ルーティング設計とは?経路制御・OSPF・BGPの選び方を実務目線で解説

ネットワーク上級編 13/全70記事

この記事は、 「ネットワーク上級編|要件定義・設計・クラウド・自動化へ進む」 の第13回です。

第2章では、要件定義で整理した条件を、 IPアドレス、VLAN、ルーティング、冗長化などの 具体的なネットワーク設計へ落とし込んでいきます。

NETWORK ADVANCED|CHAPTER 2 BASIC DESIGN

ルーティング設計とは?経路制御・OSPF・BGPの選び方を実務目線で解説

ルーターに経路を設定すれば通信はできます。 しかし、実務のルーティング設計では 「通信できること」だけでは不十分です。 障害時にどの経路へ切り替えるのか、 経路が増えたときに運用できるのか、 どこまで経路を広報するのかまで考えて設計します。

対象レベル Level 3〜4・上級
想定読了時間 約30分
身につく成果 要件から経路設計を作れる
前提知識 IP・VLAN・基本ルーティング
演習環境 ブラウザ・紙・Excel等

中級編では、スタティックルートやOSPFの動作、 ルーティングテーブルの読み方を学びました。

上級編では、その知識を使って 「このネットワークでは、どのルーティング方式を、 どこで、なぜ使うのか」 を決められる状態を目指します。

この記事を読み終えるとできること

  • ルーティング設計の目的を説明できる
  • スタティックと動的ルーティングを使い分けられる
  • OSPFとBGPを使う場所を判断できる
  • デフォルトルートを使う場所を考えられる
  • 主系・待機系の経路を設計できる
  • 経路集約が必要な理由を説明できる
  • 経路再配信のリスクを説明できる
  • ルーティング設計表を作成できる

ルーティング設計とは何か

最初に覚える定義

ルーティング設計とは、 異なるネットワーク間で通信するために、 どの経路を利用し、どのように経路情報を管理・制御するかを決める設計です。

ルーティングというと、 「ルーターに経路を登録すること」 と考えがちです。

しかし設計工程では、 単に宛先へ到達できる経路を作るだけではありません。

  • 通常時はどの経路を使うのか
  • 回線障害時はどこへ切り替えるのか
  • どのルーターがどの経路を知る必要があるのか
  • 経路情報をどこまで広報するのか
  • 拠点やネットワークが増えても管理できるか
  • 誤った経路を受け取らないようにするか
  • 障害時に原因を追跡しやすいか

こうした点まで含めて決めるのが、 ルーティング設計です。

設計で重要なのは、「経路があるか」だけではありません。

正常時・障害時・変更時のすべてで、 想定した経路になるように制御できることが重要です。

IPアドレス設計・VLAN設計・ルーティング設計の関係

基本設計では、 IPアドレス、VLAN、ルーティングを 別々に考えてはいけません。

IPアドレス・VLAN・ルーティングの関係

IPアドレス設計 ネットワーク範囲を決める
VLAN設計 L2の分割単位を決める
L3境界 ネットワーク間通信の境界
ルーティング設計 ネットワーク間の経路を決める

たとえば、次のようにVLANを分割したとします。

VLAN 用途 ネットワーク
VLAN 10 営業部 10.10.10.0/24
VLAN 20 技術部 10.10.20.0/24
VLAN 100 サーバー 10.10.100.0/24

VLANを分割しただけでは、 VLAN 10からVLAN 100へは通信できません。

L3スイッチやルーターで それぞれのネットワーク間をルーティングすることで、 必要な通信を可能にします。

前の記事の 「VLAN設計」 で「どこまでを同じL2ネットワークにするか」を決め、 この記事では「分割したネットワーク間をどう接続するか」を考えます。

ルーティング設計で決めること

ルーティング設計では、 最低でも次の項目を整理します。

1

経路制御方式

スタティックルート、OSPF、BGPなど、 どの方法で経路を管理するか決めます。

2

経路の優先順位

複数経路が存在する場合に、 通常時にどの経路を利用するか決めます。

3

障害時の経路

主回線や機器が停止したときに、 どの経路へ切り替えるか決めます。

4

経路広告範囲

どのネットワーク情報を、 どこまで広報するか決めます。

5

経路集約

複数の細かい経路をまとめ、 経路情報をシンプルにできるか検討します。

6

運用・監視

ルーティングの正常性を、 どの情報で監視・確認するか決めます。

ルーティング設計の確認項目

観点 確認する内容
ネットワーク規模 ルーター数、拠点数、サブネット数、将来増加
可用性 単一障害時の通信継続、切り替え時間
経路制御 主経路、バックアップ経路、負荷分散
外部接続 ISP、クラウド、閉域網、他組織との接続
運用 設定変更頻度、障害調査、担当者のスキル
拡張性 拠点・VLAN・回線追加時の影響

スタティックと動的ルーティングをどう使い分けるか

最初に判断するのが、 経路を手動で設定するのか、 ルーティングプロトコルで自動交換するのかです。

項目 スタティックルート 動的ルーティング
経路登録 管理者が手動設定 ルーター同士で経路情報を交換
構成 比較的シンプル プロトコル設計が必要
小規模環境 向いている 過剰になる場合がある
大規模環境 管理負荷が増えやすい 向いている
障害時 追加設計が必要 経路を再計算できる
変更への追従 手動変更が必要 構成変更を反映しやすい

スタティックルートが適しているケース

  • 経路が1方向しかない小規模拠点
  • デフォルトルートだけで十分な端末側ネットワーク
  • 接続先が固定されていて変更頻度が低い
  • 特定の経路を意図的に固定したい
  • ルーティングプロトコルを動作させる必要がない境界

動的ルーティングが適しているケース

  • ルーターやL3スイッチが多数存在する
  • 経路が複数存在する
  • 障害時に自動的な経路変更が必要
  • 拠点やネットワークの追加が多い
  • 手動経路管理では運用負荷が高くなる

「動的ルーティングの方が高度だから良い」という考え方は危険です。

小規模で経路がほぼ変わらない環境なら、 スタティックルートの方が構成を理解しやすく、 障害調査もしやすい場合があります。

設計では、技術の高度さではなく 必要な機能に対して最もシンプルな方式 を選ぶことが重要です。

OSPF・BGPなどのルーティング方式をどう選ぶか

動的ルーティングを採用する場合は、 どのルーティングプロトコルを使うか決めます。

上級編で特に重要になるのが、 OSPFとBGPの役割を分けて考えることです。

OSPF

主に企業や組織の内部ネットワークで、 複数ルーター間の経路情報を交換するときに利用します。

  • 社内LAN
  • データセンター内
  • 拠点網
  • 複数L3スイッチ間

BGP

主に異なるネットワーク管理単位との接続や、 外部経路を細かく制御したい場合に利用します。

  • 複数ISPとの接続
  • 大規模WAN
  • クラウド接続
  • 外部組織との経路交換

OSPFとBGPの配置イメージ

社内LAN 10.0.0.0/8
OSPF 社内経路を交換
境界ルーター 内部と外部の境界
BGP 外部経路を交換
ISP・外部NW インターネット等

方式を選ぶときの判断基準

要件 候補
小規模で出口が1つだけ スタティックルート・デフォルトルート
社内に多数のL3機器がある OSPFなどのIGP
障害時に社内経路を自動変更したい OSPFなどの動的ルーティング
複数ISPと接続し外部経路を制御したい BGP
クラウド・WAN事業者と経路交換する BGPが利用される構成を検討

OSPFやBGPの詳細動作は、 上級編の 「BGPの基本」 などで改めて扱います。

この段階では、 どこに何を使うかを設計できること を優先してください。

デフォルトルートをどこで使うか

すべてのルーターが、 すべてのネットワークの詳細経路を持つ必要はありません。

特に、通信の出口が1方向しかない場所では、 デフォルトルートを使うことで設計を簡潔にできます。

0.0.0.0/0 → 上位ルーターへ

拠点ネットワークの例

支店側は本社方向だけを知ればよい構成

支店LAN 10.20.0.0/16
支店ルーター 0.0.0.0/0 → 本社
WAN 拠点間回線
本社 詳細経路を保持

支店から見て、 他ネットワークへの出口が本社しかないのであれば、 多数の詳細経路を支店ルーターへ配布しなくても、 デフォルトルートで処理できる可能性があります。

詳細経路を持たせる必要がある場所と、 デフォルトルートだけでよい場所を分ける と、設計がシンプルになります。

主経路・バックアップ経路を設計する

重要なネットワークでは、 1本の経路だけに依存すると、 回線や機器の障害がそのまま通信停止につながります。

そこで、 正常時に使う主経路と、 障害時に利用するバックアップ経路 を検討します。

主経路とバックアップ経路

本社 10.10.0.0/16
主回線 通常はこちら
支店 10.20.0.0/16
バックアップ:本社 → 予備回線 → 支店

決めるべきこと

  • 通常時にどちらの回線を使うか
  • 何をもって主経路障害と判断するか
  • 障害後に何秒・何分で切り替える必要があるか
  • 主回線復旧後に自動で戻すか
  • 往路と復路が意図した経路になるか
  • 予備回線でも必要な帯域を確保できるか

「経路が2本ある=冗長化できている」とは限りません。

2本の回線が同じ装置、同じ電源、 同じ通信事業者設備などへ依存していれば、 共通障害で同時に停止する可能性があります。

冗長化そのものの詳しい設計は、 次の記事 「冗長化設計」 で扱います。

経路集約と階層化を考える

ネットワークが大きくなるほど、 個別のサブネットをそのまま全体へ広報すると、 経路数や運用負荷が増えていきます。

そこで重要になるのが、 経路集約です。

例:拠点ごとにアドレスをまとめる

拠点 内部ネットワーク例 上位へ広報する経路例
東京 10.10.10.0/24
10.10.20.0/24
10.10.30.0/24
10.10.0.0/16
大阪 10.20.10.0/24
10.20.20.0/24
10.20.30.0/24
10.20.0.0/16

このような集約をしやすくするには、 ルーティング設計だけでなく、 その前段階のIPアドレス設計も重要です。

良いIPアドレス設計は、 良いルーティング設計につながります。

拠点や用途単位で連続したアドレスを割り当てておけば、 将来、経路を集約しやすくなります。

経路集約のメリット

経路数を減らせる

上位ルーターが保持する 経路情報を簡潔にできます。

構成を理解しやすい

アドレスを見ただけで、 どの拠点・領域か判断しやすくなります。

変更影響を限定しやすい

下位の細かな変更を 上位ネットワークへ見せずに済む場合があります。

集約経路を作る場合は、 実在しない下位ネットワーク宛の通信をどう扱うか も考えます。

集約の仕方によっては、 意図しないブラックホールが発生する可能性があるため、 集約範囲は慎重に設計します。

経路再配信を安易に増やさない

大規模なネットワークでは、 既存環境と新環境で異なるルーティング方式を使うことがあります。

その場合、 あるルーティング方式で学習した経路を 別のルーティング方式へ渡す 経路再配信 が必要になる場合があります。

経路再配信のイメージ

OSPF領域 社内ネットワーク
境界ルーター 必要な経路を変換
別ルーティング領域 外部・既存環境等

再配信は便利ですが、 経路制御が複雑になりやすいポイントです。

  • 不要な経路まで広報してしまう
  • 同じ経路が別経路から戻ってくる
  • 想定外の経路が優先される
  • 経路ループの原因になる
  • 障害時の経路追跡が難しくなる

再配信は「できるから使う」のではなく、 境界を明確にし、必要な経路だけを渡す設計 にします。

特に複数箇所で相互再配信を行う構成は、 経路ループや意図しない優先経路を生みやすいため、 設計レビューで重点的に確認します。

ルーティング設計ではセキュリティ・運用まで考える

ルーティング設計は、 通信経路だけを決めて終わりではありません。

1.不要な経路を受け取らない

外部ネットワークや他システムと経路交換する場合、 必要な経路だけを受け取るように設計します。

2.不要な経路を広報しない

社内の管理ネットワークや、 外部へ公開する必要がない経路を 誤って広報しないようにします。

3.ファイアウォールとの経路を確認する

ファイアウォールが経路上にある場合は、 往路と復路を確認します。

ステートフルファイアウォールでは、 想定外の非対称経路が 通信トラブルにつながる場合があります。

4.監視対象を決める

運用開始後に、 少なくとも次の項目を確認できるようにします。

  • ルーティングテーブル
  • デフォルトルートの有無
  • OSPFネイバー状態
  • BGPピア状態
  • 経路数の増減
  • 主経路・バックアップ経路の状態
  • 経路変更に関するログ

設計書を見れば、正常状態が分かること が理想です。

正常時に存在すべき経路やネイバーを定義しておくと、 障害時に「何が通常と違うのか」を判断しやすくなります。

企業ネットワークのルーティング設計例

ここでは、 本社・支店・インターネットを持つ 企業ネットワークを例に考えます。

企業ネットワークの構成例

東京本社 10.10.0.0/16
WAN 主回線+予備回線
大阪支店 10.20.0.0/16
本社 → ファイアウォール → ISP → インターネット

要件

  • 本社と大阪支店で業務通信を行う
  • 本社側には複数のL3スイッチがある
  • WAN回線障害時は予備回線へ切り替える
  • 大阪支店のインターネット通信は本社経由とする
  • 将来、支店が10拠点程度まで増える予定

設計例

設計項目 設計例 理由
本社内部 OSPF L3機器が複数あり、 将来のネットワーク追加にも対応しやすくする
支店側 デフォルトルート 業務通信・インターネット通信とも 基本的に本社方向へ送ればよいため
本社から支店 10.20.0.0/16として集約 支店内部の細かいサブネットを 本社側へ大量に持たせないため
WAN障害時 予備回線へ経路変更 単一回線障害時も 業務通信を継続する要件があるため
インターネット 本社FW方向へデフォルト インターネット出口を本社へ集約するため

設計レビューでは、 「OSPFを使います」だけでは説明不足です。

「本社内には複数のL3機器があり、 将来のネットワーク追加と障害時の経路変更を考慮して 動的ルーティングを採用する」 のように、要件と設計を結びつけて説明します。

ルーティング設計書には何を残すのか

ルーティング方式を決めたら、 後から第三者が確認できる形で 設計書へ残します。

ルーティング設計表の例

項目 設計内容
ルーティング方式 OSPF+一部スタティック
OSPF対象 本社コア・ディストリビューション間
OSPF Area Area 0を基本とする
デフォルトルート インターネットFW方向
主経路 WAN回線A
バックアップ WAN回線B
経路集約 拠点単位で/16へ集約
経路再配信 原則なし。必要箇所のみ個別設計
監視 ネイバー状態、経路数、WAN経路を監視

設計書へ残したい主な項目

  • 使用するルーティング方式
  • ルーティング対象機器
  • エリア・ASなどの設計情報
  • 広告するネットワーク
  • 受信するネットワーク
  • デフォルトルートの生成元
  • 経路の優先順位
  • 主経路とバックアップ経路
  • 経路集約方針
  • 経路フィルタリング方針
  • 再配信の有無
  • 障害時の想定経路
  • 監視項目

基本設計では 「どのような方針で経路を制御するか」を記載し、 詳細設計でインターフェース、ネイバー、 メトリックなどの具体値へ落とし込んでいきます。

ルーティング設計でよくある失敗

NG とりあえず全ルーターでOSPFを動かす

必要性を確認せず動的ルーティングを広げると、 障害影響範囲や設定管理が複雑になります。 どこまで動的ルーティングが必要なのかを決めます。

NG すべての経路を全ルーターへ広報する

各ルーターが本当に必要とする経路を整理せず、 すべての詳細経路を配布すると、 規模拡大時に管理が難しくなります。

NG 正常時の経路しか考えない

回線やルーターが停止したときに、 どの経路へ変更されるかまで確認します。

NG 往路だけ確認する

通信は戻りの経路も必要です。 特にファイアウォールや複数回線がある構成では、 復路も含めて確認します。

NG 再配信を複数箇所へ追加する

再配信ポイントが増えるほど、 経路の流れを追いにくくなります。 境界を明確にし、可能な限り単純化します。

NG 将来拡張を考えず個別経路を大量に作る

拠点やVLANが増える予定なら、 IPアドレス設計と合わせて 経路集約しやすい構成を検討します。

OK 要件から必要な経路制御を決める

ネットワーク規模、可用性、運用性、将来拡張性を整理し、 必要な場所だけに必要な方式を採用します。

顧客・上司へルーティング設計を説明する方法

顧客へ 「OSPFを採用します」 とだけ説明しても、 技術に詳しくない人にはメリットが伝わりません。

技術中心の説明

「OSPFを利用し、コスト値を調整して 主経路とバックアップ経路を制御します。」

要件へ結びつけた説明

「本社内には複数の通信経路があり、 1つの回線や機器が故障しても業務通信を継続する必要があります。 そのため、障害を検知した際に利用可能な経路へ 自動的に切り替えられる方式を採用します。」

顧客説明では、 次の順番にすると伝わりやすくなります。

  1. 業務上の要件を説明する 何を実現する必要があるのかを最初に示します。
  2. 問題となるリスクを説明する 単一経路の場合に何が起こるかを説明します。
  3. 採用する設計を説明する 主経路・予備経路やルーティング方式を示します。
  4. 得られる効果を説明する 障害時の通信継続や運用負荷削減などへつなげます。

技術 → 目的 → 業務上の効果 に翻訳できると、 設計理由を顧客へ説明できるエンジニアに近づきます。

ルーティング設計で使う英語表現

海外ベンダーの設計資料や設定ガイドでは、 次のような表現がよく登場します。

英語 意味 実務での使われ方
Routing design ルーティング設計 経路制御全体の設計
Static route スタティックルート 手動で設定する経路
Dynamic routing 動的ルーティング プロトコルによる経路交換
Default route デフォルトルート より具体的な経路がない場合の出口
Primary path 主経路 通常時に利用する経路
Backup path バックアップ経路 障害時に使用する経路
Route advertisement 経路広告 他ルーターへ経路を通知すること
Route summarization 経路集約 複数経路をまとめて広告すること
Route redistribution 経路再配信 異なるルーティング方式間で経路を渡すこと
Convergence 収束 障害後に経路情報が安定すること

設計レビューで使える表現

The primary path is used during normal operation. Traffic is rerouted to the backup path if the primary link fails. OSPF is used for internal route exchange. A default route is configured toward the Internet gateway. Route summarization is used to reduce routing information.

理解度チェック

ルーティング設計の考え方を確認しましょう。

問題1.ルーティング設計の目的として最も適切なものはどれですか。

  1. すべてのルーターへOSPFを設定すること
  2. 通信経路と経路制御方式を要件に基づいて決めること
  3. IPアドレスをできるだけ多く割り当てること
  4. すべての通信をデフォルトルートで処理すること
解答を見る
正解:B

ルーティング設計では、 正常時・障害時を含め、 どの経路をどのように利用するかを設計します。

問題2.小規模な支店で、本社方向にしか出口がない場合、 最初に検討しやすい方式はどれですか。

  1. BGPフルルート
  2. デフォルトルート
  3. 全拠点への個別ホストルート
  4. 必ずOSPFマルチエリア
解答を見る
正解:B

出口が1方向だけであれば、 デフォルトルートによって シンプルに設計できる可能性があります。

問題3.経路集約の主な目的として適切なものはどれですか。

  1. すべての経路をより細かくする
  2. ルーティング情報を簡潔にする
  3. VLANを削除する
  4. ファイアウォールを不要にする
解答を見る
正解:B

複数の下位経路をまとめることで、 上位で保持・交換する経路情報を減らせます。

問題4.経路再配信を設計するとき、 特に注意すべきことを2つ挙げてください。

解答例を見る
  • 不要な経路を再配信しないこと
  • 経路ループが発生しないこと
  • 想定外の経路が優先されないこと
  • 再配信ポイントを増やしすぎないこと

問題5.ルーティング設計で往路だけでなく復路も確認する必要があるのはなぜですか。

解答を見る

通信は要求を送る経路だけでなく、 応答を返す経路も成立している必要があるためです。 特に複数回線やファイアウォールがある構成では、 復路が想定外の経路になることで 通信障害につながる場合があります。

実践演習:3拠点企業のルーティングを設計する

次の要件から、 ルーティング方式を考えてみましょう。

ネットワーク構成

演習用企業ネットワーク

東京本社 10.10.0.0/16
WAN 主回線・予備回線
大阪支店 10.20.0.0/16
名古屋支店 10.30.0.0/16

要件

  • 本社には5台以上のL3機器がある
  • 本社内部では複数の通信経路が存在する
  • 各支店から本社へ業務通信を行う
  • 各支店から直接インターネットへは接続しない
  • WAN主回線障害時は予備回線を利用する
  • 今後5年間で支店が10拠点程度へ増える予定

課題1.本社内部のルーティング方式を決める

スタティックルートと動的ルーティングの どちらを採用するか考え、 理由を書いてください。

採用方式:________________

理由:__________________________
解答例を見る

例:OSPFなどの動的ルーティングを採用する。

本社内部には複数のL3機器と複数経路があり、 将来ネットワークが追加される可能性もあるため、 個別のスタティックルートを多数管理するより、 動的に経路情報を交換できる方式が適しています。

課題2.支店側の経路を考える

支店から他ネットワークへの出口が 本社方向だけの場合、 どのような経路を設定するとシンプルでしょうか。

支店側経路:________________
解答例を見る

デフォルトルートを本社方向へ設定する。

支店が本社以外の詳細経路を個別に把握する必要がなければ、 0.0.0.0/0を本社側へ向けることで 経路管理を簡潔にできます。

課題3.本社側の支店経路を考える

大阪支店内部に多数の/24ネットワークが存在する場合、 本社へすべて個別に広告する方法以外に どのような方法があるでしょうか。

回答:__________________________
解答例を見る

大阪支店のアドレスを 10.20.0.0/16の範囲へまとめて設計している場合、 本社側へ10.20.0.0/16として 経路集約して広告する方法を検討できます。

課題4.障害時の動作を書く

WAN主回線が停止した場合、 通信がどのように変化すべきか文章で説明してください。

主回線障害を検知した場合、__________________________。
解答例を見る

主回線障害を検知した場合、 本社・支店間の経路を予備回線側へ変更し、 業務通信を継続できるようにします。 主回線復旧時の戻し方についても あらかじめ設計しておきます。

課題5.設計表を作る

本社内部方式:
支店側方式:
主経路:
バックアップ経路:
経路集約:
デフォルトルート:
障害時の動作:
監視項目:
回答例を見る
  • 本社内部方式:OSPF
  • 支店側方式:デフォルトルートを中心に設計
  • 主経路:WAN主回線
  • バックアップ経路:WAN予備回線
  • 経路集約:支店単位で/16へ集約
  • デフォルトルート:支店→本社、本社→インターネット出口
  • 障害時:主回線停止時に予備回線へ変更
  • 監視:ネイバー状態、WAN経路、経路数、回線状態

自分の言葉で説明する課題

顧客から次のように質問されました。

「ルーターに経路を設定すれば通信できるのに、 なぜルーティング設計が必要なのですか?」

30〜60秒程度で説明できる文章を書いてみましょう。
説明例を見る

単純に通信するだけであれば、 宛先への経路を設定するだけでも可能です。 しかし企業ネットワークでは、 回線障害時の切り替えや拠点追加、 通信経路の優先順位なども考える必要があります。 そのため、通常時と障害時の経路、 経路情報の管理方法、 将来拡張まで含めてルーティングを設計します。

設計担当者には、 「設定方法を知っている」だけでなく、 なぜその方式にしたのかを要件と結びつけて説明する力 が求められます。

まとめ

  • ルーティング設計では、 異なるネットワーク間の通信経路と経路制御方法を決める
  • 小規模で経路が固定されている構成では、 スタティックルートが適する場合がある
  • 多数のL3機器や複数経路がある環境では、 OSPFなどの動的ルーティングを検討する
  • BGPは、ISPや外部ネットワークとの 経路交換・経路制御で重要になる
  • 出口が1方向だけの場所では、 デフォルトルートを活用すると設計を簡潔にできる
  • 正常時だけでなく、 回線・機器障害時の経路も設計する
  • IPアドレスを拠点単位などで整理すると、 経路集約しやすくなる
  • 経路再配信は便利だが、 経路ループや複雑化を避けるため必要最小限にする
  • ルーティング設計は、 セキュリティ・監視・運用まで含めて考える

良いルーティング設計とは、 最も高度なプロトコルを使うことではありません。 要件を満たしながら、正常時・障害時の経路を予測でき、 将来も運用し続けられるシンプルな構成にすることです。

次の記事:冗長化設計

今回は、 通信経路とルーティング方式をどのように決めるかを学びました。

次の記事では、 ルーター、スイッチ、回線、ゲートウェイなどを どこまで二重化すべきかを考えます。

「機器を2台にすれば冗長化なのか」 「どこまで二重化すればよいのか」 「単一障害点をどう見つけるのか」 といった設計判断を整理します。

ネットワーク上級編 13/全70記事

上級編では、要件定義から基本設計、高度なネットワーク、 クラウド、セキュリティ、自動化、設計・提案までを 順番に学びます。

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