけを許可する仕組みへ段階的に移行することです。
従来の企業ネットワークでは、 社内LANを「信頼できる領域」、 インターネットを「信頼できない領域」と考える設計が多く使われてきました。
しかし現在は、クラウドサービス、リモートワーク、 SaaS、モバイル端末などの利用によって、 利用者やデータが必ずしも社内ネットワークだけに存在するとは限りません。
ゼロトラストは「社内を信用しない」という意味だけではありません。
重要なのは、ネットワーク上の場所だけを理由に信頼せず、 アクセス要求ごとに必要な情報を使って判断することです。
ゼロトラストは製品名ではない
「ゼロトラスト製品」という表現を見ることがありますが、 1つの装置やクラウドサービスを導入するだけで ゼロトラストが完成するわけではありません。
実際には、複数の仕組みを組み合わせます。
- Identity Provider(IdP)
- 多要素認証(MFA)
- 端末管理・MDM・EDR
- ZTNA
- ファイアウォール
- ネットワークセグメンテーション
- アプリケーションアクセス制御
- データ分類・アクセス制御
- SIEMなどのログ分析
- 自動化されたポリシー制御
製品選定より先に、何を誰から守り、誰に何を許可するかを整理します。
従来型ネットワークとの違い
| 観点 | 従来型の考え方 | ゼロトラストで重視する考え方 |
|---|---|---|
| 信頼 | 社内ネットワークは比較的信頼する | ネットワーク上の場所だけでは信頼しない |
| 認証 | 最初のログインを重視 | 利用者・端末・状況を継続的に確認する |
| アクセス範囲 | ネットワークへ接続後、広い範囲へ到達できることがある | 業務上必要なリソースへ限定する |
| 端末 | 社内端末なら信頼する設計になりやすい | 端末の管理状態やセキュリティ状態も確認する |
| 通信制御 | 境界ファイアウォール中心 | 利用者・端末・アプリ・データ単位でも制御する |
| 監視 | 境界やネットワーク機器のログ中心 | ID・端末・アプリ・ネットワークなど複数情報を関連付ける |
従来型からゼロトラストへ
ゼロトラスト導入前に理解しておくこと
最初から完成形を目指さない
大規模な企業では、多数の利用者、端末、ネットワーク、 SaaS、オンプレミスシステム、クラウド環境が存在します。
これらを一度にゼロトラスト化しようとすると、 設計変更の範囲が大きくなり、 業務影響や運用負荷も増加します。
そのため、現状を評価して優先順位を付け、 小さな対象から段階的に進めることが重要です。
ゼロトラスト導入はネットワーク部門だけでは完結しない
ネットワーク担当
セグメンテーション、FW、ZTNA、 通信経路、DNS、プロキシなどを担当します。
ID・認証担当
IdP、MFA、アカウント、 グループ・ロールなどを管理します。
端末管理担当
PC・スマートフォンの管理、 EDR、パッチ、暗号化などを担当します。
アプリ・クラウド担当
アプリケーション権限や クラウドIAM、データアクセスを管理します。
ネットワーク担当だけで 「すべての社内通信を細かく制御する」 という進め方にすると、 本来必要なID・端末・アプリケーションの情報を活用できません。
ゼロトラスト導入の10ステップ
ここからは、既存環境からゼロトラストへ移行する場合の 実務的な流れを確認します。
- 導入目的と対象範囲を決める 「ゼロトラストを導入する」こと自体を目的にしません。 リモートアクセスの安全性向上、 情報漏えいリスク低減、 ランサムウェア対策、 クラウド利用拡大など、 解決したい課題を明確にします。
- 利用者・端末・アプリ・データを棚卸しする 誰が、どの端末から、どのシステムへアクセスし、 どのようなデータを扱っているかを把握します。
- 現状の通信とアクセス権限を可視化する ネットワーク構成図、FWポリシー、VPN、 Active DirectoryやIdPのグループ、 アプリケーション権限などを確認します。
- 重要な保護対象とリスクを整理する 顧客情報、管理システム、認証基盤、 ソースコードなど、 特に守るべきデータやシステムを整理します。
- ID・認証基盤を整備する 共通ID、MFA、不要アカウント削除、 特権アカウント分離などを進めます。
- 端末の信頼性を確認できるようにする 管理端末か、OSやパッチが適切か、 EDRが動作しているかなどをアクセス判断へ利用できる状態にします。
- 最小権限とセグメンテーションを設計する 「社内端末ならどこでも通信可能」ではなく、 利用者・端末・業務ごとに必要なアクセスだけを許可します。
- アクセス制御ポリシーを定義する 「営業部の管理端末からCRMへは許可」 「管理システムは管理者かつ管理端末のみ」 など、判断可能なルールへ落とし込みます。
- 限定範囲でPoC・パイロット導入する 特定部署や特定アプリケーションなど、 影響範囲を限定して動作・運用・ユーザー影響を確認します。
- ログを確認しながら段階展開・継続改善する 誤検知、拒否された正当通信、 不審なアクセスを確認し、 ポリシーを改善しながら対象を広げます。
「製品選定 → 全社導入」ではなく、 「目的 → 現状把握 → ポリシー設計 → 小規模検証 → 段階展開」 の順番で考えます。
STEP 1:導入目的を明確にする
「ゼロトラストを導入したい」という要望を そのまま設計要件にしてはいけません。
背景を確認します。
- リモートワーク利用者が増えた
- VPNへ接続すると社内ネットワークへ広く到達できる
- SaaS利用が増えて境界FWだけでは管理しにくい
- 私物端末・モバイル端末の管理が必要
- マルウェア侵入後の横展開を抑制したい
- 特権アカウントを厳格に管理したい
目的が違えば、優先して導入すべき仕組みも変わります。
STEP 2:資産とアクセスを棚卸しする
最低限、次の情報を整理します。
| 分類 | 確認項目 |
|---|---|
| 利用者 | 社員、委託先、管理者、外部パートナー |
| 端末 | 会社PC、スマートフォン、BYOD、サーバー |
| アプリ | 社内システム、SaaS、クラウド、管理画面 |
| データ | 顧客情報、個人情報、機密情報、一般情報 |
| ネットワーク | LAN、VPN、インターネット、WAN、クラウド接続 |
| 権限 | 誰が何にアクセスできるか |
STEP 3:実際の通信を確認する
設計書だけでは、実際の通信を完全に把握できない場合があります。
FWログ、NetFlow、クラウドログ、 プロキシログ、認証ログなどを確認し、 実際にどの通信が行われているのかを調査します。
現行FWルールが
社内 → サーバー:ANY許可
だからといって、
本当にすべての通信が必要とは限りません。
既存設定をそのまま新しいポリシーへ移植するのではなく、 実際に必要な通信を確認します。
STEP 4:保護対象を決める
すべてのシステムを同じ強度で守る必要はありません。
たとえば、次のように優先順位を付けます。
優先度:高
- 認証基盤
- 管理者用システム
- 個人情報
- 顧客情報
- 重要業務システム
優先度:標準
- 社内ポータル
- 一般的な共有システム
- 公開済みの社内情報
- 影響の小さい業務システム
STEP 5:ID・認証を整備する
「誰がアクセスしているのか」を正しく判断できなければ、 ゼロトラストのアクセス制御は成立しません。
- 利用者IDの一元管理
- MFA
- 不要アカウントの削除
- 退職・異動時の権限変更
- 一般アカウントと管理者アカウントの分離
- サービスアカウントの管理
- ロールベースの権限設計
この考え方は前回までに学んだ 認証・認可・アカウンティング と直接つながります。
STEP 6:端末状態を確認する
正しいユーザーIDでログインしていても、 端末がマルウェアに感染していれば安全とは限りません。
たとえば次の条件を利用します。
- 会社管理端末か
- OSがサポート対象か
- セキュリティ更新が適用されているか
- EDRが正常動作しているか
- ディスク暗号化が有効か
- 端末証明書が有効か
STEP 7:最小権限とセグメンテーション
認証後も、必要以上のネットワークへ到達できる状態を残さないようにします。
たとえば営業担当者がCRMを利用する場合、 「営業PCから社内ネットワーク全体へ許可」ではなく、 業務上必要なCRMへの通信だけを許可する方向へ改善します。
広いネットワークアクセスから必要なリソースへのアクセスへ
詳しくは 第48回「ネットワークセグメンテーション」 も確認してください。
STEP 8:ポリシーを明文化する
アクセス制御は「セキュリティを強化する」といった曖昧な文章ではなく、 判断できる条件にします。
| 主体 | 端末条件 | アクセス先 | 制御 |
|---|---|---|---|
| 営業部 | 会社管理PC | CRM | 許可 |
| 営業部 | 私物PC | CRM | 拒否または制限 |
| NW管理者 | 管理端末 | NW管理画面 | MFA後に許可 |
| 一般利用者 | 任意 | NW管理画面 | 拒否 |
STEP 9:PoC・パイロット導入
最初から全利用者を対象にせず、 小さな範囲で検証します。
- 情報システム部だけ
- 特定のリモートワーカーだけ
- 特定SaaSだけ
- 管理システムだけ
- 1拠点だけ
確認する内容は機能試験だけではありません。
- 利用者の操作性
- 認証にかかる時間
- 業務通信への影響
- ヘルプデスクへの問い合わせ
- ログの取得状況
- 障害発生時の切り分け方法
- 緊急時のアクセス方法
STEP 10:継続的に改善する
ゼロトラストは、本番稼働した日に完成するものではありません。
新しいSaaS、端末、利用者、攻撃手法、 組織変更などに合わせてポリシーを見直します。
継続改善のサイクル
技術領域ごとに何を変えるのか
ゼロトラストでは、 1つのセキュリティ機能だけを改善するのではなく、 複数領域を連携させます。
| 領域 | 主な改善内容 |
|---|---|
| Identity | IdP、SSO、MFA、条件付きアクセス、権限管理 |
| Device | MDM、EDR、端末証明書、パッチ管理 |
| Network | FW、ZTNA、セグメンテーション、暗号化 |
| Application | アプリ単位アクセス、認可、API保護 |
| Data | データ分類、暗号化、アクセス権、DLP |
| Visibility | ログ統合、SIEM、異常検知、継続監視 |
ネットワークエンジニアに特に重要な領域
- どの利用者がどのリソースへ通信するか
- どの経路で通信させるか
- どこでアクセスを制御するか
- どの単位でセグメントを分けるか
- 管理ネットワークをどう保護するか
- 通信ログをどこで取得するか
- クラウド・オンプレミス間をどう統合するか
既存環境から段階的に移行する
ゼロトラスト導入では、 現行環境と新しい仕組みが一定期間共存することがあります。
資産・通信・権限・リスクを可視化する。
ID、MFA、端末管理、ログ基盤を整える。
特定アプリ・部署でアクセス制御を検証する。
対象を拡大し、ログを使ってポリシーを改善する。
例:リモートアクセスから始める
現状が次の構成だとします。
従来型VPN
最初の改善として、 重要なWebアプリケーションだけをZTNA経由に移行し、 ID・MFA・端末状態によってアクセスを判断する方法があります。
その後、対象アプリを増やしながら 従来VPNの利用範囲を縮小していきます。
既存VPNを直ちに全廃することが ゼロトラストの必須条件ではありません。
レガシーアプリケーションや運用要件を確認しながら、 現実的な移行計画を作ります。
ゼロトラスト導入の効果をどう測定するか
「ゼロトラスト製品を導入した」という事実だけでは、 セキュリティが改善したか判断できません。
導入前に測定指標を決めます。
ゼロトラストでは 「導入した機能数」ではなく、 リスクがどの程度減少したか を確認することが重要です。
ゼロトラスト導入でよくある失敗
「ゼロトラスト製品を買う」ことから始めると、 本来解決すべき業務課題やリスクと 製品機能が一致しない場合があります。
MFAは重要ですが、 端末状態、権限、通信範囲、データ、 ログなども合わせて考える必要があります。
誤ったアクセス制御によって 正常な業務まで停止する可能性があります。 小規模なPoC・パイロットから開始します。
既存システムには設計書へ記載されていない 通信が存在することがあります。 まずログで通信を可視化します。
ゼロトラストではID、端末、アプリケーション、 クラウド、データ、運用など複数部門との連携が必要です。
利用者、端末、業務、脅威は変化します。 ログを確認しながら継続的に改善します。
顧客・上司へゼロトラスト導入をどう説明するか
技術に詳しくない相手へ 「ゼロトラストだからすべて信用しません」 と説明すると、誤解される可能性があります。
説明例
現在は社内だけでなく、自宅、クラウド、 SaaSなどさまざまな場所から業務システムを利用します。
そのため、「社内ネットワークにいるから安全」と判断するのではなく、 誰が、どの端末から、どのシステムへアクセスしているかを確認し、 業務上必要な範囲だけ利用できるようにします。
一度にすべて変更するのではなく、 重要なシステムやリモートアクセスなどから段階的に導入し、 業務への影響を確認しながら対象を広げます。
技術をビジネスリスクへ変換する
| 技術的な説明 | 業務上の意味 |
|---|---|
| MFAを導入する | パスワード漏えいだけで不正ログインされるリスクを下げる |
| セグメンテーションする | 1台が侵害されても被害が他システムへ広がる範囲を抑える |
| 端末状態を確認する | 安全基準を満たしていない端末から重要システムへ接続させない |
| 最小権限化する | アカウントが侵害された場合に利用される権限を限定する |
| ログを統合する | 不審な行動を早く発見し、調査しやすくする |
上級工程では、 技術名称を説明するだけでなく、 業務停止・情報漏えい・運用負荷・コストなどへ翻訳する力 が重要です。
ゼロトラスト導入で使われる英語表現
| 英語 | 意味 |
|---|---|
| Zero Trust Architecture | ゼロトラストアーキテクチャ |
| Implicit Trust | 暗黙の信頼 |
| Least Privilege | 最小権限 |
| Access Policy | アクセス制御ポリシー |
| Identity Provider | IDプロバイダー |
| Multi-Factor Authentication | 多要素認証 |
| Device Posture | 端末のセキュリティ状態 |
| Policy Enforcement Point | ポリシーを実際に適用するポイント |
| Continuous Monitoring | 継続的な監視 |
| Phased Migration | 段階的な移行 |
設計・打ち合わせで使える表現
We should identify the resources that need the highest level of protection.
最も高いレベルの保護が必要なリソースを特定する必要があります。
Access should be granted based on user identity and device posture.
アクセスは利用者IDと端末状態に基づいて許可すべきです。
We will start with a limited pilot before the company-wide rollout.
全社展開の前に限定的なパイロット導入から開始します。
The access policy should follow the principle of least privilege.
アクセスポリシーは最小権限の原則に従う必要があります。
理解度チェック
用語暗記ではなく、 ゼロトラストをどの順番で導入するべきか判断できるか確認します。
問題1.ゼロトラスト導入の最初の対応として最も適切なものはどれですか。
- 全社員へ新しいZTNAクライアントを配布する
- ゼロトラスト対応製品を購入する
- 導入目的・対象範囲・解決したいリスクを整理する
- すべての社内通信を拒否する
解答を見る
製品や具体的な制御方法を決める前に、 なぜゼロトラストが必要なのか、 何を改善するのかを明確にします。
問題2.正しいユーザーIDで認証されていれば、 端末の状態を確認する必要はない。正しいでしょうか。
解答を見る
正しい利用者でも、 利用端末がマルウェア感染している可能性があります。 IDだけでなく端末状態なども判断材料にします。
問題3.ゼロトラストのPoCとして適切な進め方はどれですか。
- 全拠点・全システムを同時に変更する
- 限定した部署やアプリケーションから検証する
- 試験せずそのまま本番へ導入する
- 既存環境の通信ログを取得しない
解答を見る
小さな対象で認証、通信、運用、 ユーザー影響などを確認してから対象を拡大します。
問題4.次のうち「最小権限」の考え方に最も近いものはどれですか。
- 認証済み社員ならすべてのサーバーへアクセス可能にする
- 営業担当者には業務で必要なCRMへのアクセスだけを許可する
- 社内LANからの通信はすべて許可する
- 管理者は常に全システムへアクセスできるようにする
解答を見る
業務上必要な範囲に権限を限定することが重要です。
問題5.ゼロトラスト導入後も継続的なログ監視が必要な理由を説明してください。
解答例を見る
利用者、端末、システム、脅威は継続的に変化するためです。 ログから不審なアクセスや正常通信の誤拒否などを確認し、 アクセスポリシーを継続的に改善します。
実践演習:既存企業へゼロトラストを導入する
あなたは、次の企業から ゼロトラスト導入の相談を受けました。
現行環境
- 社員:500名
- 本社+3拠点
- 社内PC:450台
- リモートワーカー:約200名
- リモートアクセスはSSL-VPN
- VPN接続後は複数の社内セグメントへアクセス可能
- Active Directoryでユーザー管理
- MFAは未導入
- 社内PCにはEDR導入済み
- Microsoft 365を利用
- 重要な顧客管理システムはオンプレミス
- FWには長年追加された多数の許可ルールが存在
顧客からは、 「VPNアカウントが盗まれた場合に 社内へ広くアクセスされることが心配」 という相談を受けています。
課題1.最初に確認する情報を考える
ゼロトラスト製品を選定する前に、 追加で顧客へ確認すべき項目を10個考えてください。
2.________________________
3.________________________
4.________________________
5.________________________
解答例を見る
- VPN利用者は誰か
- VPN接続後に利用するシステムは何か
- 利用者ごとに必要なアクセス先は何か
- 顧客管理システムへアクセスする部署はどこか
- 会社管理外の端末から接続している利用者はいるか
- 現在の認証方式は何か
- FW・VPN・ADなどのログは保存されているか
- 特権管理者のアクセス方法はどうなっているか
- 利用中のレガシーアプリケーションはあるか
- 導入時に許容できる業務影響・予算・期間はどの程度か
課題2.優先して改善する項目を決める
次の候補から、 初期フェーズで優先したい項目を3つ以上選び、 理由を書いてください。
- MFA
- ZTNA
- 端末状態確認
- FWポリシー整理
- セグメンテーション
- SIEM
- データ分類
理由:________________________
解答例を見る
一例として、MFA、端末状態確認、 ZTNAまたはVPNアクセス範囲の縮小を優先できます。
顧客が特に懸念しているのは 「VPNアカウントが盗まれた場合に社内へ広くアクセスされること」 だからです。
MFAで認証情報盗難時のリスクを下げ、 端末状態も確認し、 VPN接続後の広いネットワークアクセスを 業務アプリ単位へ限定する方向が考えられます。
課題3.アクセス制御ポリシーを作る
「営業担当者が顧客管理システムを利用する」 というケースのポリシーを作成してください。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 利用者 | ________ |
| 認証 | ________ |
| 端末 | ________ |
| アクセス先 | ________ |
| 許可する通信 | ________ |
解答例を見る
- 利用者:営業部所属ユーザー
- 認証:ID+MFA
- 端末:会社管理PCかつEDR正常
- アクセス先:顧客管理システム
- 許可:顧客管理システムに必要な通信のみ
課題4.段階移行計画を作る
次の4フェーズで、 何を実施するか整理してください。
| フェーズ | 実施内容 |
|---|---|
| Phase 1:調査 | ______________ |
| Phase 2:基盤整備 | ______________ |
| Phase 3:PoC | ______________ |
| Phase 4:展開 | ______________ |
解答例を見る
- Phase 1: VPN利用者、利用アプリ、通信、FWルール、ID、端末を調査
- Phase 2: MFA、端末管理、ログ収集、アクセスグループを整備
- Phase 3: 情報システム部または一部営業部を対象にZTNA等を検証
- Phase 4: 問題を修正しながら対象部署・アプリを段階的に拡大
自分の言葉で説明する課題
顧客から 「ゼロトラストは全部のネットワークを 作り直さないと導入できないのですか?」 と質問されました。
1分程度で説明してください。
説明例を見る
ゼロトラストは、既存ネットワークを一度にすべて 作り直さなければ導入できないものではありません。
まず現在の利用者、端末、システム、通信、権限を確認し、 リスクの高い部分から改善します。
たとえばリモートアクセスへMFAを追加し、 管理端末だけを許可し、 利用できるアプリケーションを限定するところから開始できます。 小さく検証してから対象を広げることが重要です。
まとめ
- ゼロトラストは特定製品ではなく、 ネットワーク上の場所だけで利用者や端末を信頼しない考え方
- 最初に製品を選ぶのではなく、 導入目的と解決したいリスクを明確にする
- 利用者、端末、アプリケーション、 データ、通信、権限を棚卸しする
- ID・MFAだけでなく、 端末状態、最小権限、セグメンテーション、 ログ監視などを組み合わせる
- アクセスポリシーは 「誰が・どの端末から・何へ・どの条件で」 アクセスできるかまで具体化する
- 全社一括導入ではなく、 PoC・パイロットから開始して段階的に展開する
- 導入後もログを確認し、 ポリシーを継続的に改善する
- 導入効果は製品数ではなく、 過剰権限削減やリスク低減などで確認する
ゼロトラスト導入で重要なのは、 「何を導入するか」より先に、 「何を守り、誰に何を許可するか」を整理することです。
参考資料
-
NIST SP 800-207 Zero Trust Architecture
NIST公式ページ -
NIST SP 1800-35 Implementing a Zero Trust Architecture
NIST NCCoE公式ページ -
CISA Zero Trust Maturity Model
CISA公式ページ
上級編では、要件定義から基本設計、BGP、クラウド、 セキュリティ、自動化、設計レビュー・顧客提案までを順番に学びます。

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