この記事は、 「ネットワーク中級編|構築・検証・障害切り分けを身につける」 の第10回です。
前回までに学んだSTP・RSTPを土台として、複数の物理リンクを有効活用しながら、 帯域と冗長性を高めるEtherChannelの仕組みを学びます。
EtherChannelとは?仕組み・LACP/PAgP・負荷分散・設定確認を図解
EtherChannelは、複数のEthernetリンクを束ねて、1本の論理リンクとして扱う技術です。 この記事では、STPとの関係、帯域と冗長性、LACP・PAgP・onモード、 フロー単位の負荷分散、Cisco IOSの設定・確認コマンド、障害切り分けまで順番に解説します。
2台のスイッチを2本のケーブルで接続すれば、単純に2本分の帯域を使えるように見えます。 しかし、通常のレイヤー2接続ではループを防ぐためにSTPが片方のリンクをブロックし、 平常時に使える経路は1本だけになることがあります。
この問題を解決する代表的な技術が、EtherChannelです。 複数の物理ポートを1つのPort-channelへ束ねることで、STPからは1本の論理リンクとして見せながら、 内部では複数のメンバーリンクへ通信を分散します。
この記事を読み終えるとできること
- EtherChannelの目的と基本構造を説明できる
- 通常の冗長リンクとEtherChannelの違いを説明できる
- LACP・PAgP・onモードの違いを判断できる
- active/passiveなどの成立条件を判断できる
- 負荷分散がフロー単位で行われる理由を説明できる
show etherchannel summaryの出力を読み取れる- メンバーポートが束ねられない原因を切り分けられる
- リンク障害時の通信継続動作を説明できる
EtherChannelとは何か
EtherChannelとは、複数の物理Ethernetリンクを束ね、 1本の論理リンクとして転送・管理する技術です。
Cisco製品では一般にEtherChannelと呼ばれ、 論理インターフェースはPort-channelとして表示・設定されます。 一般的な技術名としては、リンクアグリゲーションやLink Aggregationと呼ばれます。
4本の物理リンクをPort-channel 1へ束ねる例
管理者は、VLANやトランクなどの主要な設定をPort-channelへ適用できます。 STPも、正常に形成されたEtherChannelを1つの論理ポートとして扱います。
物理リンクが複数本あることと、EtherChannelが正常に形成されていることは別です。
ケーブルがリンクアップしていても、両端のモードやVLAN設定が一致していなければ、 メンバーポートがPort-channelへ参加できないことがあります。
なぜEtherChannelが必要なのか
通常の冗長リンクではSTPが片方を止める
SW1とSW2を2本の独立したレイヤー2リンクで接続すると、同じVLANに対してループ経路ができます。 STPはループを防ぐため、通常はどちらか一方をForwarding、もう一方をDiscardingまたはBlocking相当にします。
| 構成 | STPからの見え方 | 平常時のリンク利用 | 主な目的 |
|---|---|---|---|
| 独立した2本のリンク | 別々の2ポート | 1本が転送、1本が待機になりやすい | 経路冗長化 |
| EtherChannelで束ねた2本 | 1つのPort-channel | 複数のメンバーリンクを利用できる | 帯域拡張+冗長化 |
STPが悪いわけではありません。独立した複数リンクをすべて転送状態にすると、 ブロードキャストストームやMACアドレスの不安定化を引き起こす可能性があります。 EtherChannelは、複数リンクを1本の論理リンクにまとめることで、ループを作らずにリンクを活用します。
複数の物理リンクを1本の論理リンクとして扱う
STPから見たEtherChannel
EtherChannelが正常に形成されると、MACアドレステーブル、STP、トランク、ルーティングなどの多くの機能から、 物理ポートの集合ではなくPort-channelという論理インターフェースとして見えます。
- MACアドレスはPort-channel上で学習される
- STPのポート役割・コストはPort-channel単位で確認する
- トランクの許可VLANはPort-channelの設定と整合させる
- レイヤー3 EtherChannelではIPアドレスをPort-channelへ設定する
メンバーポートごとに設定内容が異なると、チャネルへ参加できなかったり、 一部ポートがsuspended状態になったりすることがあります。 物理ポートとPort-channelの設定を必ずセットで確認してください。
EtherChannelの4つのメリット
帯域を拡張
複数フローを複数のメンバーリンクへ分散し、論理リンク全体の処理能力を高めます。
冗長性を確保
1本のメンバーリンクが故障しても、残りのリンクで通信を継続できます。
STPと連携
複数リンクを1つの論理ポートとして扱い、平常時からリンクを活用できます。
管理を簡素化
論理インターフェース単位でVLANやルーティング設定を管理できます。
「4本束ねれば1通信が4倍速い」とは限らない
EtherChannelの帯域増加は、複数の通信フローを分散できることで得られます。 一般的な負荷分散では、同じ送信元・宛先などを持つ1つのフローは同じメンバーリンクへ割り当てられます。
例:1Gbpsリンクを4本束ねた場合、Port-channel全体では最大4Gbps相当の集約帯域を期待できます。 ただし、1台のPCから1台のサーバーへの単一フローが必ず4Gbpsで転送されるわけではなく、 通常は選択された1本の1Gbpsリンクを使用します。
LACP・PAgP・onモードの違い
EtherChannelを形成する方法は、大きく分けて動的ネゴシエーションと静的設定があります。 Cisco IOS系では、代表的にLACP、PAgP、onモードを使用します。
標準方式
LACPメッセージを交換し、相手と条件を確認してPort-channelを形成します。
モードはactiveとpassiveです。
Cisco独自方式
PAgPメッセージを交換して形成します。
モードはdesirableとautoです。
静的方式
ネゴシエーションを行わず、管理者の設定だけで強制的に束ねます。 両端の設定不一致を自動検出しにくいため注意が必要です。
LACPの成立条件
| SW1 | SW2 | 成立 | 理由 |
|---|---|---|---|
| active | active | 成立 | 両側がLACPメッセージを積極的に送信する |
| active | passive | 成立 | active側が開始し、passive側が応答する |
| passive | passive | 不成立 | 両側とも相手からの開始を待つ |
PAgPの成立条件
| SW1 | SW2 | 成立 | 理由 |
|---|---|---|---|
| desirable | desirable | 成立 | 両側がPAgPを積極的に開始する |
| desirable | auto | 成立 | desirable側が開始し、auto側が応答する |
| auto | auto | 不成立 | 両側とも相手からの開始を待つ |
新規設計では、対応機器同士であればLACPを第一候補にすると整理しやすいでしょう。
LACPは標準化された方式で、異なるベンダー間でも採用しやすいからです。 ただし、実際の対応機能や制限は機種・OS・ライセンスごとに確認してください。
LACPとPAgPは相互にネゴシエーションできません。
また、onとLACP/PAgPの動的モードを組み合わせる構成も避けます。
両端で同じ方式を使用してください。
メンバーポートを束ねるための条件
EtherChannelへ参加する物理ポートは、同じ論理リンクとして扱えるように、主要な属性を一致させる必要があります。
物理条件
- 対応するインターフェース種別
- 速度の整合
- duplexなどの整合
- リンク状態の確認
レイヤー2条件
- access/trunkモード
- アクセスポートのVLAN
- 許可VLAN
- ネイティブVLAN
チャネル条件
- LACP/PAgP/onの方式
- 互換性のあるモード
- 同じ論理接続先
- 機種ごとの最大本数・制限
設定はPort-channel単位で考える
Cisco IOSでは、channel-groupコマンドで物理ポートを束ねると、
Port-channelインターフェースが作成されます。
VLANやトランクなどの論理設定は、Port-channel側を基準に管理すると不一致を防ぎやすくなります。
既存ポートを束ねる作業では、投入前に各物理ポートのrunning-configを比較してください。 片方だけ許可VLANが異なる、片方だけshutdownされている、片方だけaccessポートになっているといった差分が、 EtherChannel形成失敗の典型原因です。
負荷分散の仕組み
EtherChannelは、一般にフレームを単純な順番で1本目、2本目、3本目へ送るのではありません。 送信元・宛先のMACアドレス、IPアドレス、ポート番号などを基にハッシュ計算し、使用するメンバーリンクを選択します。
フローごとにメンバーリンクを選択するイメージ
なぜパケット単位で交互に送らないのか
1つの通信のパケットを複数リンクへ細かくばらまくと、リンクごとの遅延差によって到着順序が入れ替わる可能性があります。 そのため、一般的なEtherChannelでは同じフローを同じリンクへ割り当て、パケット順序を保ちやすくします。
負荷が均等になるとは限らない
ハッシュ計算の結果は、通信パターンに依存します。 通信元や通信先が少ない環境では、複数フローが同じメンバーリンクへ偏ることがあります。
| 負荷分散キーの例 | 判断に使う情報 | 向いている通信傾向の例 |
|---|---|---|
| src-mac | 送信元MACアドレス | 多数の送信元端末が存在する |
| dst-mac | 宛先MACアドレス | 多数の宛先が存在する |
| src-dst-ip | 送信元・宛先IPアドレス | 多数のIP通信ペアが存在する |
| src-dst-port | 送信元・宛先L4ポート | 同一IP間でも複数セッションが存在する |
利用できる負荷分散方式、既定値、設定単位は機種・OSによって異なります。
実機ではshow etherchannel load-balanceや製品ドキュメントで確認してください。
Cisco IOSでの設定例
ここでは、SW1とSW2のGi1/0/1〜2をLACPで束ね、 VLAN 10・20・30を通すレイヤー2トランクEtherChannelを作成します。
設定例の構成
SW1の設定
SW1# configure terminal
SW1(config)# interface range GigabitEthernet1/0/1 - 2
SW1(config-if-range)# channel-group 1 mode active
SW1(config-if-range)# no shutdown
SW1(config-if-range)# exit
SW1(config)# interface Port-channel1
SW1(config-if)# switchport mode trunk
SW1(config-if)# switchport trunk allowed vlan 10,20,30
SW1(config-if)# no shutdown
SW1(config-if)# end
SW2の設定
SW2# configure terminal
SW2(config)# interface range GigabitEthernet1/0/1 - 2
SW2(config-if-range)# channel-group 1 mode active
SW2(config-if-range)# no shutdown
SW2(config-if-range)# exit
SW2(config)# interface Port-channel1
SW2(config-if)# switchport mode trunk
SW2(config-if)# switchport trunk allowed vlan 10,20,30
SW2(config-if)# no shutdown
SW2(config-if)# end
チャネルグループ番号は、ローカル装置内でPort-channelを識別する番号です。
対向装置と同じ番号にそろえると構成管理しやすいですが、 EtherChannel成立のために必ず同じ番号である必要があるとは限りません。 実務では設計・運用上の分かりやすさを優先して、通常は同じ番号へそろえます。
passiveを使用する場合
一方をactive、もう一方をpassiveにしてもLACPは成立します。
ただし、両端をpassiveにすると、どちらも開始しないため成立しません。
SW1(config-if-range)# channel-group 1 mode active
SW2(config-if-range)# channel-group 1 mode passive
レイヤー3 EtherChannelの考え方
ルーテッドポートとして使用する場合は、物理ポートとPort-channelをレイヤー3化し、 IPアドレスをPort-channelへ設定します。対応可否やコマンドは機種により異なります。
SW1(config)# interface range GigabitEthernet1/0/1 - 2
SW1(config-if-range)# no switchport
SW1(config-if-range)# channel-group 10 mode active
SW1(config-if-range)# exit
SW1(config)# interface Port-channel10
SW1(config-if)# no switchport
SW1(config-if)# ip address 192.0.2.1 255.255.255.252
SW1(config-if)# no shutdown
確認コマンドと出力の読み方
show etherchannel summary
EtherChannelの形成状態を確認する代表的なコマンドです。
SW1# show etherchannel summary
Group Port-channel Protocol Ports
------+-------------+-----------+-----------------------------------
1 Po1(SU) LACP Gi1/0/1(P) Gi1/0/2(P)
- Po1
- Port-channel 1を示します。
- S
- レイヤー2 EtherChannelであることを示す代表的なフラグです。
- U
- Port-channelが使用中(in use)であることを示します。
- LACP
- LACPを使用して形成していることを示します。
- P
- メンバーポートが正常にPort-channelへ束ねられていることを示します。
正常例では、Port-channel側がSU、各メンバーポートがPになっていることを確認します。
ただし、フラグの表示や意味はOS・バージョンにより差があるため、コマンド内の凡例も確認してください。
異常時に見かける代表的な状態
| 表示例 | 意味の例 | 確認すること |
|---|---|---|
I |
stand-aloneとして動作している | 対向モード、プロトコル、物理接続 |
s |
suspendedされている | VLAN・トランク・速度などの不一致 |
D |
ポートまたはPort-channelがdown | ケーブル、shutdown、光レベル、対向状態 |
w |
集約待ちの状態 | LACPネゴシエーションと接続先 |
そのほかの確認コマンド
Port-channel詳細
帯域、入出力、エラー、line protocolなどを確認します。
LACP隣接情報
対向装置のSystem ID、ポート番号、状態などを確認します。
EtherChannel詳細
メンバーポート、プロトコル、状態、形成理由を詳しく確認します。
負荷分散方式
現在のハッシュ方式を確認します。
トランク状態
Port-channelのネイティブVLANや許可VLANを確認します。
STP状態
Port-channelの役割、状態、コストを確認します。
MACアドレステーブルもPort-channelで確認する
SW1# show mac address-table dynamic interface Port-channel1
Vlan Mac Address Type Ports
---- ----------- -------- -----
10 0011.2233.4455 DYNAMIC Po1
20 00aa.bbcc.ddee DYNAMIC Po1
対向スイッチ側に存在する端末のMACアドレスは、個別のGi1/0/1やGi1/0/2ではなく、 論理インターフェースPo1として表示されることがあります。
メンバーリンク障害時の動作
EtherChannelのメンバーリンクが1本故障しても、残りのリンクが正常であれば、 Port-channel自体はup状態を維持し、通信を継続できます。
2本へフローを分散
リンクダウンを検出
残りのリンクへ割り当て
帯域は減少
障害時に変わるもの
- 利用できる合計帯域が減少する
- ハッシュ結果に基づくメンバーリンクの割り当てが変わる
- 故障したリンクを使用していた通信で、一時的なパケットロスが発生する可能性がある
- 残りのリンクへ負荷が集中する
「1本故障しても通信継続できる」ことと、「性能影響がない」ことは同じではありません。 2本構成で1本が故障すれば、利用可能な物理帯域は半分になります。 平常時だけでなく、縮退時の帯域で業務通信を処理できるか設計段階で確認します。
障害切り分けの進め方
EtherChannel障害では、Port-channelだけを見るのではなく、 論理インターフェース、メンバーポート、対向装置の3つを対応付けて確認します。
- 物理リンクの状態を確認する ケーブル、光モジュール、リンクアップ、shutdown、入力エラーを確認します。
- show etherchannel summaryを確認する Port-channelがupか、各メンバーがPになっているかを確認します。
- 両端の形成方式とモードを比較する LACP/PAgP/on、active/passiveなどを確認します。
- メンバーポートの設定差分を比較する speed、duplex、access/trunk、VLAN、許可VLAN、ネイティブVLANを確認します。
- Port-channel側の設定を確認する 物理ポートと論理ポートの設定が矛盾していないか確認します。
- LACPまたはPAgPの隣接情報を確認する 対向装置・対向ポートを正しく認識しているか確認します。
- STP・トランク・MAC学習を確認する PoがForwardingか、必要なVLANが通るか、MACアドレスを学習しているか確認します。
- ログと変更履歴を確認する いつから、どのポートが、どの理由で外れたのかを確認します。
症状:passive同士
両端ともLACPの開始を待つため、チャネルが形成されません。 少なくとも一方をactiveへ変更します。
症状:1本だけsuspended
そのポートだけVLAN、トランク、速度などが異なる可能性があります。 正常メンバーとの設定差分を比較します。
症状:Poはupだが特定VLANだけ疎通不可
Port-channelの許可VLAN、ネイティブVLAN、STP状態を確認します。
症状:通信が片方向・不安定
片側だけon、誤配線、対向が別装置、設定不一致などを疑います。 LLDP/CDPと配線表も確認します。
調査結果の報告例
確認結果:Port-channel 1はup状態ですが、Gi1/0/2がsuspendedとなり、 Gi1/0/1のみがメンバーとして動作しています。両端の設定を比較したところ、 SW2のGi1/0/2だけ許可VLANが10,20で、Port-channel 1の10,20,30と不一致でした。 VLAN設定不一致がメンバー参加失敗の原因と判断します。 設定修正後にGi1/0/2がPとなること、Po1の帯域、VLAN 30の疎通を確認します。
設計・構築時の判断ポイント
必要帯域を決める
平常時の平均・最大通信量だけでなく、1本故障した縮退時にも処理できる本数を検討します。
単一フローの上限を理解する
大容量バックアップなど単一フロー中心の場合、リンクを増やしても1フローの速度は上がらないことがあります。
物理経路を分散する
複数本が同じケーブル束、同じパッチパネル、同じモジュールへ集中すると、共通障害で同時断する可能性があります。
対向装置の構成を確認する
基本的なEtherChannelは2つの論理装置間で形成します。別々のスイッチへまたがる場合は、スタック、VSS、vPC、MLAGなどの対応が必要です。
運用監視を設計する
Port-channelがupでも、1本が外れて縮退していることがあります。論理IFと各メンバーの両方を監視します。
変更・切り戻し手順を用意する
稼働中リンクを束ね直す作業では通信断の可能性があります。片側ずつの投入順序、確認、切り戻しを事前に定義します。
EtherChannelと機器冗長化は別の課題
1台のSW1と1台のSW2間で4本を束ねても、SW1本体が停止すれば4本すべて利用できません。 EtherChannelは主にリンクの帯域・冗長性を高める技術であり、装置冗長化そのものではありません。
高可用性を設計する場合は、リンク障害だけでなく、スイッチ本体、電源、モジュール、配線経路、対向装置、 STPやゲートウェイ冗長化まで含めて障害点を洗い出します。
EtherChannelに関するよくある勘違い
一般的なEtherChannelはフロー単位でメンバーを選択します。 1つのフローは通常1本の物理リンクを使うため、単一フローの速度は1本分が上限になりやすいです。
両端で形成方式、モード、物理・論理条件を合わせる必要があります。 未設定の並列リンクはSTPでブロックされるか、設定によってはループ要因になります。
passiveは相手からの開始を待つモードです。両端passiveでは開始されないため、少なくとも一方をactiveにします。
1本だけでも稼働していればPort-channelがupになる構成があります。 各メンバーがPで参加しているか、期待本数と帯域を確認します。
番号はローカル装置内の識別子です。通常は管理しやすいよう同じ番号へそろえますが、 プロトコル上の成立条件とは別です。
EtherChannelの障害調査では、Poの状態だけでなく、各メンバー、対向設定、VLAN、STP、ログまで組み合わせて判断します。
理解度チェック
次の6問に答えてください。解答を見る前に、物理リンクと論理リンクを分けて考えましょう。
問題1.EtherChannelの説明として最も適切なものはどれですか。
- 複数VLANを1つのVLANへ統合する技術
- 複数の物理Ethernetリンクを1本の論理リンクとして扱う技術
- ルーティングテーブルを自動交換する技術
- MACアドレスを暗号化する技術
解答を見る
EtherChannelは、複数の物理リンクをPort-channelという1本の論理リンクとして扱います。
問題2.LACPでEtherChannelが成立する組み合わせを2つ選んでください。
- active-active
- active-passive
- passive-passive
- active-auto
解答を見る
active側がLACPを開始できます。passive-passiveは両側が待機するため成立しません。 autoはPAgPのモードであり、LACPのactiveとは組み合わせません。
問題3.次の出力から分かることを説明してください。
Group Port-channel Protocol Ports
1 Po1(SU) LACP Gi1/0/1(P) Gi1/0/2(P)
解答を見る
Po1はレイヤー2のPort-channelとして使用中で、LACPにより形成されています。 Gi1/0/1とGi1/0/2は、どちらも正常なメンバーとして束ねられています。
問題4.1Gbpsを2本束ねたPo1で、Gi1/0/2が故障しました。基本的に何が起こりますか。
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Gi1/0/1が正常ならPo1は通信を継続できます。ただし、利用可能な物理帯域は2Gbps相当から1Gbps相当へ減少し、 一部通信で一時的なパケットロスが発生する可能性があります。
問題5.Port-channelがupでも、期待していた帯域が出ない場合に確認すべきことを3つ挙げてください。
解答例を見る
- 期待する本数のメンバーがPで参加しているか
- 負荷分散方式と通信フローの種類が合っているか
- 特定メンバーへ負荷が偏っていないか
- 各物理ポートにエラーや速度不一致がないか
- 単一フローの速度を測定していないか
問題6.LACPを使う利点を、onモードと比較して説明してください。
解答例を見る
LACPは対向装置と制御メッセージを交換し、互換性のあるポートを動的に束ねます。 onモードはネゴシエーションを行わないため、両端の設定不一致や誤配線を検出しにくい点に注意が必要です。
実践演習:形成されないEtherChannelを切り分ける
SW1とSW2のGi1/0/1〜2をLACPで束ねる予定ですが、Port-channelが正常に形成されません。 次の設定と出力から原因を考えてください。
SW1の設定
interface range GigabitEthernet1/0/1 - 2
switchport mode trunk
switchport trunk allowed vlan 10,20,30
channel-group 1 mode passive
SW2の設定
interface range GigabitEthernet1/0/1 - 2
switchport mode trunk
switchport trunk allowed vlan 10,20,30
channel-group 1 mode passive
SW1の確認結果
SW1# show etherchannel summary
Group Port-channel Protocol Ports
------+-------------+-----------+-----------------------------------
1 Po1(SD) LACP Gi1/0/1(I) Gi1/0/2(I)
課題1.形成されない原因を答える
課題1の解答を見る
両端がLACPのpassiveになっていることが原因です。
passiveは相手からのLACP開始を待つため、両端passiveではネゴシエーションが始まりません。
課題2.修正コマンドを考える
課題2の解答例を見る
SW1(config)# interface range GigabitEthernet1/0/1 - 2
SW1(config-if-range)# channel-group 1 mode active
active-passive、またはactive-activeにすればLACPを開始できます。
課題3.修正後の正常状態を答える
課題3の解答を見る
1 Po1(SU) LACP Gi1/0/1(P) Gi1/0/2(P)
Po1が使用中になり、両メンバーポートがPとして束ねられることを確認します。
課題4.確認項目を作成する
設定修正後に確認すべき項目を5つ挙げてください。
2. ________________________________
3. ________________________________
4. ________________________________
5. ________________________________
課題4の解答例を見る
show etherchannel summaryでPo1がSU、両ポートがPであることshow lacp neighborで対向を認識していることshow interfaces trunkでVLAN 10・20・30が許可されていることshow spanning-tree vlan 10でPo1が想定状態であること- VLAN 10・20・30の端末間疎通が正常であること
- 片方のメンバーを一時的に停止し、残り1本で通信継続できること
課題5.調査結果を報告する
報告例を見る
SW1–SW2間のPort-channel 1がdownとなり、Gi1/0/1〜2はstand-alone状態でした。 両端がLACP passiveでネゴシエーションを開始できないことが原因です。 SW1側をactiveへ変更し、Po1がSU、両メンバーがPとなること、各VLANの疎通を確認しました。
自分の言葉で説明する課題
「ケーブルが4本あるのに、なぜ1本のPort-channelとして扱うのですか?」と後輩から質問されました。 STP、帯域、冗長性を含めて1分程度で説明してください。
説明例を見る
EtherChannelは、複数の物理リンクを1本の論理リンクとして扱う技術です。 独立した複数リンクのままだと、レイヤー2ループを防ぐためにSTPが一部を止めることがあります。 Port-channelへ束ねると、STPからは1本のリンクに見せながら、内部では複数の通信を各物理リンクへ分散できます。 そのため合計帯域を増やせるほか、1本が故障しても残りのリンクで通信を継続できます。
説明では、「複数の物理リンク」「1本の論理リンク」「STP」「負荷分散」「リンク障害時の継続」 の5点を含めると、EtherChannelの価値が伝わりやすくなります。
まとめ
- EtherChannelは、複数の物理Ethernetリンクを1本の論理リンクとして扱う技術
- Cisco IOSでは論理インターフェースをPort-channelとして管理する
- STPは正常なEtherChannelを1つの論理ポートとして扱う
- LACPはactive/passive、PAgPはdesirable/autoを使用する
- active-activeとactive-passiveは成立し、passive-passiveは成立しない
- 負荷分散はハッシュを使ったフロー単位が基本で、単一フローが全リンク分高速化するとは限らない
- 1本のメンバーリンクが故障しても残りのリンクで通信継続できるが、利用可能帯域は減少する
- 障害時はPort-channel、各メンバーポート、対向装置の設定を組み合わせて確認する
- Port-channelがupでも、期待本数のメンバーが参加しているとは限らない
- 設計では平常時だけでなく、1本故障した縮退時の帯域も確認する
EtherChannelを理解するポイントは、物理的には複数本、論理的には1本、 通信の割り当てはフロー単位と整理することです。

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