IPv4とIPv6の共存とは?デュアルスタック・トンネル・変換方式を図解

ネットワーク中級編 20/全50記事

この記事は、 「ネットワーク中級編|構築・検証・障害切り分けを身につける」 の第20回です。

前回学んだIPv6のアドレスや通信の基本を土台に、 IPv4を利用している既存環境へIPv6を段階的に導入する方法を整理します。

IPv4とIPv6の共存とは?デュアルスタック・トンネル・変換方式を図解

IPv4からIPv6への移行は、すべての端末・回線・サーバーを同時に切り替える作業ではありません。 実際のネットワークでは、IPv4とIPv6を一定期間併用しながら段階的に移行します。 この記事では、デュアルスタック、トンネリング、NAT64・DNS64・464XLATの違い、 通信の選ばれ方、確認コマンド、障害切り分け、設計上の注意点を解説します。

対象レベル Level 2・中級
想定読了時間 約30分
身につく成果 共存方式を比較し、障害箇所を切り分けられる
前提知識 IPv4・IPv6・DNS・ルーティング
演習環境 PC/Packet Tracerなど

IPv6を有効にしただけで、IPv4の通信が自動的にIPv6へ置き換わるわけではありません。 IPv4とIPv6はアドレス形式やIPヘッダーが異なり、 IPv4だけを話す機器とIPv6だけを話す機器は、そのままでは直接通信できません。

そこで移行期間には、両方を同時に動かす、片方のネットワークへ包んで運ぶ、 または境界でプロトコルを変換する仕組みを使います。

この記事を読み終えるとできること

  • IPv4とIPv6の共存が必要な理由を説明できる
  • デュアルスタック・トンネル・変換の違いを説明できる
  • DNSのA・AAAAレコードと利用プロトコルの関係を判断できる
  • NAT64とDNS64の通信の流れを説明できる
  • IPv4だけ/IPv6だけ失敗する障害を切り分けられる
  • 共存環境で確認すべき設計・運用項目を整理できる

IPv4とIPv6を共存させる理由

最初に覚える定義

IPv4とIPv6の共存とは、移行期間に両方のプロトコルを利用できるようにし、 端末・ネットワーク・サービスを段階的にIPv6へ移行することです。

IPv4は現在も多くの社内システム、ネットワーク機器、アプリケーション、インターネットサービスで利用されています。 一方で、IPv6へ対応した回線、クラウド、OS、モバイルネットワーク、コンテンツも増えています。

企業ネットワークでIPv6を導入するとき、次のすべてを同じ日に変更するのは現実的ではありません。

端末・OS

  • PC・スマートフォン
  • プリンター・IP電話
  • 監視装置・IoT機器
  • 古いOSや組み込み機器

ネットワーク

  • ルーター・L3スイッチ
  • ファイアウォール
  • VPN・ロードバランサー
  • ISP回線・WANサービス

サーバー・サービス

  • Web・DNS・メール
  • 社内業務システム
  • クラウドサービス
  • 外部API・ベンダー接続

運用・セキュリティ

  • ACL・FWポリシー
  • 監視・ログ・資産管理
  • 障害対応手順
  • 試験・切り戻し計画

IPv6対応は、IPアドレスを追加するだけの作業ではありません。

IPv4用とIPv6用の経路、DNS、フィルタリング、監視、障害切り分けをそれぞれ確認する必要があります。

共存・移行で使う3つの方法

IPv4とIPv6の共存方式は、大きく次の3つに整理できます。

1 両方をそのまま動かす

デュアルスタック

端末やルーターでIPv4とIPv6の両方を有効にし、 相手に応じて適切なプロトコルを使います。

2 別のIP網の中を通す

トンネリング

IPv6パケットをIPv4パケットの中へ格納するなど、 非対応区間を越えて運びます。

3 境界で形式を変える

プロトコル変換

IPv6とIPv4の境界でアドレスやヘッダーを変換し、 異なるプロトコル同士を通信させます。

方式 基本動作 主な利用場面
デュアルスタック IPv4とIPv6を並行して動作させる 端末・回線・サービスが両方へ対応できる環境
トンネリング 片方のIPパケットをもう片方のIPパケットで包む IPv4網の途中にあるIPv6拠点同士を接続する場合など
プロトコル変換 境界装置でIPv4とIPv6を相互変換する IPv6専用端末からIPv4専用サーバーへ接続する場合など

3方式は排他的ではありません。 1つのネットワークで、社内はデュアルスタック、WAN区間はトンネル、 IPv6専用セグメントからIPv4サービスへはNAT64を利用する、といった組み合わせもあります。

デュアルスタックの仕組み

デュアルスタックでは、端末、ルーター、サーバーなどがIPv4とIPv6の両方を実装し、 それぞれのアドレス・ルーティング・通信処理を持ちます。

1台の端末でIPv4とIPv6を並行して動かす

IPv4スタック
IPv4アドレス
IPv4ルーティング
ARP
IPv6スタック
IPv6アドレス
IPv6ルーティング
NDP・ICMPv6
同じLANインターフェースにIPv4アドレスとIPv6アドレスを設定しても、 IPv4通信とIPv6通信は別々に処理される

デュアルスタック端末の設定例

項目 IPv4 IPv6
端末アドレス 192.0.2.10/24 2001:db8:10::10/64
デフォルトゲートウェイ 192.0.2.1 ルーター広告などで学習
隣接機器の解決 ARP NDP
ルーティングテーブル IPv4用 IPv6用

IPv4で通信できることと、IPv6で通信できることは別です。 IPv4のデフォルトルートが正常でも、IPv6のデフォルトルートがなければIPv6の外部通信はできません。

デュアルスタックのメリット

  • IPv4専用の相手にはIPv4、IPv6対応の相手にはIPv6で通信できる
  • 既存のIPv4サービスを維持したままIPv6を追加できる
  • アドレス変換を行わず、ネイティブなIPv4・IPv6通信を実現しやすい
  • 段階的にIPv6対応範囲を広げられる

デュアルスタックの注意点

  • IPv4用とIPv6用の2系統を設計・監視する必要がある
  • ACLやファイアウォールを片方だけ設定すると、意図しない通信経路が残る
  • DNS、ロードバランサー、プロキシ、監視ツールなども両方へ対応させる必要がある
  • 障害時に、実際にどちらのプロトコルが使われたか確認する必要がある

IPv4とIPv6はどのように選ばれるか

デュアルスタック端末がホスト名で通信するときは、DNSの応答が重要です。 DNSでは、IPv4アドレスをAレコード、IPv6アドレスをAAAAレコードで通知します。

同じWebサーバーにAとAAAAが登録されている例

Aレコード

IPv4アドレス

192.0.2.80

← DNS →
AAAAレコード

IPv6アドレス

2001:db8:80::80

クライアントOSやアプリケーションは、取得したアドレス、ローカル設定、到達性などを基に接続先を選ぶ
  1. クライアントがホスト名を名前解決する DNSへAレコードとAAAAレコードを問い合わせます。
  2. 利用可能な宛先アドレスを取得する サービスが両方へ対応していれば、IPv4アドレスとIPv6アドレスを取得できます。
  3. OSやアプリケーションが接続先を選ぶ 端末のアドレス、経路、アドレス選択ルール、接続結果などに応じて利用するIPバージョンが決まります。
  4. 選ばれたIPバージョンの経路で通信する IPv4を選んだ場合はIPv4ルーティング、IPv6を選んだ場合はIPv6ルーティングを使用します。

障害対応では、ホスト名へのpingだけで判断しないでください。

ping -4ping -6、A・AAAAレコード、 IPv4・IPv6のルーティングテーブルを分けて確認すると、どちらの通信が失敗しているか明確になります。

トンネリングの仕組み

トンネリングは、あるIPプロトコルのパケットを別のIPプロトコルのパケットへ格納し、 途中のネットワークを通過させる方法です。

代表的な考え方は、IPv6に対応した拠点同士の間にIPv4専用ネットワークがある場合、 IPv6パケットをIPv4パケットで包んで運ぶ構成です。

IPv6 over IPv4トンネルのイメージ

🏢 IPv6拠点A 2001:db8:10::/64
🚪 トンネル入口 IPv6をIPv4でカプセル化
外側:IPv4ヘッダー
内側:元のIPv6パケット
🚪 トンネル出口 外側IPv4を取り外す
🏢 IPv6拠点B 2001:db8:20::/64

トンネリングの処理

  1. 入口装置が元のIPv6パケットを受信する 宛先はトンネルの先にあるIPv6ネットワークです。
  2. IPv6パケットをIPv4パケットの中へ格納する 外側のIPv4ヘッダーには、トンネル入口と出口のIPv4アドレスを使用します。
  3. IPv4専用ネットワークを通過する 途中のルーターは外側のIPv4ヘッダーを見て転送します。
  4. 出口装置が外側のIPv4ヘッダーを取り外す 元のIPv6パケットを取り出し、IPv6ネットワークへ転送します。

トンネル設計で注意すること

MTUと断片化

外側ヘッダーが追加されるため、実際に運べる内側パケットのサイズが小さくなります。 大きなパケットだけ失敗する場合はMTUやPath MTU Discoveryを確認します。

経路の見えにくさ

内側のIPv6経路と外側のIPv4経路を分けて確認する必要があります。 どちらか一方だけ正常でもトンネル通信は成立しません。

障害点の増加

トンネル入口・出口、下位のIPv4網、上位のIPv6経路、フィルタリングなど、確認対象が増えます。

監視とセキュリティ

カプセル化された通信を監視機器やファイアウォールがどのように扱うか確認します。 トンネルの存在を資産・構成管理へ記録します。

NAT64・DNS64による変換

プロトコル変換は、IPv6専用ネットワークとIPv4専用ネットワークの境界で、 パケットのアドレスやヘッダーを変換する方法です。

代表例が、NAT64とDNS64を組み合わせた構成です。 IPv6専用クライアントからIPv4専用サーバーへ、ホスト名を使って接続できるようにします。

IPv6専用クライアントからIPv4専用サーバーへ接続する流れ

IPv6 only クライアント AAAAを問い合わせる
DNS64 Aレコードを基に合成AAAAを返す
NAT64 IPv6パケットをIPv4へ変換
💻 IPv6クライアント 2001:db8:10::10
🔄 NAT64 IPv6 ↔ IPv4変換
🗄️ IPv4サーバー 192.0.2.80

DNS64の役割

IPv4専用サーバーにはAレコードしか存在しません。 IPv6専用クライアントがAAAAレコードを必要とすると、DNS64はAレコードを基に、 NAT64で使用するIPv6プレフィックスを付けた合成AAAAレコードを生成します。

考え方を示す簡略例
IPv4サーバーのAレコード
example.test.  A     192.0.2.80

DNS64が返す合成AAAAレコードのイメージ
example.test.  AAAA  64:ff9b::c000:250

上の末尾c000:0250は、IPv4アドレス192.0.2.80を16進数で表した部分です。 実際に使用するNAT64プレフィックスは環境設計によって決まります。

NAT64の役割

IPv6クライアントは、合成されたIPv6アドレス宛てにパケットを送ります。 NAT64装置は宛先に埋め込まれたIPv4アドレスを読み取り、IPv4パケットへ変換してサーバーへ送ります。 戻りのIPv4パケットは、対応するIPv6パケットへ変換してクライアントへ返します。

DNS64は、IPv4アドレスを直接入力した通信には合成AAAAレコードを作れません。

アプリケーションがホスト名ではなくIPv4リテラルを使用する場合、 NAT64+DNS64だけでは動作しないことがあります。アプリケーションの仕様や464XLATなどを確認します。

NAT64・DNS64で確認する項目

  • DNS64がAレコードを取得し、正しい合成AAAAを返しているか
  • NAT64プレフィックスへのIPv6経路が存在するか
  • NAT64装置に変換セッションが作成されているか
  • NAT64装置からIPv4サーバーまでの経路・戻り経路があるか
  • IPv6側とIPv4側のファイアウォールポリシーが許可されているか
  • アプリケーションがIPv4アドレスを直接埋め込んでいないか

464XLATの基本

464XLATは、IPv6専用ネットワーク上で、IPv4通信を必要とするアプリケーションを動かすための変換方式です。 端末側または端末に近い場所で行う変換と、ネットワーク側のNAT64を組み合わせます。

464XLATの構成イメージ

📱 IPv4アプリ IPv4パケットを生成
🔁 CLAT IPv4 → IPv6へ変換
☁️ IPv6ネットワーク IPv6として転送
🔄 PLAT/NAT64 IPv6 → IPv4へ変換
🗄️ IPv4サーバー 既存IPv4サービス
構成要素 役割
CLAT 端末側でIPv4パケットをIPv6パケットへ変換する
IPv6ネットワーク 変換後のIPv6パケットをネイティブに運ぶ
PLAT/NAT64 ネットワーク側でIPv6パケットをIPv4へ変換する

464XLATは、特にIPv6中心のアクセスネットワークでIPv4サービスを継続利用する考え方として使われます。 一般的な社内LANで必ず導入する方式ではなく、端末・回線・事業者サービスの対応状況を踏まえて選定します。

共存方式の比較と選び方

比較項目 デュアルスタック トンネリング プロトコル変換
端末の対応 原則としてIPv4・IPv6の両方が必要 トンネル終端が両方へ対応 端末は片方だけでも構成可能
パケットの扱い IPv4とIPv6を別々に転送 内側パケットを外側パケットで包む 境界でヘッダー・アドレスを変換
運用負荷 2系統の設計・監視が必要 内側・外側・終端を確認する 変換・DNS・セッションを確認する
主な利点 ネイティブ通信で分かりやすい 非対応区間を越えて接続できる IPv4専用とIPv6専用を接続できる
主な注意点 セキュリティ設定の二重管理 MTU・障害点・可視性 アプリ互換性・DNS依存・ログ追跡
向いている場面 多くの企業LAN・サーバー公開環境 途中に非対応ネットワークがある接続 IPv6専用網からIPv4サービスを利用する環境

基本的な判断順序

  1. 通信する両端がIPv6へ対応できるか確認する 両端と経路が対応できるなら、ネイティブIPv6またはデュアルスタックを検討します。
  2. 途中のネットワークだけがIPv6へ対応していないか確認する 両端はIPv6対応だが中間区間がIPv4専用なら、トンネルが候補になります。
  3. 片方がIPv4専用、もう片方がIPv6専用か確認する 直接同じプロトコルを使えない場合は、NAT64などの変換方式を検討します。
  4. 運用・セキュリティ・障害対応まで比較する 導入できるかだけでなく、監視、ログ、試験、切り戻し、担当者の運用負荷を確認します。

方式の名前から選ぶのではなく、「どの区間が、どのIPバージョンへ対応しているか」を構成図へ書き込んで判断します。

設計・運用で確認するポイント

1.対応状況の棚卸し

  • OS・NIC・ネットワーク機器
  • FW・VPN・LB・プロキシ
  • 業務アプリ・監視ツール
  • ISP・クラウド・外部接続先

2.アドレス設計

  • IPv4とIPv6のセグメント対応
  • IPv6プレフィックスと払い出し方法
  • 固定設定・SLAAC・DHCPv6の役割
  • 管理アドレスと利用者アドレス

3.ルーティング

  • IPv4・IPv6のデフォルトルート
  • 動的ルーティングの対応
  • 戻り経路と経路非対称
  • トンネル・NAT64プレフィックスの経路

4.DNS

  • A・AAAAレコードの登録
  • 応答先サービスの到達性
  • DNS64の利用範囲
  • キャッシュ・TTL・切り戻し

5.セキュリティ

  • IPv4・IPv6双方のACL/FW
  • ICMPv6の必要通信
  • トンネル・変換通信の検査
  • ログへ記録される変換前後アドレス

6.監視・障害対応

  • IPv4・IPv6別の死活監視
  • 経路・DNS・セッション監視
  • パケットキャプチャー手順
  • 切り分け用コマンドと報告様式

IPv6を有効にする前の試験項目例

試験分類 確認内容
IPv4継続性 既存のIPv4通信が導入前と同様に利用できる
IPv6基本通信 同一セグメント、ゲートウェイ、外部宛てのIPv6通信ができる
名前解決 A・AAAAの応答と、実際に選ばれる接続先を確認する
セキュリティ IPv4とIPv6の許可・拒否が設計どおりである
障害試験 片方の経路、DNS、トンネル、変換装置を停止したときの動作を確認する
監視・ログ IPv4・IPv6別に障害検知でき、送信元・宛先を追跡できる

IPv4・IPv6共存環境の確認コマンド

共存環境では、IPv4とIPv6を明示的に分けて確認することが重要です。 コマンドの構文や出力はOS・機種・バージョンによって異なります。

Windowsでの確認

アドレス・ゲートウェイ・DNS

ipconfig /all

IPv4アドレス、IPv6アドレス、リンクローカルアドレス、DNSサーバーなどを確認します。

ルーティングテーブル

route print -4
route print -6

IPv4とIPv6のデフォルトルートを分けて確認します。

プロトコルを指定した疎通

ping -4 example.com
ping -6 example.com

同じホスト名に対し、IPv4とIPv6を個別に試験します。

DNSレコード

nslookup -type=A example.com
nslookup -type=AAAA example.com

A・AAAAの登録有無と応答値を確認します。

Linuxでの確認

IPアドレス

ip -4 address show
ip -6 address show

ルーティングテーブル

ip -4 route show
ip -6 route show

疎通確認

ping -4 example.com
ping -6 example.com

DNSレコード

dig example.com A
dig example.com AAAA

Cisco IOS系での確認例

IPv4・IPv6のインターフェースと経路
Router# show ip interface brief
Router# show ipv6 interface brief
Router# show ip route
Router# show ipv6 route
IPv4・IPv6の疎通確認
Router# ping 192.0.2.80
Router# ping 2001:db8:80::80
Router# traceroute 192.0.2.80
Router# traceroute 2001:db8:80::80
IPv6インターフェースの詳細
Router# show ipv6 interface GigabitEthernet0/0

GigabitEthernet0/0 is up, line protocol is up
  IPv6 is enabled, link-local address is FE80::1
  Global unicast address(es):
    2001:DB8:10::1, subnet is 2001:DB8:10::/64
  Joined group address(es):
    FF02::1
    FF02::2

確認コマンドは「アドレス → 経路 → DNS → 疎通 → セキュリティ → パケット」の順に使うと整理しやすくなります。

障害切り分けの進め方

共存環境の障害対応では、最初に「IPv4の問題か、IPv6の問題か、両方の問題か」を分けます。

  1. 実際に使用しているIPバージョンを確認する A・AAAAレコード、接続先アドレス、パケットキャプチャー、セッション情報を確認します。
  2. IPv4とIPv6の疎通を個別に試験する ping -4ping -6を使い、片方だけ失敗していないか確認します。
  3. 端末のアドレスとデフォルトルートを確認する IPv4アドレス、IPv6グローバルアドレス、リンクローカルアドレス、双方の経路を確認します。
  4. 経路と戻り経路をプロトコル別に確認する IPv4ルーティングテーブルとIPv6ルーティングテーブルは別々に確認します。
  5. ACL・FW・NAT・トンネルを確認する 片方のプロトコルだけ許可設定が不足していないか、トンネルや変換セッションが成立しているか確認します。
  6. DNSとアプリケーションの動作を確認する A・AAAA・合成AAAA、IPv4リテラル、プロキシ、ロードバランサーなどを確認します。
  7. パケットキャプチャーで失敗地点を特定する IPv4はARP・ICMP・IPv4、IPv6はNDP・ICMPv6・IPv6を分けて追跡します。

症状から考える原因候補

IPv6だけ失敗 IPv6グローバルアドレス未取得、IPv6デフォルトルートなし、RA受信不可、IPv6経路不足、 IPv6 ACL/FW未許可、AAAAの宛先サービス未稼働などを確認します。
IPv4だけ失敗 DHCPv4・IPv4固定設定、IPv4デフォルトルート、ARP、NAT44、IPv4 ACL/FW、 IPv4アドレス枯渇や変換セッションを確認します。
名前だけ失敗 A・AAAAレコード、DNSサーバー到達性、DNS64の合成、キャッシュ、検索ドメインを確認します。 IPアドレス指定で成功するか比較します。
大きな通信だけ失敗 トンネルのオーバーヘッド、インターフェースMTU、Path MTU Discovery、 ICMP/ICMPv6の必要メッセージが遮断されていないか確認します。
IPv4アドレス直指定だけ失敗 IPv6専用クライアントでDNS64を利用している場合、IPv4リテラルは合成対象になりません。 アプリケーション対応、CLAT/464XLAT、プロキシ利用を確認します。
両方のpingは成功 TCP/UDPポート、TLS、アプリケーション、プロキシ、ロードバランサー、サーバー待受け、 DNSが返す宛先と実際のサービス状態を確認します。

パケットキャプチャーで見るポイント

確認対象 IPv4 IPv6
隣接解決 ARP Request/Reply Neighbor Solicitation/Advertisement
疎通確認 ICMP Echo ICMPv6 Echo
名前解決 Aレコード AAAAレコード・DNS64合成
経路制御 IPv4ヘッダーの送信元・宛先 IPv6ヘッダーの送信元・宛先
変換・トンネル 外側IPv4ヘッダー、変換後IPv4 内側IPv6、変換前IPv6

調査結果の報告例

確認結果: 対象PCはIPv4アドレス192.0.2.10/24とIPv6アドレス2001:db8:10::10/64を保持しています。 IPv4デフォルトルートとIPv4疎通は正常ですが、IPv6デフォルトルートが存在せず、 ping -6は送信前に失敗しました。AAAAレコードは正常に応答しているため、 IPv6のルーター広告受信、L3インターフェース設定、IPv6経路を確認します。

IPv4とIPv6の共存に関するよくある勘違い

IPv6を有効にすればIPv4通信もIPv6へ自動変換される

デュアルスタックではIPv4とIPv6を別々に動かします。 異なるプロトコル同士を接続するにはNAT64などの変換機能が必要です。

IPv4で通信できればIPv6も正常である

アドレス、デフォルトルート、DNS、ACL、FWはIPv4とIPv6で別に確認します。 片方だけ正常なことは珍しくありません。

AAAAレコードを登録すればIPv6対応は完了する

AAAAが返す宛先でサービスが待ち受け、IPv6経路とFWポリシーが正常である必要があります。 到達不能なAAAAは利用者の接続遅延や失敗の原因になります。

IPv6ではファイアウォール対策が不要である

IPv6でもアクセス制御と監視は必要です。 IPv4側だけを制御し、IPv6側が許可されたままになっていないか確認します。

トンネルは通常のルーティングと同じ場所だけ見ればよい

内側のIP経路、外側のIP経路、トンネル終端、MTU、フィルタリングを確認する必要があります。

共存環境では、使用中のIPバージョンを特定してから切り分ける

A・AAAA、接続先アドレス、ルーティングテーブル、パケットキャプチャーを使い、 IPv4とIPv6を分離して確認することが基本です。

理解度チェック

次の6問に答えてください。方式名だけでなく、どこでどのような処理を行うかを考えましょう。

問題1.デュアルスタックの説明として最も適切なものはどれですか。

  1. IPv6パケットを必ずIPv4へ変換する
  2. IPv4とIPv6の両方を同じ端末やルーターで動作させる
  3. IPv4ネットワークを停止してIPv6だけにする
  4. IPv6パケットを暗号化する
解答を見る
正解:B

デュアルスタックは、IPv4とIPv6の両方を実装・有効化し、通信相手に応じて使い分ける方式です。

問題2.IPv6 over IPv4トンネルで、途中のIPv4ルーターが転送判断に使う情報はどれですか。

  1. 内側IPv6ヘッダーの宛先
  2. 外側IPv4ヘッダーの宛先
  3. Ethernetの送信元だけ
  4. DNSのAAAAレコード
解答を見る
正解:B

IPv4網の途中では、外側に追加されたIPv4ヘッダーを基にトンネル出口まで転送します。

問題3.DNS64の主な役割は何ですか。

  1. IPv6ルーティングテーブルを配布する
  2. IPv4専用サーバーのAレコードを基に合成AAAAレコードを生成する
  3. IPv6パケットを暗号化する
  4. IPv4アドレスをDHCPで配布する
解答を見る
正解:B

DNS64はAレコードを参照し、NAT64へ到達するためのIPv6アドレスを合成してIPv6クライアントへ返します。

問題4.IPv4通信は成功し、IPv6通信だけ失敗しています。最初に分けて確認すべき情報を3つ挙げてください。

解答例を見る
  • 端末がIPv6グローバルアドレスを取得しているか
  • IPv6デフォルトルートが存在するか
  • IPv6用ACL・ファイアウォールが許可されているか

あわせてAAAAレコード、IPv6経路、RA、NDPも確認します。

問題5.NAT64+DNS64環境で、IPv4アドレスを直接入力するアプリケーションが失敗する理由は何ですか。

解答を見る

DNS問い合わせを行わないため、DNS64が合成AAAAレコードを生成できないからです。 アプリケーションのIPv6対応、プロキシ、CLAT/464XLATなどを検討します。

問題6.トンネル経由で小さいpingは成功しますが、大きなデータ転送だけ失敗します。疑うべき項目は何ですか。

解答を見る

トンネルヘッダーによるMTU低下、Path MTU Discovery、ICMP/ICMPv6の必要メッセージ遮断、 MSS調整などを確認します。

実践演習:3つの共存構成を判断しよう

次の要件に対し、デュアルスタック、トンネリング、プロトコル変換のどれが適しているか考えてください。 実務では複数方式を組み合わせる場合もあります。

演習1.社内PC、ルーター、WebサーバーがIPv4とIPv6の両方へ対応しています。IPv4サービスを残しながらIPv6を段階導入したい場合、基本方式は何ですか。

選択する方式:__________
理由:____________________________
解答例を見る

デュアルスタックが基本です。

両端と経路がIPv4・IPv6へ対応できるため、両方をネイティブに動作させ、 既存IPv4を維持しながらIPv6を追加できます。

演習2.拠点Aと拠点BはIPv6対応ですが、拠点間WANはIPv4しか利用できません。両拠点のIPv6セグメントを接続したい場合、何を検討しますか。

選択する方式:__________
確認項目:__________________________
解答例を見る

IPv6 over IPv4トンネルを検討します。

トンネル入口・出口のIPv4到達性、内側IPv6経路、MTU、FWでのカプセル化通信許可、 冗長化と監視方法を確認します。

演習3.新しい端末セグメントはIPv6専用ですが、接続先の業務サーバーはIPv4専用です。端末はホスト名でサーバーへ接続します。何を検討しますか。

選択する方式:__________
必要な構成要素:_______________________
解答例を見る

NAT64+DNS64を検討します。

DNS64がAレコードから合成AAAAを返し、NAT64がIPv6とIPv4を変換します。 IPv4リテラルの利用、アプリケーション互換性、変換セッション、FW、ログ追跡も確認します。

追加課題:切り分け手順を作る

デュアルスタックPCで「Webサイトを開くと時間がかかり、しばらくすると表示される」という申告がありました。 確認手順を5項目以上書いてください。

1._______________________________
2._______________________________
3._______________________________
4._______________________________
5._______________________________
解答例を見る
  1. AレコードとAAAAレコードを確認する
  2. ping -4ping -6を比較する
  3. IPv6アドレスとIPv6デフォルトルートを確認する
  4. IPv6宛てtracerouteで失敗地点を確認する
  5. IPv6用FW・ACLとサーバー待受けを確認する
  6. パケットキャプチャーでIPv6接続失敗後にIPv4へ切り替わっていないか確認する

自分の言葉で説明する課題

顧客から「IPv6を導入したら、IPv4はすぐに停止できますか?」と質問されました。 技術に詳しくない相手へ、1分程度で説明してください。

IPv6を導入しても、________________________________。
説明例を見る

IPv6を導入しても、既存の端末やサーバー、外部サービスがすべてIPv6へ対応しているとは限らないため、 IPv4をすぐに停止できるとは限りません。通常はIPv4とIPv6を同時に動かすデュアルスタックなどを使い、 接続先と業務影響を確認しながら段階的に移行します。 導入時は、アドレスだけでなく、ルーティング、DNS、ファイアウォール、監視も両方について試験します。

説明では、一斉切り替えではないこと、既存IPv4を残しながら段階移行すること、 通信・セキュリティ・運用を両方確認することを含めましょう。

まとめ

  • IPv4とIPv6は異なるプロトコルであり、片方専用の機器同士はそのままでは直接通信できない
  • 共存方式は、デュアルスタック、トンネリング、プロトコル変換の3つに大別できる
  • デュアルスタックでは、IPv4とIPv6のアドレス・経路・セキュリティを別々に管理する
  • DNSのAレコードはIPv4、AAAAレコードはIPv6の宛先を示す
  • トンネリングは、内側パケットを別のIPパケットで包み、非対応区間を越えて運ぶ
  • トンネルでは、内側経路、外側経路、終端、MTU、FWを確認する
  • NAT64はIPv6とIPv4を変換し、DNS64はAレコードから合成AAAAを生成する
  • 464XLATは、IPv6ネットワーク上でIPv4アプリケーションを継続利用するための方式である
  • 障害対応では、ping -4ping -6、AとAAAA、IPv4・IPv6経路を分けて確認する
  • IPv6導入では、DNS、ACL、FW、監視、ログ、試験、切り戻しまで設計する

共存環境を理解するポイントは、構成図へ「どの区間がIPv4か、IPv6か、両方か」と 「どこでカプセル化・変換するか」を書き込むことです。

次の記事:第2章 実践演習|ルーティング・OSPF

第2章では、ルーティングテーブル、最長一致、スタティックルート、デフォルトルート、 動的ルーティング、OSPF、IPv6、IPv4とIPv6の共存を学びました。

次は、構成図、ルーティングテーブル、OSPFコスト、IPv4・IPv6の設定を読み取り、 通信経路と障害原因を判断する実践演習に取り組みます。

参考資料

コマンド構文、対応する移行方式、初期値、制限事項は、OS・機種・ソフトウェアバージョン・サービスによって異なります。 本番環境へ導入する前に、対象製品と回線サービスの公式ドキュメントを確認してください。

ネットワーク中級編 20/全50記事

中級編では、スイッチング、ルーティング、ネットワークサービス、セキュリティ、 パケット解析、障害切り分け、実務で必要な資料の読み方を順番に学びます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次