この演習では、第5章「実務への接続」で学んだ内容を使い、 ネットワーク変更作業の準備から障害報告までを 1つのケースで体験します。
第5章 実践演習|変更作業・試験・障害報告を実務形式で体験
実務では、コマンドを投入できるだけでは十分ではありません。 作業前に資料を確認し、作業可否を判断し、試験を行い、 問題が起きた場合には影響を抑えながら原因を調査し、 関係者へ正確に報告する必要があります。 今回は、その一連の流れをケース形式で演習します。
今回の目的は「障害原因を当てること」だけではありません。
作業前にリスクへ気づけるか、問題が起きたときに安全な判断ができるか、 そして確認した事実を他の人へ説明できるか を確認します。
この演習で確認するスキル
- 物理構成図と論理構成図から作業対象を特定できる
- パラメータシートと作業手順書の不整合を見つけられる
- 変更作業前の確認事項を整理できる
- 単体試験と結合試験を分けて考えられる
- 障害発生時に変更を止め、影響範囲を確認できる
- 事実・原因・対応・結果を分けて報告できる
- ベンダー問い合わせに必要な情報を整理できる
- 作業継続・切り戻し・エスカレーションを判断できる
今回のケース
あなたはネットワーク構築チームのメンバーです。 営業部の端末増設に伴い、新しいVLANを追加する変更作業を担当します。
作業は平日の業務終了後に実施し、 作業完了後に営業部端末から社内サーバーおよびインターネットへの 通信確認を行います。
変更要件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 追加VLAN | VLAN 30 |
| 用途 | 営業部端末用 |
| ネットワーク | 192.168.30.0/24 |
| デフォルトゲートウェイ | 192.168.30.1 |
| DHCP | 192.168.30.100 ~ 192.168.30.199 |
| 既存VLAN | VLAN 10:管理部 / VLAN 20:技術部 |
| 変更対象 | L3SW-01、SW-01 |
論理構成イメージ
今回の演習ケースは、学習用に簡略化しています。
実務では機器の冗長構成、認証、監視、保守契約、変更承認、 利用部門との調整など、さらに多くの確認項目があります。
最初に構成図から、今回の変更によって影響を受ける可能性がある範囲を整理します。
VLAN 30を追加する場合、最低限どの機器・接続を確認すべきでしょうか。 4つ以上挙げてください。
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解答例を見る
- L3SW-01のVLAN 30およびSVI設定
- L3SW-01とSW-01間のトランクリンク
- SW-01のVLAN 30設定
- 営業部PCを接続するアクセスポート
- DHCPサーバーまたはDHCPリレー
- FW-01までの経路と通信制御
- 既存VLAN 10・20への影響
新しいVLANだけを見るのではなく、 既存通信へ影響しないかまで確認することが重要です。
物理構成図と論理構成図では、今回それぞれ何を確認すべきでしょうか。
論理構成図:
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物理構成図: 対象機器、接続ポート、ケーブル接続、冗長経路、 実際にどの装置を操作するかを確認します。
論理構成図: VLAN、IPネットワーク、デフォルトゲートウェイ、 ルーティング、通信経路、セキュリティ境界などを確認します。
次のパラメータシートが作業資料として渡されました。
| 項目 | L3SW-01 | SW-01 |
|---|---|---|
| VLAN ID | 30 | 30 |
| VLAN名 | SALES | SALES |
| Gateway | 192.168.30.1/24 | - |
| 上位接続 | Gi1/0/48 | Gi1/0/48 |
| 許可VLAN | 10,20,30 | 10,20,30 |
| 営業部PC接続ポート | - | Gi1/0/10~Gi1/0/20 |
作業開始前に、このパラメータシートだけでは判断できない情報を 5つ以上挙げてください。
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解答例を見る
- 現在の実機設定がパラメータシートと一致しているか
- VLAN 30が既に別用途で使用されていないか
- 192.168.30.0/24が他ネットワークと重複していないか
- DHCP設定またはDHCPリレー設定
- FWやACLで必要な通信が許可されているか
- 営業部PCが利用するDNSサーバー
- 変更対象機器の管理IPアドレス
- 設定保存方法
- バックアップコンフィグの取得方法
- 切り戻し時の設定値
資料に値が書いてある=正しい、とは限りません。
実務では、設計資料・パラメータシート・現行コンフィグ・実機状態を 突き合わせて確認します。
作業担当者が次の手順を作成しました。
- L3SW-01へログインする
- VLAN 30を作成する
- VLAN 30のゲートウェイを設定する
- L3SW-01のトランクポートでVLAN 30を許可する
- SW-01へログインする
- VLAN 30を作成する
- SW-01のトランクポートでVLAN 30を許可する
- Gi1/0/10~20をVLAN 30へ設定する
- 営業部PCからpingを実行する
- 設定を保存して作業終了とする
この手順書で不足している項目や、作業前に追加したい項目を 6つ以上挙げてください。
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解答例を見る
- 作業開始前の正常性確認
- 現在のコンフィグ取得
- バックアップコンフィグ取得
- 現在のVLAN・トランク状態確認
- 作業コマンド投入後の確認コマンド
- 既存VLAN 10・20の通信確認
- DHCPによるIPアドレス取得確認
- DNS名前解決確認
- 社内サーバーへの通信確認
- インターネット接続確認
- 異常時の中断条件
- 切り戻し手順
- 作業完了判定基準
- 設定保存後の再確認
特に注意したいのは、「VLAN 30を許可する」という表現です。
実際のコマンドが「既存の許可VLANへ追加する」のか、 「許可VLAN一覧を置き換える」のかは必ず確認します。
作業開始15分前に事前確認を実施したところ、次の状態でした。
あなたが作業責任者なら、この状態で変更作業を開始しますか。 「開始する」「開始しない」のどちらかを選び、理由を書いてください。
理由:
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判断例:開始しない。
変更作業では、問題発生時に安全に元へ戻せる状態を作ってから開始します。 今回はバックアップの保存先が確認できておらず、 切り戻し手順もレビュー未完了です。
この2点を解消し、切り戻し可能な状態を確認した後に Go判断を行います。
実務では「予定時刻だから始める」のではなく、「開始条件を満たしたから始める」と考えます。
事前確認の不足を解消し、変更作業を実施できる状態になりました。 次に、作業後の試験項目を考えます。
L3SW-01とSW-01について、単体で確認する項目を考えてください。
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単体試験の解答例を見る
- VLAN 30が作成されている
- L3SW-01に192.168.30.1/24が設定されている
- 対象インターフェースがUpである
- トランクでVLAN 10・20・30が許可されている
- 営業部接続ポートがVLAN 30へ所属している
- 異常ログが発生していない
営業部PCを含めた実際の通信として確認する項目を考えてください。
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結合試験の解答例を見る
- 営業部PCがDHCPから正しいIPアドレスを取得できる
- デフォルトゲートウェイ192.168.30.1へ通信できる
- 必要な社内サーバーへ通信できる
- DNSによる名前解決ができる
- インターネットへ接続できる
- 既存VLAN 10の通信が正常である
- 既存VLAN 20の通信が正常である
変更した機能だけでなく、変更していない既存機能も確認します。
「VLAN 30が使える」だけでは、 変更作業全体が正常だったとは判断できません。
作業後の試験を開始したところ、次の状況が判明しました。
- 21:00 VLAN 30の設定変更を開始
- 21:12 VLAN 30設定完了
- 21:15 営業部PCが192.168.30.110を取得
- 21:17 営業部PCからインターネット通信成功
- 21:18 技術部PCから「社内サーバーへ接続できない」と連絡
21:18の時点で、あなたが最初に行う行動を優先順位順に書いてください。
2.
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解答例を見る
- 追加作業を止める
- 申告時刻・利用者・症状を記録する
- 影響範囲を確認する
- 直前の変更内容を確認する
- 現状の設定・状態・ログを取得する
- 必要に応じて作業責任者へ報告する
- 切り戻し条件に該当するか判断する
問題が発生した状態で、予定していた残りの変更をそのまま続けないことが重要です。
障害発生直後に、証拠となる情報を消してしまわないよう注意します。
再起動や設定変更を行う前に、必要なログ・状態・コンフィグを取得します。
調査したところ、次の結果が得られました。
| 確認項目 | 結果 |
|---|---|
| L3SW-01 | 稼働正常 |
| SW-01 | 稼働正常 |
| Gi1/0/48リンク | Up |
| VLAN 30端末 | 通信正常 |
| VLAN 10端末 | 通信正常 |
| VLAN 20端末 | 他ネットワークへ通信不可 |
| L3SW側 trunk VLAN | 10,20,30 |
| SW側 trunk VLAN | 10,30 |
もっとも可能性が高い障害原因を説明してください。
解答を見る
SW-01側のトランクポートからVLAN 20が許可対象から外れていることが原因です。
VLAN 30を追加する操作の際に、既存の許可VLANへ「追加」するのではなく、 VLAN一覧を「10,30」で上書きした可能性があります。
その結果、VLAN 20のフレームがL3SW-01とのトランクリンクを通過できず、 技術部端末の通信だけが影響を受けています。
原因を修正した後、最低限どの通信を再確認すべきでしょうか。
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解答例を見る
- VLAN 20端末からデフォルトゲートウェイへの通信
- VLAN 20端末から社内サーバーへの通信
- VLAN 20端末から必要な外部通信
- VLAN 10の既存通信
- 今回追加したVLAN 30の通信
- トランク許可VLANが10,20,30であること
障害は21:30に復旧しました。 次の情報を使って、作業責任者へ送る障害報告を作成してください。
発生
21:18 技術部から社内サーバーへ接続不可
影響
VLAN 20の端末から他ネットワークへの通信不可
原因
SW-01のトランク許可VLANからVLAN 20が欠落
復旧
VLAN 20を許可対象へ追加し21:30に通信復旧
原因調査中の21:20時点で、作業責任者へ送る一次報告を作成してください。
【事象】
【影響範囲】
【現在の状況】
【実施中の対応】
【次回報告】
一次報告の例を見る
【発生時刻】21:18
【事象】 VLAN 20の技術部端末から社内サーバーへ通信できない事象を確認しました。
【影響範囲】 現時点でVLAN 20の端末で影響を確認しています。 VLAN 10および新規VLAN 30は通信可能です。
【現在の状況】 追加変更作業を停止し、直前の設定変更内容とトランク設定を確認しています。
【実施中の対応】 L3SW-01、SW-01の状態およびVLAN設定を比較確認しています。
【次回報告】 原因または復旧見込みが判明次第、改めて報告します。
【原因】
【対応】
【復旧確認】
【今後の対応】
復旧報告の例を見る
【復旧時刻】21:30
【原因】 SW-01のトランクポート設定変更時に、 既存の許可VLAN 20が許可対象から外れたことが原因でした。
【対応】 トランクの許可VLANを10,20,30へ修正しました。
【復旧確認】 VLAN 20から社内サーバーへの通信、 VLAN 10・20・30の既存・新規通信が正常であることを確認しました。
【今後の対応】 作業手順書のコマンド表記を見直し、 変更前後のトランク許可VLAN確認を試験項目へ追加します。
原因が分かっていない段階では、推測を事実として報告しないことが重要です。
「確認できている事実」「調査中の内容」「次の行動」を分けて伝えます。
後日、同じスイッチでトランク設定変更時に予期しない動作が再発したため、 ベンダーサポートへ問い合わせることになりました。
ベンダーへ問い合わせる前に整理・取得する情報を 8つ以上挙げてください。
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解答例を見る
- 製品名・機種名
- OS/ファームウェアバージョン
- シリアル番号
- ネットワーク構成図
- 発生日時
- 事象・期待していた動作
- 実際に発生した動作
- 影響範囲
- 投入したコマンド
- 変更前後のコンフィグ
- showコマンドなどの状態確認結果
- 関連ログ
- 再現手順
- 発生頻度
- 実施済みの切り分け内容
- 質問したい内容
【環境】
【事象】
【期待する動作】
【発生条件・再現手順】
【実施済み確認】
【質問事項】
問い合わせ例を見る
【件名】
トランク許可VLAN変更時の既存VLAN設定について
【事象】
トランクポートへVLAN 30を追加する変更を実施した際、
既存のVLAN 20が許可VLAN一覧から外れる事象を確認しました。
【期待する動作】
既存のVLAN 10・20を維持したままVLAN 30のみを追加したいと考えています。
【確認事項】
当該OSバージョンにおける推奨設定方法と、
使用したコマンドの動作仕様をご教示ください。
あわせて、機器情報、OSバージョン、変更前後の設定、 実行コマンド、状態確認結果を添付します。
この演習で作る成果物
最低限、次の4つを自分で作成してみましょう
- 変更作業前チェックリスト
- 単体試験・結合試験項目書
- 障害一次報告・復旧報告
- ベンダー問い合わせ情報整理表
問題に正解するだけでなく、 実際の現場でそのまま使える形の文章・表へ落とし込む ことがこの章の最終目標です。
採点・修了判定
各分野を自己採点してください。合計100点です。
| 得点 | 判定 | 状態 |
|---|---|---|
| 80〜100点 | 合格 | 第5章の内容を実務の流れとして理解できています |
| 60〜79点 | あと一歩 | 間違えたテーマの記事を復習して再挑戦しましょう |
| 0〜59点 | 要復習 | 41〜49の記事を順番に復習するのがおすすめです |
第5章の修了チェック
- 変更前に必要な資料を確認できる
- 作業のリスクと中断条件を考えられる
- 正常系と既存系を含む試験を作成できる
- 障害時に追加変更を止めて状況を整理できる
- 影響範囲を根拠とともに説明できる
- 一次報告と復旧報告を作成できる
- ベンダー問い合わせ情報を整理できる
- 作業結果を成果物として残せる
第5章を復習する
まとめ
- 実務の変更作業は、コマンド投入前の確認から始まる
- 構成図・パラメータシート・実機状態を突き合わせる
- バックアップと切り戻し方法を確認してから作業する
- 単体試験だけでなく、実際の通信を確認する結合試験を行う
- 変更していない既存通信への影響も確認する
- 障害発生時は追加変更を止め、事実と影響範囲を整理する
- 報告では事実・推測・対応状況を混同しない
- ベンダー問い合わせでは再現条件・ログ・設定・実施済み確認を整理する
第5章で身につけたいのは、 「設定できる人」から「安全に変更し、問題が起きても説明できる人」へ進む力です。
次は中級編総合演習へ
第5章まで学習できたら、最後は中級編全体の知識を使って、 VLAN・ルーティング・サービス・障害切り分け・試験・報告をまとめて実践します。
第5章では、ネットワーク技術を実際の変更作業・試験・障害対応・報告へ 接続する方法を学びました。

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