この記事は、 「ネットワーク初級編|通信の仕組みをゼロから学ぶ」 の第4回です。
今回は、ネットワークを接続範囲と役割から整理し、 LAN・WAN・インターネットの違いを学びます。
LAN・WAN・インターネットの違いとは?初心者向けに図解
LANは自宅や会社など限られた範囲のネットワーク、WANは離れた場所にあるネットワーク同士をつなぐ仕組み、 インターネットは世界中のネットワークが相互接続された集合体です。 この記事では、3つの違いと関係を、身近な構成例から分かりやすく解説します。
ネットワークの説明では、LAN、WAN、インターネットという3つの言葉がよく使われます。 どれも機器同士をつなぐ仕組みですが、接続する範囲、管理する人、利用目的が異なります。
3つを区別できるようになると、「社内だけ通信できない」「別拠点へ接続できない」 「インターネットだけ使えない」といった障害を、発生範囲から整理できるようになります。
この記事を読み終えるとできること
- LAN・WAN・インターネットの意味を説明できる
- 3つを接続範囲・管理者・用途で比較できる
- 自宅や会社の通信がどのネットワークを通るか判断できる
- 通信障害の範囲をLAN・WAN・インターネットに分けて考えられる
LAN・WAN・インターネットの違い
LANは限られた場所のネットワーク、WANは離れたLAN同士をつなぐネットワーク、 インターネットは世界中のネットワークが相互接続された仕組みです。
自宅、フロア、建物、構内など、比較的限られた範囲を接続します。
近い場所をつなぐ本社と支店など、離れた場所にあるLAN同士を接続します。
離れた拠点をつなぐ世界中の多数のネットワークが、共通のルールで相互接続されています。
世界中のネットワークをつなぐ| 比較項目 | LAN | WAN | インターネット |
|---|---|---|---|
| 主な範囲 | 自宅、オフィス、建物、構内 | 都市間、都道府県間、国をまたぐ拠点間 | 世界規模 |
| 主な目的 | 近くの端末やサーバーを接続する | 離れたLAN同士を接続する | 不特定多数のネットワークやサービスへ接続する |
| 管理 | 家庭や企業など、利用者側が管理することが多い | 企業と通信事業者が分担して管理することが多い | 単独の管理者はおらず、多数の組織が分担して運用する |
| 代表例 | 社内LAN、家庭内LAN、学校内ネットワーク | 専用線、IP-VPN、広域イーサネット、拠点間VPN | Web、メール、クラウドサービスへの接続 |
| 公開性 | 通常は組織内や家庭内に限定 | 通常は契約した組織や拠点に限定 | 世界中から利用される公共的なネットワーク |
3つの違いは、単純な距離だけで決まりません。
LANとWANは、ネットワークの範囲や接続目的を表す分類です。 回線速度が速いからLAN、遅いからWANという区別ではありません。
まず全体を1枚の図で理解する
LAN、WAN、インターネットは、完全に別々の仕組みではありません。 小さなネットワークが、より広いネットワークへ接続される関係として考えると理解しやすくなります。
接続範囲が広がるイメージ
たとえば会社では、社員のパソコンやプリンターを社内LANへ接続します。 本社と支店を接続するときはWANを使い、公開Webサイトやクラウドサービスへ接続するときはインターネットを利用します。
実際の企業ネットワークでは、1つの通信がLAN、WAN、インターネットのうち 複数の領域を順番に通ることがあります。
LANとは何か
LANとは、自宅、オフィス、建物、学校、工場など、 比較的限られた範囲にある機器を接続するネットワークです。
LANは「Local Area Network」の略です。 パソコン、スマートフォン、プリンター、サーバーなどを同じ場所の中で接続し、 データや機能を共有するために使います。
会社のLANの例
LANで使われる主な接続方法
有線LAN
LANケーブルを使って端末やスイッチを接続します。 オフィスの固定PC、サーバー、ネットワーク機器などでよく利用されます。
無線LAN
Wi-Fiの電波を使って端末とアクセスポイントを接続します。 スマートフォン、ノートPC、タブレットなどで利用されます。
LANの特徴
- 利用する組織や家庭が、機器や設定を管理することが多い
- スイッチやアクセスポイントを使って複数の端末を接続する
- ファイルサーバーやプリンターなどを共有できる
- 外部へ接続しなくても、LAN内だけで通信できる
- 1つの建物だけでなく、同じ敷地内の複数棟を含むこともある
LANはLANケーブルだけを意味する言葉ではありません。
有線LANと無線LANのどちらもLANです。Wi-Fiは、LANへ無線で接続する代表的な方法です。
WANとは何か
WANとは、離れた場所にあるLANや拠点同士を接続する広域ネットワークです。
WANは「Wide Area Network」の略です。 本社と支店、店舗とデータセンター、国内拠点と海外拠点など、 自社のLANだけでは直接接続できない距離をつなぐために利用します。
本社と支店をWANで接続する例
WANの代表的な接続方式
| 方式 | 概要 | 初心者向けのイメージ |
|---|---|---|
| 専用線 | 特定の拠点間を専用の回線で接続する | 自社用に確保された専用道路 |
| IP-VPN・広域イーサネット | 通信事業者の閉じたネットワークを利用して拠点を接続する | 契約者だけが利用できる道路網 |
| インターネットVPN | インターネット上に暗号化された通信経路を作る | 公共道路の上に安全な専用トンネルを作る |
| SD-WAN | 複数の回線をソフトウェアで制御し、用途に応じて使い分ける | 交通状況に応じて経路を自動選択する仕組み |
WANの特徴
- 離れた拠点にあるLAN同士を接続する
- ルーターなどを使って拠点と外部回線を接続する
- 通信事業者が提供する回線やサービスを利用することが多い
- 企業専用の閉じたWANと、インターネットを利用するWANがある
- 回線費用、帯域、遅延、冗長化、セキュリティを考えて設計する
家庭用ルーターの設定画面では、インターネット側のポートを「WANポート」と表示することがあります。
これは、家庭内LANから見て外側の広いネットワークへ接続する入口という意味です。 「WANポート=インターネットそのもの」ではありません。
インターネットとは何か
インターネットとは、世界中にある多数のネットワークが、 共通のルールで相互接続された「ネットワークの集合体」です。
インターネットは、1社が所有する1つの巨大なネットワークではありません。 通信事業者、企業、大学、クラウド事業者、データセンターなどが運用するネットワークが 相互に接続されることで成り立っています。
インターネットはネットワーク同士の接続
インターネットで利用できる主なサービス
Webサイト
ニュース、検索、ECサイト、企業サイトなどを利用できます。
メール・チャット
離れた相手へ文字やファイルを送受信できます。
動画・音声配信
動画視聴、音楽配信、オンライン会議を利用できます。
クラウドサービス
インターネット経由で業務システムや保存領域を利用できます。
インターネットの特徴
- 世界中のネットワークが接続されている
- 単一の企業や組織だけが全体を管理しているわけではない
- 通信事業者やISPとの契約を通じて接続する
- 不特定多数の利用者やサービスと通信できる
- 公開ネットワークであるため、セキュリティ対策が重要になる
インターネットへ接続できることと、安全に通信できることは別です。 ファイアウォール、暗号化、認証、更新管理などの対策が必要です。
LAN・WAN・インターネットの関係
3つの言葉は、実際の通信経路の中で組み合わされます。 ここでは、よくある3つの通信例を確認します。
社内プリンターへ印刷する
社員PCとプリンターが同じ社内LANにある場合、 通信はLAN内で完結します。インターネット回線が停止していても印刷できる場合があります。
支店から本社サーバーを使う
支店LANから本社LANへ通信するため、拠点間WANを通ります。 支店内のLANが正常でも、WAN回線に障害があれば本社へ接続できません。
クラウドサービスを使う
社内LANからルーターを通り、インターネット経由でクラウド側のネットワークへ接続します。 1回の通信で複数のネットワークを通ります。
Webサイトへアクセスするときの経路
LANからインターネットを通ってWebサーバーへ
- 端末がLAN内のルーターへデータを渡す PCやスマートフォンは、外部のWebサーバーへ向かう通信をルーターへ送ります。
- 通信事業者のネットワークへ入る ルーターから回線を通じて、契約している通信事業者やISPへデータが送られます。
- インターネット上の複数ネットワークを通る 宛先へ到達するまで、複数のルーターや事業者ネットワークを経由します。
- Webサーバーがあるネットワークへ届く 最後に、サービス提供者のLANやデータセンターネットワークへ入り、Webサーバーへ届きます。
- 応答データが利用者へ返る Webサーバーから返された文字や画像などが、ネットワークを通って端末へ届きます。
「インターネットへ接続する」とは、自分のLANを世界中のネットワークへ接続することです。
誰がどこまで管理するのか
障害対応では、技術的な範囲だけでなく、誰が管理している領域かを区別することが重要です。
LAN:利用者・企業側
- PCやプリンター
- LANケーブル
- スイッチ
- アクセスポイント
- 社内ルーターのLAN側設定
WAN:企業と事業者
- 拠点側ルーター
- 回線終端装置
- 通信事業者の回線
- 閉域網やVPNサービス
- 契約帯域や保守窓口
インターネット:多数の組織
- 接続先ISP
- 複数の中継事業者
- クラウド・サービス事業者
- 接続先のWebサーバー
- 各組織間の接続
企業のネットワーク担当者がインターネット全体を直接修理することはできません。 自社で確認できる範囲を調査し、必要に応じて通信事業者やサービス提供者へ問い合わせます。
責任分界点を意識する
自社設備と通信事業者設備の境界を責任分界点として整理します。 どこまでが自社の確認範囲で、どこから先を事業者へ依頼するのかを明確にする考え方です。
現場での障害切り分け
利用者から「ネットワークにつながらない」と連絡を受けた場合、 最初に障害の範囲を確認します。
1台の設定・接続
同じ場所の端末
拠点間通信
外部サービス
症状から範囲を考える
| 症状 | 最初に疑う範囲 | 確認例 |
|---|---|---|
| 1台のPCだけ通信できない | 端末またはLAN接続 | Wi-Fi、ケーブル、IP設定、端末再起動 |
| 同じフロアの端末がすべて通信できない | LAN | スイッチ、アクセスポイント、電源、配線 |
| 社内サーバーは使えるが支店へ接続できない | WAN | 拠点ルーター、回線、VPN、事業者障害 |
| 社内システムは使えるがWebサイトを開けない | インターネット接続 | 外向けルーター、回線、DNS、ISP |
| 特定のWebサイトだけ開けない | 接続先サービスまたは経路 | 別サイト、別回線、サービス障害情報 |
確認の基本順序
- 影響している端末数を確認する 1台だけか、同じフロア全体か、全拠点かを確認します。
- LAN内の通信を確認する 同じネットワークにあるプリンターやルーターへ通信できるか確認します。
- 別拠点への通信を確認する WANを利用している場合、本社や支店へ接続できるか確認します。
- インターネット接続を確認する 複数のWebサイトや外部サービスへ接続できるか確認します。
- 管理範囲外なら問い合わせる 自社設備に異常がなければ、通信事業者やサービス提供者へ状況を伝えます。
LAN・WAN・インターネットを区別すると、障害を「どの範囲で起きているか」という視点で整理できます。
LAN・WAN・インターネットに関するよくある勘違い
WANは離れたLAN同士を接続する広域ネットワークの分類です。 インターネットを使わない専用線や閉域網もWANに含まれます。
Wi-Fiを使う無線LANもLANです。LANは接続方法ではなく、主に限られた範囲のネットワークを表します。
LAN内のプリンターやサーバーへ通信できても、ルーターや外部回線、ISPに問題があればインターネットは利用できません。
一般にLANは短い範囲で高速に構築しやすいですが、LANとWANの分類は速度だけで決まりません。 契約や構成によって高速なWANもあります。
支店のPCからインターネット上のクラウドサービスへ接続する場合、 支店LAN、企業WAN、インターネット、サービス側ネットワークを通る構成があります。
理解度チェック
記事の内容を確認するため、次の5問に答えてください。 解答を見る前に、一度自分で考えてみましょう。
問題1.LANの説明として最も適切なものはどれですか。
- 世界中のネットワークを1社が管理する仕組み
- 自宅や会社など、比較的限られた範囲の機器を接続するネットワーク
- 離れた国同士を必ず専用線で接続するネットワーク
- Webサイトだけを利用するためのネットワーク
解答を見る
LANは、自宅、オフィス、建物、構内など、比較的限られた範囲の機器を接続するネットワークです。
問題2.本社LANと支店LANを接続するネットワークを何と呼びますか。
- WAN
- ブラウザ
- サーバー
- Wi-Fiだけ
解答を見る
離れた場所にあるLANや拠点同士を接続する広域ネットワークをWANと呼びます。
問題3.WANは必ずインターネットを利用しますか。
解答を見る
専用線や通信事業者の閉域網を使ったWANもあります。 インターネットVPNのように、インターネットを利用するWANもあります。
問題4.インターネットの説明として正しいものはどれですか。
- 家庭内のWi-Fiルーターだけで構成されるネットワーク
- 1つの企業が所有する世界規模のLAN
- 世界中の多数のネットワークが相互接続された仕組み
- 本社と支店だけを接続する専用ネットワーク
解答を見る
インターネットは、世界中に存在する多数のネットワークが相互接続されたネットワークの集合体です。
問題5.次の文章の空欄を埋めてください。
同じオフィス内のPCとプリンターの通信は主に( A )を通り、 本社と支店の通信は( B )を通り、公開Webサイトへの通信は( C )を通ります。
解答を見る
実際には、公開Webサイトへ接続するときも最初と最後にLANを通ります。 ここでは通信の主な目的に対応するネットワークを答えます。
実践演習:通信範囲を分類しよう
次の会社には、東京本社、大阪支店、クラウド上の勤怠サービスがあります。 通信がLAN・WAN・インターネットのどこを通るか考えてみましょう。
演習用ネットワーク
課題1.通信を分類する
次の通信を、LAN・WAN・インターネットに分類してください。
- 東京本社のPCから、同じ本社にあるプリンターへ印刷する
- 大阪支店のPCから、東京本社のファイルサーバーへ接続する
- 東京本社のPCから、クラウド勤怠サービスへ接続する
課題1の解答を見る
- LAN:同じ本社LAN内で通信するため
- WAN:大阪支店LANと東京本社LANの間を通信するため
- インターネット:外部のクラウドサービスへ接続するため
3の通信も、端末からルーターまでは本社LANを通ります。 「どのネットワークだけを通るか」ではなく、「どの範囲を越える通信か」で考えることが大切です。
課題2.障害範囲を推定する
次の状況から、最も疑わしい範囲をLAN・WAN・インターネットから選んでください。
大阪支店ではプリンターを利用でき、一般のWebサイトも表示できます。 しかし、東京本社のファイルサーバーだけに接続できません。
解答を見る
大阪支店内のLANは利用でき、インターネットにも接続できています。 本社との拠点間通信だけに問題があるため、拠点間WANや本社側の受け入れ設定を確認します。
課題3.確認結果を報告する
課題2の状況を、上司や通信事業者へ伝えるための短い報告文を作ってください。
報告例を見る
大阪支店では、支店内プリンターと一般Webサイトは利用できますが、 東京本社のファイルサーバーへ接続できません。 支店LANとインターネット接続は正常と考えられるため、 大阪支店―東京本社間のWAN区間を中心に確認しています。
自分の言葉で説明する課題
最後に、次の質問へ自分の言葉で答えてください。
ITを知らない人から「LAN、WAN、インターネットは何が違うのですか?」と質問されました。 45秒程度で説明してください。
説明例を見る
LANは、自宅や会社など限られた場所にある機器をつなぐネットワークです。 WANは、本社と支店のように離れた場所のLAN同士をつなぐ広域ネットワークです。 インターネットは、世界中の多数のネットワークが相互に接続された仕組みです。 WANには、インターネットを使わない企業専用のネットワークもあります。
模範解答と同じ表現である必要はありません。
LANは限られた範囲、WANは離れたLAN同士、インターネットは世界中のネットワークの集合体 という3点を説明できれば、この記事の目標は達成です。
まとめ
- LANは、自宅や会社など比較的限られた範囲の機器を接続するネットワーク
- WANは、本社と支店など離れた場所にあるLAN同士を接続する広域ネットワーク
- インターネットは、世界中の多数のネットワークが相互接続された集合体
- WANには、専用線や閉域網のようにインターネットを利用しない方式もある
- Wi-Fiは無線LANの接続方法であり、インターネットそのものではない
- LANが正常でも、WANやインターネット接続に障害があれば外部へ通信できない
- 障害対応では、端末・LAN・WAN・インターネットの順に影響範囲を分けて考える
3つの違いを覚えるだけでなく、「今の通信はどの範囲を通っているか」を構成図から判断できることが重要です。

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